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ACT.175本誌続き妄想
おこんばんはーです^^
通販発送、パスワード返信、ちょこちょこしております。
通販もパスも11日までの方はお返し済みです。もうちょっとがんばります!

アンソロ寄稿原稿、ソラハナ様へのゲスト原稿、プチオンリーあわせ新刊への感想も本当にありがとうございますーvお楽しみ頂けて本当にうれしいですv
このあたりの私が何やってたかというレポはまた改めて書きます^^

ということで、合間時間に書いてたブツを投下。
久しぶりにSS投下だなぁ、なまって無いといいなぁ…orz

5/16 13時 誤字修正






ACT.175 ヒール・シック 続き妄想






それは本人が気付く事もなく、まるで忍び寄るかのように、
 
 静かに、確実に男の逆鱗に触れていた――。






「カイン・ヒールってどこの大道芸人だったっけ?」

彼、村雨は悩んだ挙げ句、この一言を選んでしまった。

それは、彼の今後の命運を決める一言であり、一番言ってはいけない言葉であったのだが、この瞬間の村雨にはそれを知る術はない。


「…………」

自動販売機に向かい屈んでいた雪花が立ち上がり、振り返ったその切れ長の瞳がついと自分を捉えた事に、村雨はゴクリと小さく唾液を嚥下し、例えようのない高揚感が胸の内にこみ上げてくる感覚を覚えた。

黒光る革を纏い、鈍く輝く装飾品を数多身につけ、一見どこかイカれた印象を与えるが、よく見れば綺麗な顔立ちの持ち主である彼女、雪花・ヒールは、クールな様子を崩す事もしない。
そんな雪花の佇まいに、組み敷いて啼かせてみたい、そんな男の征服欲をくすぐる危うげな魅力を村雨は本能的に感じ取り、魅入ってしまった。

「俺、アッチの役者、かなりチェックしてるけど、聞いた事ないんだよね。カイン・ヒールって名前」

ふてぶてしく、余裕のある顔。それでもって初対面からインパクトのある会話。
これで自分は雪花が覚える日本人の役者第一号になるだろう。それが村雨の考えた筋書きであった。
けれど……、


「……知らなくて当然よ。兄さんは映画に出るのこれが初めてだもの」

しばしの間を経た後に返された解答は、予想外のもので村雨は目を見張った。

「初めて?……それって……」

では何をもってして監督があの男を抜擢したと言うのか。それを問おうとするも、雪花の視線はふいと村雨を通り越し、村雨などには興味がないのだと言わんばかりにその足はコツリと一歩を踏み出した。

「って、ちょっと待ってよ」

「……邪魔。……兄さんが待ってるのよ」

そうポツリと呟いて、なんの感情も映さずに自分を素通りしようとする雪花に、村雨がその手首を掴んで引き止めようとしたのはある種、反射的な行為だ。

「待ってってば」

村雨がその華奢な手首を掴み取る寸前、クールな様子を一変させ、まるで警戒心むき出しの野良猫のように飛びずさった雪花の反応で、自分が行おうとした事の性急さに気付く。

(初めて遭ったばかりの女の子に何やってんだ……?)

ガンゴンゴロゴロ――

雪花が手にしていたペットボトルが二本、村雨の足元を通りすぎて転げていく音だけがあたりに響いた。

「……何か用?」

「何って……そういう言い方する?」

迷惑だという感情を隠す事なくありありと映して見据えてくる雪花に向かい、村雨は久しく忘れていた攻撃的な自分を思い出した。

過去に置いてきたはずのこの手の衝動が刺激されている事に内心では驚きながら、村雨は雪花の放つ存在感を前に目を逸らす事が出来なかったのだ。
こみ上げてくる短絡的な衝動にぐっと拳を握りしめて耐えようとする。

「用がないなら呼び止めないで頂戴。時間の無駄だわ」

けれど、対する雪花の飄々とした態度が、村雨の努力を無駄にした。

「っ!!」

コツリと歩き出そうとする雪花の姿に、とにかく逃がしたくないという強い思いに駆られた村雨は雪花の発言に眉根を寄せ、挑発的な言葉と視線を投げかける事で歩みを止めようとする。

「ねぇ、君はカイン・ヒールの妹なんだよね?通訳なんだろ?名前は?」

監督が妹さんもどうぞ、と一言零していたが、それ以上の情報は村雨にはまだ何も無い。

「…………」

けれど一向に答えようとする気配の無い雪花に村雨の双眸が細められ、遅遅として思い通りに進まない会話に交差する視線は険悪な色を帯びていく。

「カインが日本語をしゃべれないんなら、どうやって台本を覚えて、どうやって俺らとコミュニケーション取ってお仕事してくれる訳?素人に足を引っ張られるのは正直、かなり迷惑なんだよ」

「…………兄さんが素人ですって?」

喧嘩腰である自覚はあったが、この時の村雨にはもう自分を律する事が出来なかった。
雪花の無感動な表情がようやく崩れた事に喜びを覚えてしまったのだ。

「……兄さんは――」

村雨の嘲笑混じりの言葉に不快感を露わにした雪花が口を開こうとした瞬間だった。

「セツ…………」

突如として低い男の声が背後から聞こえてきた事に村雨は驚いて振り返り、現れたカインに意識を向けている間に雪花は村雨の横を駆け抜けていった。

「兄さんっ!」

幼子が母親を見つけて縋るように一心にかけより、当然のごとく腕をからめる雪花の様子には絶対の信頼、幸福感すら垣間見え、イメージとはかけ離れた二人のやりとりに村雨は度肝を抜かれる。

