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SS・ラブミークエスト10
最初は5話完結とか笑って始めたこのお話も、最初のWEB公開で完結にこぎつけてみればまだ第一部扱いな上、14話着地だったのですが。
今回、オフ本化するにあたって色々書き足したので、裏を8.5っていうカウントにして、一話の長さもちょっとずつ長くして収録して14話に合わせているのです←目次を直すのが面倒だったとかいう残念な発想があった事は秘密です。とにもかくにも、パラレルですよ。RPGですよ。冗談みたいな設定のオンパレードですよ。
それでもこの作品を気に入って頂けた方がいる僥倖にもう心底感謝感謝なのです^^
再録にあたって、さらに拍手を重ねて下さった皆様、コメントを下さった皆様、今作をきっかけにパスワード請求を下さった皆様、いつも本当ありがとうございます^^


ということで、追記よりどぞー。



ラブミークエスト 10





「おはよう……モー子さん、社さん」

キョーコが支度を終え、よろよろとロビーにたどり着けば、社と奏江はやはりロビーのソファーで話し合っていた。

「もう昼。だけどね」

ピシャリと言う奏江の言葉に思わずキョーコがウッと言葉につまり、そんな奏江をなだめようと社も口を開く。

「お、おはよう、キョーコちゃん」

「うぅ……」

「キョーコちゃん、蓮は?」

「あ。もうすぐ来ます」

キョーコと共にいると思っていた蓮の姿が見当たらない為の台詞だったのだが、この言葉が言い終わるか終わらないかのあたりで蓮が颯爽と到着する。

「おはようございます」

「あ、敦賀さん」

「蓮。おそよう」

「え? ちょうど正午だと思いましたが……」

奏江の少々刺を含んだ挨拶と、社の軽い皮肉を笑いながら受け流し、柱にかけられた時計で時刻を確認すれば、長針と単針は真上を差しており、時刻は予定通りであった。

あくまでも蓮が一方的に決めた時刻ではあったが。

「敦賀さん。本当にこの時間から行くんですか? 不破の一行は朝一番に出て行きましたけど?」

「ああ。大丈夫だよ。それに不破と同じタイミングで外界を歩くのも嫌だしね」

「……それは……そうですけど……でも」

何故こうも蓮がのんびりしていられるのか、今一つ理解出来ない奏江には、どうしても焦る気持ちが抑えられなかった。こうしている間にもあちらとの距離は確実に開いているのだから。
けれど、落ちつき払っている蓮は奏江の焦燥を柔らかい笑顔で受け止めた。

「ああ。大丈夫だよ。大魔王城への道なら間違えないから」

やけに自信を持っている蓮にキョーコは問う。

「敦賀さん。ひょっとして、行った事あるんですか?」

「あるよ。俺が生まれた街にある城だしね」

「「「 え? 」」」

「……生ま……れた……って、蓮?」

蓮の言葉に三者は言葉に詰まる。そして、一同の疑問を代表し、口にしたのは社だった。
そして、そんな疑問を蓮は微笑みを浮かべて答えを返すべく言葉を発する。

「大魔王城のある街。……そこは昔、ヒズリの国と呼ばれていた……俺の祖国です」



***




そこは城の大広間であり、大理石で作られた壁面は輝き、天井は高く、豪奢なシャンデリアが燦然と輝いている。

本来ならば大勢の使用人が並んでいるべきはずの場所であるのだが、今この広間には、小さな少女がたった一人、何かを考え込むように佇んでいた。

ピンクのフリルがふんだんにあしらわれた可愛らしいそれは、この可憐な少女によく似合っている。
少女はとある考えに耽っていたのだが、そこへ、グルグルグル……と、まるで地の底から響く不気味な獣の鳴き声のような低音が響き、広間の静寂は破られる。

この地響きのような音はヒズリ国全体に響く音であり、これこそがモンスターを凶暴化させる周波を放つ音。大魔王が目覚めているという確かな証拠でもあった。

「マリア姫……あなたが尽力してくれるのは嬉しいが、一度帰らなければそろそろ君の父上が心配しているのではないかい?」

「クー王、起き上がっても大丈夫なのですか? 無理はされない方が……」

マリアの後ろから声をかけたクー王と呼ばれた男は、白いローブに緋色のマントを纏い、威厳を備えたその立ち姿は覇者の品格を携えているものの、その顔色は青く、健康体とは言えない空気も醸し出していた。

