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SS・100万回愛してると言って5
もういくつ寝ると本誌・・・って明日ですね!こんばんは!
長かった・・・と言いたいところが修羅場っていたら一か月あっという間でしたよ。あれれ?w
出版業界は電力の関係で締めきりが二日だかなんだか短くされてしまったという話もちらっと聞いたので、この一カ月のお休みで先生が少しでもお休みして復活してくれてたらいいなぁ・・・きっと休めてなんてないんだろうけど。

さてさて、そんなこんなで、本誌はもうすぐですが、インテももうすぐな訳です!
荷詰めっ!あ、通販発送も順次行っております。新刊のカート起動前にお申し込み頂いていた方の分までが今日ようやく終わりまして、明日から新刊関係の発送準備に入ります!うし、がんばります!








100万回愛してると言って 5






ヒズリ社の社長、クー・ヒズリが代表を勤める企業の中の一つであり、彼がデザイナーを勤める世界的メンズファッションブランド『アールマンディ』
現在、この中に飛ぶ鳥を落とす勢いで躍進している部門がある。

メンズファッションのみを取り扱っていたアールマンディに新たに設立されたレディースファッション部門『レン』。
まだ日本でのみ展開されている『レン』はクー・ヒズリの愛息である久遠・ヒズリがメインデザイナーを勤めており、そのデザイナー名を敦賀蓮と言う。

アールマンディ日本支部社長兼、レンのメインデザイナーの彼は、大変今更の話しではあるのだが、日本有数の財閥である最上財閥令嬢、最上キョーコと婚約中であり、二人は現在同棲生活の真っ最中なのである――。





「あと10秒……」

レンのパタンナーである社倖一は、じっと己の左腕の腕時計を見つめていた。
10、9、8、と刻まれていく秒針を心の中でカウントダウンし、3秒前になったその時、彼は目の前の重厚な扉の前に手を伸ばす。
そうして残り時間が0秒になった瞬間コンコンコンと足早にノックした社は、一呼吸置いてからガチャリと扉を開いた。

「休憩終わったぞー」

「ええ。そのようですね」

「お疲れ様です、社さん」

社が入室した社長室の中央に配置された応接ソファーには、対面であるというのに隣あって座る蓮とキョーコがいて、そのテーブルの上には食べ終えた弁当箱が入っているのであろう風呂敷包みがちょこんと置かれている。

「うん。お疲れ様」

二人の様子が至って普通である事に社は内心でこっそりホッと胸をなで下ろしつつ笑顔を返す。
なにせ忘れもしないキョーコのアルバイト初日の事だ。社はいつも通りにと休憩が終わる直前の時刻に扉を開けたのだが、それにより蓮がキョーコをソファーに組み敷いてディープキスをしている現場に出くわしてしまい、真っ赤な顔をしたキョーコが給湯室へ逃げ込んでいくわ蓮には睨まれるわという、どうにも気まずい事態が起こったのだ。
とにもかくにもそれ以来、社は休憩時刻をしっかり終えてから扉を開けるようにしている。

「昼からのスケジュールの確認は?」

「終わっています。お昼休みの間に社さんから頂いたリスト通りにお話しさせて頂きました」

「そっか、ありがとう」

キョーコがレンの秘書としてアルバイトにやって来たのはかれこれ一週間前の事だ。

「キョーコちゃんは飲み込みが早くて助かるよ」

「いえ、そんな」

謙遜し、嬉しそうに頬を染める姿には好感が抱け、蓮が社に急ぎ作らせたビジネススーツはきりりとした雰囲気で仕事が出来る女の印象を強くしている。
最近までまだまだ子供だと思っていた少女の見せる確かな成長に社は微笑ましいものを覚えて柔らかく微笑んだ。

「んじゃ、蓮。そろそろ製作会議始まるから行くぞ」

「はい」

そう言うと蓮は立ち上がり、キョーコに向かって微笑みを浮かべる。

「じゃあ会議中は緊急の物以外は後回しでよろしく」

「はい。了解しました。行ってらっしゃいませ、社長」

さすがに新作の製作会議はレンの最深部の話しとなるので、婚約者という身内同然の関係であれ、「アルバイトの人間を入れると示しがつかないから」と、蓮はキョーコを自分のオフィスに残して会議室へと向かった。





