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SS・ラブミークエスト8
こんばんはー!なんとか、部屋が片付いたように見せかける事が出来ました←
ちょっとでも油断すると何かしらが雪崩れてくるから要注意なのです。

さてさて。当初お話した通り、このラブクエは最初WEB公開だったものを、オフ本発行に合わせて加筆修正とか、書き下ろしをドコーンとやらかした代物で、初稿は一度全部下げて、現在再公開させて頂いている訳ですが、
それを御存じの上でもイベントでご購入して下さった方、通販で購入して下さった皆様には本当にお礼の言葉もございませんです><本当にありがとうございますー!!
パラレルだからというより、RPGだからですかね、本当ネタ色が強い作品となっていますが、
お気に召して頂けている方がいて下さって本当に幸せであります!
ではでは、続きもどうぞーっ


5/7追記・・・
作業してたんです。もくもくと。一生懸命だったのに、なんでか、裏庭と箱庭の不具合だかなんだかで、裏庭にアップしたはずの記事が箱庭に反映されて、蛹の7話がまるっと消える事件が起こりました・・・うはははorz
とりあえず、蛹に関してはほとんどいじらずに再録本化してたのと、そこにアップした日まで書いてた几帳面だった自分が居たので、日付と本文は復旧できたと思います。・・・が、精神的に結構どっと疲れたので、とりあえず、パスレスとかは明日以降に持ち越させて頂きます。本当すいませ・・・orz
自分の間抜けさがはらだたしぃぃーっ


5/8追記・・・
パスワードは5/3までご請求の方、返信済みです。届いてないよという方は、アドレス、ドメイン等を再度確認の上でご請求下さいませ。
お、おやすみなさい。




ラブミークエスト 8






「ほら、ここ段差があるから気をつけて?」

 最初の頃は蓮が先頭、キョーコが殿を務めていたが、今ではキョーコが二番目だ。
当然のように伸ばされる大きな手に、重なるキョーコの手も次第に慣れたのか、自然と蓮に身を預けるようになっていた。

「はい。ありがとうございます、敦賀さん」

お互いに意識し合っているのだろう。アイコンタクトも格段に増え、見つめ合って微笑んでいる事が増えている。
こうなってくると、無意識にくっついている二人の空気にあてられるのは残りの二人になってしまうのだが。

「……あの……琴南さん」

「はい?」

「俺の記憶違いじゃなきゃ、あそこの夫婦、告白はしてないんだよね?」

「してないはずですね」

告白はしていなくても、夫婦の誓いは成立しているので、イチャイチャしようが、喧嘩をしようが、二人が結ばれている関係である事実なのは変わらない。
変わらないがイチャつかれると目のやり場に困る。というより奏江に言わせれば鬱陶しい。の一言だ。

「なんかラブラブオーラ放ってない?」

「……やっぱり社さんもそう思いますか……?」

蓮とキョーコに聞こえないように少しだけ離れた距離でひそひそ話す奏江と社なのだが、その様子もさほど意に介さず二人の世界を作っている様子の蓮とキョーコは、仲良く世間話をしながら歩いている。

「うん。いや……両想いになったんなら喜ばしいんだけどさ」

「そうですね。お陰であの子の周りの敵、敦賀さんが全部根絶やしにしてくれるので外界が歩き易くていいです」

「恋に狂った男の力は怖いねぇ」

「パーティーを組んでいる以上、敦賀さんだけで戦おうが経験値は私達にも入ってくるんでかまいません。でも、そろそろ身体がなまりそうなんで、私も戦いたいですね」

「ははは」

じとりと蓮の背を眺める奏江に、社の乾いた笑いが漏れる。

「さて、あの二人は心配ないとして、残りの問題は不破から龍玉を取り戻して、大魔王城からマリア姫を連れ帰って、そしてキョーコちゃんの呪いを解くってとこか……」

「不破は来ますかね……」

「来てくれないと困るよねぇ」

「蓮のヤツ。不破も王族ならジェリー・ウッズの宿屋の存在は知っているはずだから、来るだろうなんて言ってたけど……」

「どうやって取り戻すつもりなんでしょうね」

「うーん。俺も蓮と組んでそこまで長い訳じゃないからなぁ。アイツが考えてる事が読める訳でもないし。謎だなぁ」

想像出来ないよと唸る社に奏江は意外そうな顔をした。

「てっきり社さんと敦賀さんは長いお付き合いだとばかり」

「んー。まあ確かに蓮と組んで、一年ちょっとにはなるんだけどね。だからそんなに気心知れて長いって訳でもないんだ。アイツ、秘密主義なとこもあるし」

過去はお互いに詮索しなかったから知らないしね、そう言う社に奏江は「へぇ……」という相槌以外は返せなかった。
「アイツからだだ漏れなのは、キョーコちゃんへの気持ちぐらいだよ。あとのポーカーフェイスは完璧だもん」