コツコツと音を立て、マリアのそばに近づいたクーは、苦笑して口を開く。

「君の魔法が効いてきたようだよ。ありがとう。だけどマリア姫、私はもう王ではない。国民を……全てを失った王など……滑稽すぎる」

「クー様、私、呪術師としてきっとこの国にかかってしまった呪いを解きますから……ですから、気を落とさないで下さいませ」

真摯なマリアの言葉にクーは力なく首を振った。

「姫、無理はしなくていい、私にかけられた呪いは解けなくてもかまわないんだよ……妻と息子を救えるのならば、私はどうなったってかまわないんだから……」

「クー様……」

悲壮な覚悟を固めているクーにマリアは心を痛めていた。
世間はクーを大魔王と呼ぶけれど、彼は望んで世界に荒廃を呼んでいる訳では無いのだ。だからこそ、マリアは城を飛び出してこの国を訪れている。

「ああ、姫にプレッシャーを与えるつもりは無いんだ。すまないね。……けれど難しいのだろう?」

「……それは……」

言葉に詰まるマリアの様子が、この国にかけられた呪いの解呪の難しさを物語っている。

「確かに……難しいですわ。王妃さまの龍玉が割れ、そのかけらが失われている以上、睡眠欲が壊れてしまった王妃さまを起こす事は難しい……」

「ああ……彼女が深い眠りにつき、かけらも失われた……だからこそ民を国外に追放し、私と王子ごとこの国を封印していた訳だが、なんとかかけてもらった封印魔法も解けてしまった今、世界から見れば私は存在するだけで世の中のモンスターを凶暴化させる大罪人だろう……」

「そんな事は……」

ない……と言う事は嘘になるので躊躇われた。
クーが抑える事の出来ない『音』はモンスターを凶暴化させる性質を持っていて、音を鎮める為には発端である王妃の割れた龍玉の修復と解呪が必要なのだが、問題のかけらも失われ、その王妃自身も龍の呪いによって深い眠りから全く目覚める気配がない。
事情を知るマリアは、自身の力不足に唇を噛み締めた。



***




「大魔王城のあるヒズリの国というのは、今ではもう誰も住んでいない、封印されていた場所なんだけど、元々はクー王とジュリエナ王妃が治める豊かな国だったんだ」

祖国だと口にした蓮は、歩きながら少しずつ自分が知る範囲で……とヒズリ国について語り始めていた。

「……賢王と名高かったクー王にも問題が一つあってね」

「問題ですか……」

先頭を歩く蓮の背中を追うようにキョーコ、社、奏江が続き、蓮の言葉に耳を傾けている。

「後継者に恵まれなかった。彼の唯一の息子には残念ながら本来持っているはずの魔力が備わっていなくて……魔力がない王子は非力な自分を恥じ、王族としての重責に耐えかねて次第に荒れてゆき、そのせいで最後には国に呪いが降りかかる事態を引き起こして、結果として王は大魔王として封印されたと言われている」

「それって、息子さんが原因で国全体が呪われてしまったって事ですか?」

キョーコの問いに蓮はそうだねと呟く。

「偉大な父親が開かないマンホールだったのかしらねぇ……」

気の毒そうに嘆息する奏江に、蓮は、軽く笑い、だろうね……と短く同意を返す。
ガサリと木の葉が踏みしだかれる音に紛れ、蓮は皆に聞こえないように小さく溜め息を吐いた。

「……だから、クー王が封印から目覚めているなら、対話こそすれ、戦う必要はないんだよ。戦ったとしても向こうはとても強いから俺は勿論、不破に倒せる相手だとも思えないしね」

「へー。そんなに強いんだ……」

蓮の言葉に社が思わず感嘆の声を上げれば、やはりそれに同意が返った。

「魔法使い、僧侶、剣士、武道家を極めて賢者になったすごい人ですからね、相当強いですよ。今でこそあの国は十分の一以下の閉鎖地区となっていますが、彼の最盛期はその強さで大陸のほぼすべてを手中に治めていたと言われる武王ですから」

