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SS・ラブミークエスト3
ということで、予約投稿第三段です。こんにちはー。

三つをとりあえず投下準備して力尽きようとしている訳ですが、
三つ目になると、前書きもあとがきも面白い事が思いつきません←いつだって笑いを取りにいく姿勢を失いたくない・・・あれ?




ラブミークエスト 3






「もーっ!! しつこいわね! 何度も何度も再生してくれちゃってーっ!!」

パシーンと革の鞭がしなり、モンスターを打つ音が響く。

「ダメだよ、琴南さん! そいつには物理攻撃が効かない!」

社が声をあげれば、奏江は思わず舌打ちをしてキョーコに視線を投げた。

「モー子さん! 私がやるわ!!」

心得たようにキョーコが自分の刀に炎を宿し、目の前のゲル状のモンスターに斬りかかる。

「はあぁぁ!!!!」

鞭という物理攻撃から、魔法を宿した刀で斬りつけられたダメージでモンスターはようやくシュウウと断末魔を上げながら、動きを止めた。

「お見事、キョーコちゃん」

「助かったわ、ありがと……」

「ううん。モー子さんに怪我がなくて良かったわ……それにしても……」

「ああ、アカトキまであと二週間って所だからね、ここまで来るとモンスターもかなり強くなってるんだよ……って、あれ? 蓮はどこだ?」

社と奏江の言葉に頷きつつ、キョーコも蓮を探す。

蓮も戦士タイプなので奏江と同じく魔力を持っていない。物理攻撃が効かない敵を相手にしているのならば早く助けなければ危ない。

そして視線を巡らせた先に蓮の姿を捕らえれば、奏江とキョーコの二人がかりで苦戦したモンスターを容易く三体倒し終え、大刀を鞘へと収めているところだった。

物理攻撃は効かない相手であるはずが、三つにへこんだ地面から立ち上るモンスターが蒸発した痕跡で、大穴を空けるほどの衝撃波で諸共消し去ってしまったのだと分かる。

「……う……嘘……、強い」

キョーコが思わず呆然としてしまった所で、蓮もキョーコの視線に気付き、優しい微笑みを浮かべた。

「お疲れ様。ちょっと手強かったね」

「あ……はあ……」

「……ちょっと?」

どうがんばっても倒せなかった奏江の表情がヒクリと引きつり、社はハハハと乾いた笑いを零している。

「あの……敦賀さん……再生とかしませんでした? コレ」

キョーコが魔法剣で焼き切るようにして倒したモンスターは、変色したゲル状から燃えカスのようにゆっくりと朽ち始めており、それを指差して尋ねれば、蓮は何でも無い事のように笑い言った。

「え? ああ……再生する前に細かく切り刻んでしまったからね」

「き……きり……きざ?」

あなたにとってこのモンスターは玉葱か何かですか、と喉の奥まで出かかったキョーコが言葉を発するより早く奏江が口を挟んだ。

「敦賀さんって……本当に規格外な強さですね」

「え? そうかな?」

奏江の言葉に心底驚いた様子の蓮に、奏江は不機嫌を隠さず「もうっ、力が抜けるわね」と呟き、キョーコは目を見開いた。

「ぷっ……あはははは」

自分のすごさをかけらも認識せずにキョトンとしている蓮の姿に、キョーコは思わず腹を抱えて笑い、そしてキョーコの楽しそうな笑顔を見た蓮は自分の心の中に、温かい気持ちがこみ上げてくるのを感じた。
今まで誰にも感じた事のない想い。
その気持ちの正体になんとなく気付き始めた蓮は、キョーコを見つめて苦笑するしかなかった。



***



――カキン、カキン

刀が合わさる事で起きる金属音が、日も暮れようとしている森の中に響く。
比較的足場の良いそこで対峙しているのは蓮とキョーコで、主にキョーコが蓮に切りかかっているのだが、大刀を片手で操る蓮が斬撃を軽やかに受け流し、手数の多いキョーコの呼吸はかなり荒い。

――キン!!!

