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SS・蛹が蝶に孵るまで。2
連載二回目デス。
人生初のSSに思いの他、拍手をたくさん頂けてめちゃくちゃ嬉しいです。
ありがとうございます。お礼は改めて日記で行いますので~っ!
さて、今回はキョーコの受けたドラマのお話です。追記よりどうぞ。



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蛹が蝶に孵るまで。2

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《プライベートアクトレス》

監督  新開誠士


CAST

成瀬耀子(なるせ ようこ)…京子
四方堂黎(しほうどう れい)…敦賀蓮


STORY

misson 0
都内の公立中学に通う成瀬耀子、彼女は実は人気俳優、松田龍一の不倫の末に出来た隠し子である。
彼女の母親は耀子を私生児として一人で育てていた、父親の松田には耀子を連れて、年に数回の逢瀬は重ねており、
耀子は父を知らない訳ではない、けれども幼い彼女が受け入れるにはあまりにも複雑な環境は
知らず彼女に背伸びを余儀なくさせ、複雑な胸中を抱えたまま、微妙な親子関係が続いていた。

自分の中の鬱屈する思いを持て余し、けれどもそれを上手く扱う方法も分からない彼女は
危ういバランスのまま大人になろうとしていた。

中学を卒業を間近に控えたある日、スカウトされるままに、とある弱小の芸能事務所へと足を踏み入れる。
しかし、己の出自が露見する事は一人で自分を育ててくれた母に更に苦労をかける事になる…
そう考え及んだ彼女は、一度はスカウトを断るのだが、事務所社長に言葉巧みに乗せられ、
依頼をこなす結果となった。
「蛙の子は蛙」と言った所だろうか、芝居の中で感じたその高揚感に、新たな己の道を悟った彼女は
一般社会の中で演じる役者、「プライベートアクトレス」への道を開いたのだった。



そこまで読み進めてキョーコは台本から顔を上げた。

「……なんか…モー子さんの例のバイト…みたいな仕事ね…。」

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mission1

成瀬耀子が社長の話術に乗せられて初仕事をこなしてから二年が経過していた。
都内の公立高校へ進学した耀子は、その後様々な依頼をこなし、今では事務所の看板女優である。
あくまで裏家業限定での看板ではあるのだが・・・。


「社長、メール見たけど長期契約なんだって??」

耀子は高校の制服のまま事務所を訪れ、勝手知ったる事務所の冷蔵庫から小さな紙パック、
豆乳ココア味を取り出し、ストローから口に含んだ。
豆乳は大して好きでは無いのだが、飲めば女性的な体に成長するというテレビで見た話を
日々実践している所だ。少々のコンプレックスは可愛いものだと思うのだが、彼女は大真面目だった。


「おー、来たか耀子、お前に頼みたいんだよ。」

わしわしと頭をかきながら社長こと堀田が耀子を見やる。

「週に1~2回、依頼者の妹になって病院を見舞ってほしいんだ。
依頼者の妹は5年前に亡くなっているから成長を想定して欲しいって内容。」

「はいぃ~?それの何が長期契約なの?
週2なんでしょ?っていうか、その内容なら別に私じゃなくても…」

メールの内容からして一週間毎日びっしり…、なんていう拘束を予想していた耀子は
思わぬ肩透かしをくらった気分だ。

「見舞う相手が長くはないという話しなんだ…依頼者の祖母なんだがね。」

「なーる。看取るヒト…必要ってことね…。」

だから終了期限の読めない長期契約、という事だ。

「そういうこと。それに家柄がかーなりお堅くてな、認知症状気味のおばあさんだが、
ふとした時にかなりの教養やら知識に演技力が要求される、
茶道の作法やらなにやらと色々必要になるかもしれないんだよ。お前できただろ?
学校で選択授業あったよな?
依頼者からは一番演技力のある娘でっていう話でな、お前しかいないってわけ。」

「・・・そういうお堅いお家なら学校の授業で聞きかじった程度の作法で
まかり通るとも思えないんだけど・・・。
面倒そうな依頼なわけね。まぁいいけど。」

「ちなみに依頼者はもうすぐここに来るんだが………」

「だが?」

そこまで言った社長に、らしくない歯切れの悪さを覚え、耀子は若干嫌な予感を感じた。
しかし、この商売は信頼が命の裏家業。
紹介者、依頼者ともに安全と判断されなければ、まず役者まで話が通らない。
秘密厳守のこの仕事、事務所が抱える役者はそう多くはないのだ。


””ピンポーン””


事務所のインターフォンが鳴ると社長は依頼者を出迎えに玄関を開けた。
そして耀子の目の前にあらわれた人物、それは…


「…し…四方堂…先生…」

「………成瀬…」


お互いの顔を見合わせ、たっぷり一分程は硬直していただろうか、
それでも先に動いたのは耀子だった。

「あ、椅子に…どうぞ。」

「あ…あぁ…」

そこには190センチを越える長身に甘いマスク、耀子が学校でいつも遠巻きに眺めていた
女子生徒からの絶大な人気を誇っている数学教師が耀子の目の前にいた。
学校で見る彼と違う所は、いつもかけている黒い縁のメガネをかけていない事…だろうか…
メガネをしていない彼は学校で見るよりも更に…男前だった。

「…まさか、病弱で有名な二年生の成瀬耀子さんが、禁止されてるアルバイトをしてる…とはね。」

この仕事をこなす為には、やはりたまに学校を早退、遅刻を必要とする事がある…。
元来頭の良い耀子は、それこそ授業だけで学年トップの頭を持っていた為、
出席日数を計算しながら問題ない範囲で欠席早退を繰り返して仕事をしているのだが、
その為には、やはり病弱な方が何かと便利…という訳で、学校での成瀬耀子は病弱という設定で通してある。
実際は真冬の川に飛び込んだ時すら風邪ひとつ引かなかった健康優良児であるのだが。