「……うわ……何その経歴……でたらめな強さじゃない。戦いたくないわね……」

並べられた羅列に奏江が心底嫌そうな顔を浮かべ、社もううーんと唸る。それをキョーコがまあまあと取りなし、蓮の背中へ向けて声をかけた。

「でも、敦賀さん。そんなすごい王様がどうして大魔王って呼ばれてるんですか? 賢王って呼称がついていたという事は王様本人は良い方なんじゃ……」

「…………確かに偉大な人だよ。……そう……だな……、このあたりが国境だから、もうすぐ……聞こえてくるだろうけど……」

蓮の表情が少し陰りを帯びたその時、グルグルという不気味な音が響き渡り、四人は足を止めた。

「い、いまのって……」

あまりの不気味な音にキョーコは反射的に追いすがり、蓮の服の裾をはしっと掴む。
青い顔色をしたキョーコの手を蓮は上からそっと包んで口を開いた。

「これが……この国に響く、モンスターを凶暴化させる音だ……」

「……良い音とは言えないですね……怖い感じがします……」

「…………ああ……」

そこでようやく蓮の表情を見上げる事が出来たキョーコは、自分の手を握る蓮の顔色がとても悪い事に気がついた。

いつも余裕のある微笑を浮かべる蓮らしくないそれに、キョーコの心臓がドクリと嫌な脈動をする。
意識的に皆に気付かれないように歩いていたとするなら、いつから調子が悪かったのだろう。ただ案じる気持ちが湧き上がり、蓮に問う。

「敦賀さん? 大丈夫ですか?」

「……ああ……大丈夫だよ」

「でも……」

なおも顔色が悪いと見上げ、言い募ろうとするキョーコに向かい、蓮はそっと人差し指でキョーコの唇を閉ざし、その先を制して、大丈夫だからと苦笑した。

「もう少し歩けば市街だから……ね?」

「……本当に……大丈夫なんですね?」

「うん……」

困ったように笑う蓮を前にキョーコはそれ以上の言葉を飲み込み、元の隊列に戻る。
能力的にキョーコが隊の前衛を変わる事は出来ない。
踊り子となった自分の非力さに悔しさを感じ、キョーコは蓮の背中を不安げに見つめながら歩みを進め、戦闘になる度に懸命に舞い続けた。




***



「うわー、綺麗だね……」

市街地についた一行が見た物は、王が封印され、それこそ何百年と放置されていた筈の街が、劣化する事もなく、不思議な空気が漂う雰囲気のある街並みだった。

石敷きの路地も、レンガ調の建物もすぐに人が住めそうな状態のまま時を止めている。

「人もモンスターもいない、静かな街、ですね」

時々響くこのグルグルという音以外は……。と続けた奏江が辺りを見渡し、社がほんの少しズレたモノクルを直しながら言った。

「原因の音はお城からなんだから、まずお城へ向かうために辺りを散策しておくべき……かな。姫もきっと城にいるだろうし」

「そうですね、じゃあ」

社に奏江が同意し、歩き出そうとしたその時、キョーコがうっと声を上げ、その場にうずくまってしまい、全員に緊張が走った。

「い……いたたたっ……」

「最上さん!?」

「キョーコ!!?」

「キョーコちゃん!? どうしたの!!?」

蓮が駆け寄り、大慌ての社もその後ろから声をかける。

「大丈夫?」

蓮の腕に抱き上げられながら、キョーコは申し訳なさそうに詫びた。

「すみません……なんだかお腹が痛くなってきて……気分が……」

「お腹? 回復魔法かけようか?」

社が申し出るそれにキョーコは重ねてごめんなさいと詫び、首を横に振る。
それを見た奏江がキョーコの表情から言いたい事を悟り、口を挟む。

「社さん。……多分、回復魔法が効かない類の腹痛ですからどこかで休ませましょう」

「効かないって……」

「……女には色々あるんです」

察して下さいと言う奏江に、社は瞬時に赤くなり「あ、ああー!!! ご、ごめんね、気がきかなくてっ」
と、どう解釈したのやら、何とも言えない返事をして「周辺の宿屋らしき建物に入ろうか!」と大股で歩きだそうとしたのだが、顎に手をあて、なにやら考えのあるらしい奏江は社を呼び止める。