「……そこはあの子も一緒ですね。だだ漏れです……好意を持つとあの子は分かり易いですから」

「へー。琴南さんも見てれば分かるぐらいなんだ」

「一応……ってとこですかね」

そんな会話を交わしながらまたチラリと前方を見れば、どうやらキョーコが草で腕を切ったらしい。

蓮が慌ててその傷の具合を見ている所だった。

「このぐらい大丈夫ですよ! 舐めとけば治りますから!」

「そう? じゃあ……」

「ひゃっ」

蓮がキョーコの腕を伝う血を舐めていて、そんな蓮にキョーコはあたふたしている。

「つ、敦賀さん、だ、誰にでもこういう事……」

「しないよ。君にだけ」

「っ……な、ならいいんですけど……ありがとう……ございます」

ハンカチを取り出してキョーコの腕にスッと巻きつける。一連の動きに無駄は無く、キョーコは赤くなってされるがままだ。

「……俺、回復魔法使えるんだけどなー」

二人の世界に割り込む事の出来なかった社は、思わずぼそりと呟き、そんな社の言葉をきちんと聞いていたのは奏江一人。

「すっかり私たちの事、忘れてますね。アレは」

「ハハ……」

人の恋路を邪魔するやつはなんとやら、奏江と社はそれ以上深く考える事を放棄した。

結局この日、前を歩く蓮が片付けた道を歩くだけで一日の大半が終わってしまい、奏江に戦闘の時間が訪れる事はなかった。



***



「あーらー。蓮ちゃんにキョーコちゃん、いい顔になってきたわね~」

宿について早々、ジェリー・ウッズは蓮とキョーコの様子をそう評し、蓮は首を傾げた。
いい顔と言われても、変わった自覚は何もないのだが……。

「そうですか?」

「ええ。ダーリンが言う所のラブフェロモンが出てるわよ~」

「ら、ラブフェロモン?」

ジェリー・ウッズの言葉にキョーコは思わずヒクリと頬を引きつらせる。そのネーミングはいかがなものか。

けれどジェリーはそんなキョーコの様子にも構うことなく話を続けた。

「お互いにラブが発生したらこういう空気になるものなのよ。んふふふ」

「へ?」

「え……?」

驚くキョーコと蓮にジェリーはフフフと笑い、悪戯が成功したと言わんばかりのキラキラした笑顔でさらに爆弾を投下する。

「じゃあ今日のお部屋は、蓮ちゃんとキョーコちゃんでダブル、社ちゃんと奏江ちゃんは隣のツインにしておくわね」

意味を理解した社、蓮、奏江が思わず絶句し、内容が今一つ把握出来なかったキョーコは、

「え……っと、はい?」

うっかり返事を返してしまう。

「ちょっ!! ……ミス・ウッズ、それはっ」

「あら、なあに? 蓮ちゃん」

慌てた蓮にジェリーはニンマリ顔だ。キョーコが返事をしてしまった以上、本日の契約は成立なのだからもうどうしようもないのだが。

「…………っ……」

それでもなにか反論しようと言葉を探す。
けれど魔女の言葉に同意してしまった以上、撤回自体はできない。それは嫌という程分かっているので蓮はぐぅと言葉を飲み込み、そんな蓮の様子にキョーコは不安げな瞳で見上げた。

「あの……私、いけない事……したんでしょうか……」

「キョーコ」

「何? モー子さん」

蓮が言葉に詰まった以上、理由を話せる人間は限られる。
奏江は何故自分がと思いつつ、大きなため息を吐いた。

「ダブルって意味、分かってる?」

「二人部屋……でしょ? 私、モー子さんと一緒でも良かったんだけど」

んーと首をひねりながら答えるキョーコに奏江は頭痛を覚えて額に手をあてる。蓮とキョーコが二人きりでよかろうと、こっちが煽りを受けて社と二人きりになるのだから、少しは気を使ってもらえないだろうか。