「……――――」

「―――――」

雪花のほっそりとした肢体を軽く受け止め、長身を屈めた上で互いに顔をこれでもかと近づけて村雨には聞こえないボリュームで会話をする二人は、まるで何者も寄せ付けない雰囲気を醸し出しており、残された村雨には言いようのない疎外感と、もやもやとした感情が湧き上がる。

「おい。遅刻をしてきて挨拶も無いの?無名の新人さんよ」

所詮、自分とカイン・ヒールは敵対する関係なのだから、仲良く和を作る必要はない、と村雨は口角を上げ、嘲りの言葉を選んだ。

「……遅刻?それは気づかなかったな」

よく通る低い美声。
抑揚がなく、冷たい印象を与えるが、意外な程に流暢な日本語が返ってきた事に村雨は小さく目を見張った。

「なんだ。日本語ペラペラなんじゃんか。じゃ、なんでセツに通訳させてた訳?」

「……………」

そう村雨は問うたのだが、カインはぷいと視線を雪花へと逸らして沈黙してしまい、それは村雨を苛立たせるには十分な動作だった。

「無視かよ、てめぇ!!」

「……セツ。この男は一体誰だ?」

「っ!!!!」

村雨を指差し、全く分からないと言わんばかりのカインの様子に村雨の頭にカッと血が上る。

「人を指差しちゃ駄目でしょう?お昼から兄さんに喰われる予定の主役の一人の……なんとかさんよ……なんだったかしら……」

「へぇ……」

そう言って村雨へと向いたカインの瞳にゾッと凍りつく殺気が含まれており、その眼差しに村雨の背に冷たい汗が吹き出した。

「っ!!!?」

BJそのものと言わんばかりの渦巻く黒いオーラに竦む自分を叱咤して村雨はカインに向き直る。
カインとは顔合わせの時に確実に一度は視線を交差させたはずなのだ。
雪花に視線を奪われた村雨に対して向けられた、威嚇を含んだあれが気のせいや幻では無かったと言う事は今のこの殺気を孕んだ視線が村雨の考えすぎではなかったと言うことを裏付けている。
だからカインが本当に村雨を誰であるかを分かっていないはずは無いのだ。自分が負けるはずはないと過去から築き上げてきた自尊心でもって村雨は両足に力を込めた。

「なんだよ。さっき目は合っただろうが。すかしてんじゃねぇぞ」

「……それで?お前をセツと呼ぶ権利をコイツにやったのか?」

そう言って向けられた眼光の鋭さに村雨は息を飲んだ。
過去様々な荒くれ者と対峙し、すべからくなぎ倒してきたはずの村雨を飲み込むようなそれは異様なプレッシャーすら感じとれる代物だった。

「まさか。さっき兄さんがアタシを呼ぶまでアタシの名前知らなかったはずだもの」

その言葉でようやくカインの視線は逸らされ、村雨は小さく息を吐いた。

「そうか……」

雪花のうなじから指を差し込み、髪をくしゃりとかきあげれば、雪花はそれを心地よさげに受け入れたままカインの腰に腕を回していて、二人の親密さを見せつける所作に村雨は目の前の兄妹の異常さを悟ろうとしていた。

「……なんだよ。お前ら兄妹でデキてんの?」

ひくりと引きつる自分を理解しながらも元来負けん気の強い村雨は最後に一太刀浴びせなければ……と口火を切る。

「好きに解釈すればいいだろう」

「……ふん。イカレっぷりだけ再現できても演技が出来なきゃ足手まといなんだからな」

鋭すぎるカインの眼光の前に村雨はたたみかけるように言った。
長時間これに晒され続けるのはマズいと本能が訴えている。

「ふん……」

「……っ。あとで吠え面かかせてやるからな」

悠然と笑むカインに唇を噛んだ村雨は、分の悪さを感じた心を表に出さないようにして踵を返し二人に背を向ける。
けれど、

「ちょっと」

呼び止められた事で村雨の足が止まった。

「アタシは雪花ヒール。セツって呼んでいいのは兄さんだけよ」

そう言うと雪花はやはり村雨などには興味がないと言わんばかりにカインを見上げ、その耳元に何事か囁いて、二人はコツコツとヒールを鳴らして歩いて行った。

「…………雪花……ヒール……」

一人残された村雨は、重い息を吐き出して二人が去った後の床を見つめてポツリと呟いた。

「くそっ……」

この場でカインに飲まれた事が悔しいと、床に転がるペットボトルを蹴り上げれば、それは誰もいない廊下で鈍い音を立てて転がり遠のいていく。

「負けない……くっそぉっ!」

意気込んだ村雨が、カインの演じるBJにより、完膚なきまでに追い込まれるのはこれより数時間後の出来事である――。









…村雨くんの攻撃失敗の巻。
続くのか……?←聞くな。
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