「社さん。それじゃ全員の動きが止まります。キョーコは敦賀さんにまかせて、私たちはこの街の探索をすませておきませんか?」

「え、ああ、それもそうだね。じゃあそうしようか……蓮、それでいいな?」

界隈に生き物の気配が微塵もない事も手伝い、奏江の提案はあっさり承諾され、社も頷く。

「いいですよね? 敦賀さん。あそこ、宿屋だった建物みたいですし、入ってその子を休ませといて下さい。私たち、色々と回ってから戻りますから」

「え、ああ……分かりました」

「ごめんね、モー子さん」

「別にいいから、しっかり休みなさい……じゃ。行ってくるわ」

「うん、気をつけてね」

テキパキと段取りを決めた奏江の雰囲気に押され、その提案の通り、社と奏江は周辺の散策へと向かい、後に残された蓮とキョーコは少し先に見える宿屋らしき建物に視線を向ける。

「じゃあ……行こうか」

こうして四人は一度二手に分かれ、キョーコと蓮は二人で建物の中で休む事になったのだが、建物の中に入り、腕の中のキョーコをロビーの長椅子へと下ろした蓮が立ち上がろうとする動作はキョーコにより阻まれる事になった。

椅子に下ろしたはずのキョーコが蓮の首に回していた手を離れまいと背中に回し、解こうとしない。

「最上さん?」

一体どうしたのと問い、キョーコの表情を見ようとするも、ぴったりと抱きつかれている為、キョーコの後頭部しか見えない蓮は困惑する。

「……どうしてそんなに平気そうな顔をしようとするんですか!?」

「…………っ……」

背中に回る手の力が緩む事はなく、抱き付かれている蓮は、キョーコの言葉に目を丸くした。

「身体は大丈夫なの?」

すぐに返事をする事が出来ず、濁すような問いにキョーコはピシャリと声を荒げた。

「そんなの、仮病です!!」

「仮病……?」

気付かなかったと小さく呟く蓮に、キョーコはようやく顔を上げ、蓮の瞳を見上げてクスリと笑う。

「社さんは騙されてくれましたけど、モー子さんは気付いてましたよ? ……いつもの敦賀さんなら気づいてたんじゃないかと思うんですけど……」

「俺……。そんなにいつもと違うかな……」

「とても。……何かに心を奪われてるみたいです。……一体、何を悩んでいるんですか?」

「…………………………」

「私たち、確かに最初は嘘の夫婦でしたけど。今は……その、ああいう事もした訳ですし、もう嘘の関係じゃないですよね?」

「それはもちろん……」

腕の中で見上げてくるキョーコの瞳が潤んでいる事に蓮の心は締め付けられ、隠そうとしていた苦しげな表情がとうとう顔を出す。
そんな蓮を抱き締め返すキョーコの腕には自然と力が籠もった。

「私が敦賀さんを支えたいと思うのは……迷惑ですか?」

「…………いや……君じゃなきゃ……誰も……いらない」

「だったら、だったら教えて下さい、貴方の事を……」

「…………」

重い沈黙の果てに蓮は床に膝をつき、体勢を入れ替える。長椅子に座るキョーコに縋るようにその身体を掻き抱き、キョーコの胸元で蓮は重い溜め息を吐いた。そんな蓮の頭部を抱きしめてキョーコが蓮にだけ聞こえるように呟く。

「……教えて下さい。ずっとそばにいますから……」

「うん……」

背を撫でるキョーコの手に、癒やされるように蓮は目を閉じた。

「…………この国には俺の罪がくっきりと残っていて……」

「罪……?」

蓮の口から出た、およそ蓮らしくない言葉にキョーコは驚きを隠せない。

「どれだけ懺悔しても過去は消せない。……だから教会は嫌いなんだ……」

後悔の色を多大に含む声音に、どれほど蓮が苦しいのか、とキョーコはその心中を労るようにやさしく背を撫で続けた。









クライマックスはもうすぐな感じです。
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