「ツインはベッドが二個ある二人部屋。ダブルっいうのはベッドが一個しかない二人部屋の事よ」

「…………え?」

ようやくキョーコにも事態が飲み込めたらしい。キョーコは目をパチクリしている。

「でも、教会で滞在してる時も敦賀さんと一緒に寝てたから大丈夫よ? 心配いらないわ」

「は!!?」

「えええっ!!!!」

ケロリとしたキョーコの言葉は社と奏江からすれば予想外の発言で、衝撃を受ける中、ジェリーはカウンターに肘をつき、ニマニマと笑って事態を眺め、完全に楽しんでいる。

「じゃあそんなキョーコちゃんにはレベルアップの裏ワザを教えてあげる」

「え! そんなのあるんですか!!?」

キョーコ以外の三人はジェリーの発言に嫌な予感しか感じないのだが、キョーコは瞳を輝かせて食いついた。
どこまでも疑う事をしない真っ直ぐな様は、勇者としての気質のせいだろうが、この場合、ジェリーの良い遊び道具と化してしまう方へ一直線に働いている。

「今夜はお部屋で蓮ちゃんに特別レッスンしてもらいなさい?蓮ちゃんとのレベル差を考えれば、レベル、一気に上がるわよ~」

「ちょっと! ミス・ウッズ!!!!」

「一気に上がるんですか!!!!」

大いに慌てた蓮に対し、転職の運びとなった時に、地味に痛い目にあった事などすっかり忘れてしまったキョーコは、突如として目の前にぶら下がった魅力的な話に目を輝かせて飛びついている。

「あるわよ~。夫婦じゃなきゃ出来ない方法なんだけど、蓮ちゃんはキョーコちゃんが大好きな旦那さまなんだから、喜んで協力してくれるはずよ。ねぇ蓮ちゃん?」

「っ……」

「だ、大好き!!? …………そ……そうなんですか?」

ギギギギっと音たてるようにぎこちなく見上げてくるキョーコの表情の可憐さに、蓮は照れたように少し頬を赤くした。ジェリーの口車に乗せられるのはあまり喜ばしくないが、好きだという事は否定のしようが無い。

「え……っと……うん」

「……え……あ……その……」

蓮の表情に呼応するようにキョーコも真っ赤に茹で上がる。
なんだか無駄に良い雰囲気の二人を前に、奏江と社は頼んでもいないのに見せつけられている居心地の悪さを感じ、奏江がゴホンと一つ咳払いをした。

「アホらしいから先に部屋に行ってるわ……」

「……あ、俺も……」

奏江と社が揃って階段へ向かうと、キョーコは置いていかれる事に対し、困惑した視線を二人へ向けた。
ただ一人意味が分かっていないキョーコに含み笑いのジェリーはさらに焚き付ける為の言葉を放つ。

「やり方は蓮ちゃんが心得てると思うけど、蓮ちゃんの上で踊らせて貰いなさいな。多分10、いいえ、20は一気に跳ね上がるわよ」

「す、すごいですね! ……そんなすごい特訓があるんですか」

分かっているようで分かっていないのだろうキョーコに対し、ジェリーの言わん所を正確に把握している蓮は、どうしたものかと眉間とこめかみに手をあてて沈黙している。
奏江は仕方ないとため息を吐いて、階段下にいる蓮に声をかけた。

「……敦賀さん。出発は明後日にしますから、キョーコを壊さないで下さいね」

「…………了解……」

「どうしたんですか? 敦賀さん?」

「いや……なんでもない」

さっきからちょっと変ですよ? と蓮を気遣うキョーコの声を遠くに聞きながら、戦っていないので肉体的には全く疲れていないはずの社と奏江は、難易度の高いダンジョンを攻略した後のような多大な疲労感を感じながら、あてがわれた室内へと入っていった。



***



鍵を開け、キョーコと蓮も室内へと入ると、ジェリーの言葉通り、部屋にはベッドが一つ。先に室内へと入ったキョーコが壁際にあるスタンドに近づくと、後ろを振り返り、蓮に向かって手を差し出す。蓮の刀を受け取ったキョーコがそこへ収めている間に蓮は自分の鎧を棚の上に置いた。

「レベルアップに裏技なんてあるんですね! 知りませんでした」

ジェリー・ウッズの言葉を真っ直ぐ受け止めたキョーコは、その言葉の裏に潜む罠には気付く事もなく。
思いがけない近道の登場にニコニコと喜びの笑顔を浮かべており、対する蓮はふぅと息を吐いてベッドに腰掛けた。

「ああ……うん……まあ、普通はそうだろうね」

あまりの純粋さに蓮の心中は、余計なちょっかいを入れてきたジェリーへの恨めしさが募る。

(ゆっくり進むつもりだったんだけど……)