「きゃっ!!」

蓮の容赦ない力強さを前に、キョーコの刀は容易く弾き飛ばされ、放物線を描いた後に地面へと突き刺さる。そうしてバランスを失ったキョーコは後ろへとふらつき、そのままドサリと尻餅をついた。
キョーコの喉元に、キラリと煌めく切っ先がピタリと合わされる。

「……あっ……」

タラリと冷や汗を流すキョーコとは対照的に、蓮は貴公子然とした涼やかな微笑みを浮かべている。

「どうする?」

「……参りました……」

両手を持ち上げて降伏の意を伝えれば、蓮は刀を引き、チンと音をたててその大刀を鞘へと収めた。

「最上さんの太刀筋は基本に忠実で、ちょっと読みやすいんだよ。もう少しフェイントを覚えた方がいいね」

「うぅ……はい……」

がむしゃらに近いと思われていたキョーコの太刀筋だが、組み合ってみればそれがきちんと戦闘書を読み、理解した上での我流剣術だと理解し、キョーコの身体に付いてしまっていた悪癖を直す訓練をしている所だ。

「でも昨日より格段に伸びているよ。手首の返しが早くなった」

「ありがとうございます」

「いえいえ。どういたしまして。さ、そろそろ暗くなってきたから今日は宿に戻ろうか」

にこりと微笑む蓮がキョーコに向かって笑みを浮かべ、手を伸ばす。

「あ、はい。本当にありがとうございます」

キョーコはおずおずとではあるが、蓮の大きな手を握り返し、その手に引かれて立ち上がった。

「じゃ、行こうか」

現在、キョーコは宿から少し離れた場所で、蓮による指導を受けていた所だ。

これは、初めて宿に泊まった日の夜、中庭で素振りするキョーコを蓮が見つけた事から始まり、今では日が暮れるまでの日課として続いている。

「でも、敦賀さんは本当に強いですよね」

未だに蓮から一本も取れないのだが、少しずつ手合わせの時間や手数を増やして刀を交える事が出来るようになっており、レベルアップの手応えを感じているキョーコの表情は決して暗い物では無い。

「最上さんも強くなってきてるよ」

「ふふ……敦賀さんに誉めて頂けるのはとても嬉しいです」

キョーコはクスクスと笑い、そこには全幅の信頼が見えこそすれ、出会った当初のような蓮を避ける為の壁は存在していなかった。

そして、二人並んで宿までの短い道のりを歩いているうちに、日は完全に沈み、月明かりで辛うじて互いの姿を判別出来る程度の光源しかない。そんな状況の中で蓮は一度歩みを止めると、足音が止んだ事に気付いたキョーコが不思議そうに蓮を振り返った。