「いいじゃないですか、趣味なんです。それより先生がお客様な方がびっくりですよ、うち、高いですし。」

「え?そうなの?」


「そう、ですね。確かに他の同業者より若干高い価格を設定はしています…が、
その分、役者は実力派ばかりでアフターフォローまでしっかりと。が心情の老舗と自負しておりますから…」

と、社長が苦笑いを浮かべながら耀子の発言をフォローする。
実際、何軒かある同業者の中でもっともハイレベルな役者をそろえる事務所であることは事実なのだ。

「それで、成瀬さんは一番の実力派という訳ですか?
確かに学校での姿にはオレも騙されてたな…」

「先生だって学校と今じゃあ雰囲気違うじゃないですか、
今の雰囲気、いつものお堅い教師って感じじゃなくて、なんかこう、ホスト?って感じですけど」

「はは、君ね・・・眼鏡外してるだけでそこまで言う?
まあ、確かに、あの伊達眼鏡は、近寄ってくる生徒がうっとおしいからかけてるんだけどね」

あんまり効果は高くないんだけど、無いよりはマシだね、と言って肩をすくめる四方堂黎には
学校で見る温和で紳士な教師の面影は・・・あまり無い。

「うっとおしいって…先生、全校女子が今の発言で泣きますよ」

「でも君は泣かないだろう?全校女子では無いよね?」

やれやれと軽く笑いながら耀子の発言の小さな揚げ足を取り、おどけた仕草を見せる彼には
やはり学校で見る紳士な姿とは違い少し意地悪な感覚を受ける。

「それで、君はオレの妹、"桜"を演じてくれるのかな?」

「あ、はい、ご依頼とあれば妹だろうが姉だろうがストーカー娘だろうが演じてみせますけど。」

「姉は年齢的に無理があるんじゃ…それに…ストーカー娘って…」

いささか微妙な表情を浮かべながら黎は耀子を見やる。

「年齢なんてメイク次第でどうとでもなりますよ~?
それに先生の顔ならストーカー娘とも有りそうかな、と」

「…………。」

「…ひょっとしなくても眼鏡の理由はその辺ですか?」

「ふふ、君は鋭いね」

「それはどーも。」

そうして耀子は黎の妹、”四方堂桜”として、彼の祖母と対面することになる。


――――――――――――


「それでこの後、自宅のマンションの窓をあけたら隣のマンションの最上階でお隣同士ってことが発覚して…
晩御飯を一緒に食べる仲になって、数学準備室やら黎の自宅で次の回からの依頼の役作りのきっかけになる
アドバイスを貰うようになり、少しずつゆっくりと恋心を意識する…って…どうなの!?このベタな展開!!!」

キョーコは台本をパタンと閉じ、机につっぷした。
ご飯を一緒に食べて役作りのアドバイス、なんて、あまりにも普段のキョーコと蓮の関係に似ている。
というか、”黎”のキャラクターが”蓮”とかなりシンクロしていると感じるのはキョーコの気のせい
だろうか・・・。”耀子”と”キョーコ”の性格の違う所は、キョーコが誰かに恋心を抱くなんて無いと
はなから恋愛を完全否定しているぐらいだろうか…。


「社長のラブミー部への指令でハチ公前に行ってから
なんか、ハメられたみたいな気がしてるのは気のせいよね・・・。うん。」


ちなみにこの後、耀子に入ってくる依頼というのが、霊能者、少年、耳の聞こえない少女、
オタク少女、メイド、ヤクザのお嬢さま、等等と、みごとに厄介な依頼ばかり…となっていくようだ。


「これ…全部演じ分けなきゃいけないの…よね…うぅぅ…
っていうか、さらっと流してたけど…敦賀さんが相手役かぁ……こ、怖い…」


このドラマの脚本はミステリーが得意な新開監督の傾向が遺憾なく発揮されており、
恋愛にはそれほど比重が無いと前置きがあり、ラブミー部であるキョーコでも大丈夫だろうと
受けたオファーであると聞かされて受け取った台本であるが、
キョーコはここまで読み進めてこれからの事を考える。

この台本によると二回目以降の蓮の出番はさして多くなさそうだ。
「一緒にご飯を食べる」「妹の”桜”として”黎”とともに病院に行く」「学校で会う」
コレの繰り返しで二人の関係は進んでいくようである。
BJと掛け持ちでも出来なくは無い…。終盤の”黎”の出番が増える頃にはBJがクランクアップする
時期であるのだろう、なんとも上手いスケジュールの采配具合か、
確かにあちこちのテレビでひっぱりだこである”敦賀蓮”がテレビドラマから忽然と消えるのは
映画の前準備の為とうたっていようとも、蓮の人気からすれば少し不自然な感が拭えない。

蓮がBJを演じているのを知っているのは社長と社とキョーコのみ、と思っていたが、
新開も知っていてこの脚本を用意しているような気がして仕方ない。
くだんのシークレット出演ドラマと同じ局の深夜ドラマであるため、局内を移動すれば
良いことになるので、蓮の負担を考えていたキョーコは少しだけ安堵した。
同じドラマの仕事をしていればフォロー出来ることがあるかもしれない。

けれど・・・、役作りをしようと台本を読み進めれば読み進めるほど役作りが分からなくなりそうだ。
耀子を演じながら、毎回違う役+桜の三役を演じなければならない。
正直、キョーコの頭はパニック寸前だった・・・。

「いやー!!!!!ど…どうなるのよーっ!!!」


キョーコの不安に答えられる者は、いない。


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