「敦賀さんは試した事があるんですか?」

やり方をご存知なんですよね? と澄んだ瞳で問いかけてくるキョーコはごくごく自然に腕に付けている装飾を外している。
それは動くたびに音を立ててしまう踊り子の装備を外しているだけ、宿に着いた時にはよく見る光景のはずなのだが、今の蓮には少々罰の悪い心地を与えた。

「いや、俺は実戦でのんびりやってたからね……」

「じゃあ敦賀さんも初めてなんですか?」

「そうだね」

何を、何が、さてどうしたものか。この内容をどう伝えればこの純朴な少女には良いのだろうと思うと頭が痛い。
迷いが蓮の口を重くさせ、要領を得ない返答にキョーコも蓮の様子の異変に気付く。

「もしかして、やっぱり私、何かいけない事を言いましたか?」

「いや、そういう訳でもないんだけど……」

けれど、なおも歯切れの悪い蓮に、キョーコの表情もさすがに怪訝なものとなった。

「敦賀さん?」

「――――うん」

こうまでなると、蓮に何か言い難い事があるのだろうという事はキョーコにも分かる。

そして。それは蓮が自分をレベルアップさせたくないのではという疑念を抱かせるには十分な間であった。

「もういいです! ……私、ジェリーさんの所へ行って聞いてきます」

「え? 待ってっ」

踵を返そうとするキョーコの腕を強く引き止めると、キョーコは蓮の腕から逃げ出そうと強く抵抗した。

「離して下さいっ!」

「最上さっ」

手を振り払おうとするキョーコの拒絶に、蓮は自分の曖昧な反応がキョーコを傷つけた事にようやく気付く。

「私っ、いつの間にか敦賀さんに失礼な事してたんですよね?」

気付かなくてすみません、だから、ごめんなさいと蓮から離れようとするキョーコの目尻にはうっすらとした涙が浮かんでいる。

「違うっ、それは誤解だよ」

「何がですかっ」

「ジェリー・ウッズの言った方法に問題があって……」

その内容さえ教える事を躊躇うのは、自分たちがまだきちんと想いを交わしあった仲ではないからだ。逆を言えば、これを期にきちんとしろというジェリーからの遠回しな催促でもある。

「問題?」

一体何がと不思議そうなキョーコの身体から抵抗の力が抜けたのを見て取った蓮が、自分の隣に「座って?」と促すと、キョーコはスプリングの効いているベッドにそっと腰掛けた。

握り拳二つ分開いた距離が、今の自分たちの関係を物語っていて、蓮は踏み込み方にやはり悩まずにはいられない。

「ミス・ウッズが言った、レベルアップの方法がね」

「そんなに難しいんですか?」

「通常時の経験値の取得方法は知ってるだろう?」

「モンスターを倒すか、訓練で、ですよね」

「そう。モンスターを倒した時、教会で発行されたパーティー編成の申請書を持っていると、パーティー全員に経験値は均等配分される。ミス・ウッズが言ったのはそれと全く異なった手法になるんだけど、パーティー内では亀裂を生みやすくなるから、滅多に取らない方法なんだよ」

裏技というからには、それ相応にリスクがあるのだという蓮にキョーコはごくりと唾液を嚥下した。

「教えて下さい。私、足手まといにはなりたくありません!」

それでも、自分のせいでパーティーの戦闘力が落ちるといった迷惑はかけたくないという思いがキョーコを突き動かす。
蓮はやはり迷いを浮かべた表情であるが、キョーコが目的を達する為にはもはや蓮の力は不可欠で、なによりも全面的に信頼しているからこそ、リスクなど跳ね除けられるはずだと信じていた。