「ねぇ、最上さん。今なら教えてくれる?」

「え?」

突然立ち止まった蓮から発せられた言葉にキョーコは虚を突かれた。

暗くなっていたものの、月明かりで蓮の表情が真剣である事はキョーコにも十分伝わり、キョーコはどう答えるべきかを逡巡する。

数日とはいえ、共に闘い、鍛えられているうちに蓮の思慮深さや優しい性格はよく理解できていたからだ。

「君はどうしてそんなに強くなることを急いでいるの?」

「…………それは……」

「前に言ったよね。戦士タイプの人間に良い思い出が無いって。それと関係してるのかな?」

「……はい…………」

「でも、今は戦士の俺にも普通に笑顔を見せてくれてる。俺の事、信用してくれたって事だよね?」

「それは勿論です! 敦賀さんの事はとても……信頼しています」

「なら。良かったら、話してくれないかな? 最上さん、時々見ているこっちが苦しくなる程、辛そうな顔をしてるから……」

「敦賀さん……」

しばらくの沈黙のあと、蓮の柔らかい笑顔と優しい言葉に応えるようにキョーコは重い口を開いた。

「私……本当は魔法剣士じゃなく……魔法使いになりたかったんです」

「……なりたかった? 魔力はあるんだから、なれば良かったのに。君ならなれただろう?」

「いえ……確かに初級の魔法は使えるんですけど、それ以上の高位呪文は全く使えなくなってしまって……」

「使えなくなったって……それってまさか……」

蓮にはキョーコの言うその症状に聞き覚えがあった。

「私……龍の呪いに触れたんです」



***



「ちょっと、祥子さん、ミルキちゃん。なんだよコレ」

ここはアカトキの国、王宮の一室。

アカトキで勇者と呼ばれ讃えられる立場にある不破尚は、目の前に積まれた書類の束を眉間に皺を刻んで見下ろしていた。

それはどう見てもすぐに終わる量ではない。

「俺、こういう仕事、嫌なんだよ」

「こら。わがまま言わないの、尚っ」

書類仕事を嫌がる尚を祥子が窘め、春樹も口を開く。

「そうよ? あなたは確かに勇者だけれど、この国の王子でもあるんだから、お仕事はちゃんとしてくれないと」

「ちっ、オヤジのやつ。勇者になれば正規の政務官付けて自由にしてていいって言ってたじゃねぇか。ミルキちゃんがやっといてよ」

「もー。だから私はあと押印っていう所まで煮詰めてあげてるでしょう? アナタ、真面目にやればすごく上手に出来るんだから、ちゃんと頑張りなさい?」

春樹の言葉に尚はふてくされた表情で椅子にどかりと座った。

「まあ、そうなんだけどさぁ……面倒じゃん」

「キョーコちゃんがいた頃が懐かしいって顔ね」

祥子の言葉に春樹が首を傾げた。

「キョーコって、それって一時期尚がクビにしたっていう噂でもちきりになった、政務官見習いしていたっていう子よね? 確か呪い付きになってアカトキから出て行ったっていう」

確か宮廷筆頭魔法使いの最上さんのお嬢さんだったわよね?という春樹の言葉に尚は口角を上げて笑う。

「そうそう。こういう書類仕事、アイツに全部やらせてたんだよ」

「まあ。それ問題じゃないの。正規の政務官の資格持ってなかったはずでしょう?」

「だから問題になりそうなタイミングでクビにしたんだよ。アイツは俺の為には何でもする便利なヤツだったからなぁ……」

「まあ、酷い男ねぇ」

呆れ顔の春樹に向かい祥子も口を開いた。

「麻生さん。この子の場合、それだけじゃないんですよ」

「え?」

「勇者の称号を手に入れたら正規の政務官を回してもいいって言われたものだから、……この子、勇者の証を立てる試練。そのキョーコちゃんに全部やらせたんですよ」

「全部……って、本当?」

さすがに言葉を失った春樹に尚は「まあいいじゃん。終わった事なんだから」と笑って流してしまう。

「勇者の名乗りを上げる為には龍を狩る必要があったから俺は『誰か龍玉を取るの手伝ってくれないかな』って独り言を言っただけだぜ? あとはアイツが勝手にやった事じゃん」

それを俺のせいにされてもなぁと笑う尚に、春樹はなおさら咎める視線を向ける。

「アナタ、いつかその子に刺されるわよ? その彼女が呪い付きになったのはアナタのせいってことじゃないの」

勇者と認められるには龍の持っている玉が必要となり、龍を倒さねばならないが、龍を倒すと呪いにかかる事が数多くある為、よほどの強い覚悟がなければ龍玉を取りに行く事は誰もしようとはしない。

「あー。だからさ。間抜けにも呪いにかかったキョーコは、王子権限で国外追放にしてやったんだよ。なんか復讐してやるとかなんとかは言ってたけど、もう会う事もないし。それに、たとえアイツが何か騒いだ所で、呪い付きの小娘の話なんて誰も聞く耳を持たないさ」

「……アナタって子は……」

「大丈夫だよ。魔法剣士のキョーコ。これだけでアカトキの町に入って来れないように手配書だって回してあるし」

王子の俺と追放者のキョーコ。どっちの言葉を民衆が信じるかなんて、赤ん坊でも分かるだろうぜと笑う尚の表情には愉悦こそ浮かび、反省や後悔など微塵も感じられない。

「会った事は無いけれど、そのキョーコちゃんがとても可哀想になってきたわ……」

「でしょう? 私も注意はしたんですけど……」

「キョーコが俺の役に立つのなんて当たり前じゃん。アイツは俺にかしずくのが仕事なんだぜ?」

「……尚……」

笑う尚に呆れた顔をしてはいるが、春樹と祥子は忠実なる臣下。芯からは物申せる訳もなく。それ以上は何も言えない二人はただ、目の前の男の所業により痛む頭を抱えていた……。







我が家の尚はひたすら最低です。
ごめんね^^w
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