「最上さんは俺の事、好き?」

「へ? い、いきなり何をっ!?」

至極真面目な顔で問いかけてきた内容に、面を食らったキョーコは突然の展開に顔を赤くしてうろたえた。

そして蓮は、シーツの上に付いていたキョーコの手を上から重ねるように握りしめる。

「え、あ、あのっ」

伝わる体温に一気に鼓動が高鳴り、思わず逃げようとしたが、蓮の手は容赦なくキョーコを自分の方へと向き直らせた。

「いろんな手順を飛ばしてここまで来てしまった俺も悪いんだけどね」

「は、はひっ!?」

苦笑する蓮の放つ色気に飲まれたキョーコは一体なぜそんな話題になるのかと慌てるだけで分かってはいない。

「男女間の肉体的交渉をすればレベルを上げる事が出来る」

「にくっ!?」

「抵抗、あるだろう?」

「そ、そそそ、それはっ……」

無いとは言えず、まさかの言葉にキョーコは口をパクパクと開くものの、声にも音にすらならないそれは、心の動揺をありのままに露呈している。

「俺は君が好きだよ。だから、君も望んでくれるなら、出来る」

「……ぁ……の……、その……」

ようやく蓮が言い難そうにしていた理由を理解したキョーコは、返答に窮しつつも、初めて直接言われた好きという言葉に胸を鷲掴まれてしまったような衝撃を受けていた。

「……わ、たし……」

 嬉しいと、心の底から湧き上がった恋しさが言葉にならない。

「……まだ早かったかな?」

けれど、蓮は答えの無いキョーコに苦笑すると、まだキョーコがそこまでは考えられないと捉えたらしい。無理はしなくていいよと口にした。

キョーコの手を握り締めていた蓮の手が離れ、蓮が立ち上がった事でベッドが揺れる。
このまま蓮が部屋を出て行ってしまう。そう直感したキョーコは、思わず両手を伸ばし、蓮のアンダーを捕まえた。

「い……かないで下さい……」

「最上さん?」

蓮が驚いている気配は伝わっていたが、これから口にしようとしている事を思えば顔を上げる事が出来ない。

「私は。敦賀さんが好きなので、そばにいて下さい。どこにも行かないで……」

それでも今、伝えなければ欲しいものを手に入れる事なんて出来る訳がないのだから。
この瞬間、キョーコは間違いなく、これまで生きてきた中で最大級に、そして一生分の勇気を振り絞ったに違いなかった。

「敦賀さんが大好きですから、その……して、下さい」

最後の語尾など蚊が鳴くよりも小さくなって、蓮の耳に届いたかも分からなかった。けれど、ああもうなんて事を口にしているんだろう、恥ずかしい。穴があったら入っていっそ埋もれたい。そんな心境を表すようにキョーコの指先は震えている。

「行かないよ、ここにいる」

蓮の手がキョーコの両手を包み込んだので、キョーコはようやく蓮の服を握る指を解く事が出来た。

「コーヒーでも入れようかと思っただけだったんだけど」

「ふええええっ!?」

決死の覚悟をさせた蓮の行動が、まさかそれだけの事と思わずにキョーコは顔を上げる。

すると、当然ながら見上げた先には蓮がいて、そのとろけるように甘く、柔らかい眼差しが愛されている何よりの証明とも言え、キョーコをいたたまれなくさせた。

「あ、その……えぇっと……」

とてもではないが気恥ずかしく、視線を合わせていられないと顔を伏せれば、キョーコの両手を握り締めたまま、蓮は床に膝を突いてキョーコを見上げてみせた。

「つ、敦賀……さっ」

「きちんと口にしてくれて、ありがとう」

それだけで、蓮の耳に届いていた事が分かってしまい、頬には尋常じゃない熱量が集約していく。

見上げてくる蓮の視線だけで熱くなっていく身体は金縛りにかかったかのようにままならず、目をそらす事も出来ない。ここから逃げ出したいと思う反面、それでも握り締められた手は離して欲しくないと感じている不思議。

捕らわれた両手が引かれる事で、キョーコの背中がゆっくりと丸くなり、蓮の顔へと近付いていく。
そらす事が出来なかった瞳は、唇が重なる寸前に、とても自然と閉じられた。

「ん……」

ほのかに露を残した睫毛がふるりと揺れる。
キョーコの両手は放たれたが、それを寂しいと思う暇を与える事なく蓮の腕がキョーコの華奢な身体を抱き締めた。

蓮の背中を抱き締め返すと唇が一度離れ、思わずキョーコが目蓋を開けるのと、キョーコの身体が持ち上げられたのは同時。

ベッドの上に横たえられ、二人分の重みにスプリングが大きく軋む。
覆い被さっている蓮の顔を見上げると、ひどく真面目な顔をした蓮は一言、怖い? とだけ尋ね、キョーコが何度も首を横に振って答えると、ふわりとした笑みを浮かべ、再び唇を寄せた。






次回は裏庭行きの描写話になります。
一応、そこすっとばしても読める話にはなってると思いますので、申請が面倒だと思われてる方はスルー推奨です。
100万回好きだと言ってと同じように、元々は無かった所をオフ本発行に合わせて書き足してますので、R話は飛ばしても大丈夫です。はい。


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