「キョーコちゃん、本当に気がきくなぁ。夏休みだけなんて言わずに正式にうちで雇いたいぐらいだよ」

実際問題、キョーコはかなり優秀だった。
大人に囲まれて育ったからだろう、話術に問題はなく電話応対は完璧。
さらに実は国立大の首席だというキョーコは理解力、洞察力に優れていて、社が教えた事は乾いたスポンジが水を吸い込むように吸収していった。
おまけに茶道の心得があるキョーコはお茶の入れ方がピカイチに上手く、来客の度に絶賛されるという面白い事態も起こっている。
他にも英検やら漢検、さらには電卓検定を持っていたりと、秘書に向いている要素をいくつも持っている上に、心配りも良い。キョーコのおかげで社も蓮もここ最近の仕事がすこぶるはかどっていた。

「ははは。それもいいですね。まあ、進路は彼女が決める事ですが……」

「まあなぁ」

二人は目的地へ向かいテクテクと社内を並んで歩いているのだが。

「ところで、キョーコちゃん置いてきて良かったのか?てっきりお前の事だからどこまでも連れ歩いて自慢するのかと思ってた」

少し意地の悪い質問とも取れるのだが、蓮は気にする様子もなくクスリと笑う。

「いや。さすがに俺も他の人間への影響を考えますよ。依怙贔屓は周りのモチベーションを下げるだけでしょう?」

「ほー。そりゃ良かった」

社の前ではキョーコが側に来て嬉しくて仕方がないといった空気を隠せていないというのに、意外と冷静に周囲の事も考える事は忘れていなかった蓮に社は胸をなで下ろした。

会社のトップが恋愛でトチ狂ってるなんて経済誌の一面を飾らせる訳にはいかないのだから。

「それに……」

「それに?」

少々歯切れ悪くそう言うと、蓮は目的地の扉に手をかけた状態で中に向かって真剣な眼差しを向け、そんな蓮を社は怪訝な表情で見上げた。

「この中にいるメンバーに彼女を引き合わせるのはなんだか危ない気がするんですよね」

「……あー。そういう事」


会議室の中に揃うメンバーはデザイナーの黒崎、販売戦略担当の緒方、パタンナーの新開、それにランジェリー部門の主任兼デザイナーのジェリーウッズというどれもこれも一癖ある人間ばかりだ。
唯一面識のある同性のジェリーでさえキョーコをいたく気に入った結果、隙あらば自分のデザインした衣装……主に下着だが、それを着せようと自室へ連れ込もうとしたりするので蓮としては攫われてしまう気がして油断ならないのは仕方ないのだろう。

「デザイナーって、どうして気に入った人間は自分の手で着飾らせたくなるんでしょうねぇ」

「お前らデザイナー側の心情をいちパタンナーの俺に聞くなよ……ほら、中に入れ」

「はいはい」

呆れ顔の社が蓮の背中を押し、この日のレンの製作会議は始まった。




――――――――――――――




「うーん。こっち?いや、あっちかな?」

蓮が会議に向かったその頃。
残されたキョーコはといえば、電話番として社長室に滞在しているものの、特に鳴る気配のない電話を前に手持ち無沙汰となり、ハタキを片手に室内の掃除を始めていた。

「あ、やっぱりこっちかな」

凝り性のキョーコが作業を始めだしてしまえば夢中になってしまうのは明白であり、現在、目の前の花瓶の置き方を悩んでいる所である。

「よし、こっちにしよ」

華道もたしなむキョーコには花の配置一つにも妥協が許せず、最も美しく見える角度を模索していた。

「ふー」

ひと息ついた所で突然背後の扉がバタンと音を立て、その余り勢いに驚いたキョーコが悲鳴をあげる。

「ひゃあああ!!」

「蓮さまぁぁーっ!!!」

キョーコの驚きの声とかぶさるように一人の少女の叫び声が部屋中に響き渡った。

「あ、え?えっと……あの……」

「はー、はーっ。あら?蓮さまはどちらかしら?」

ようやく室内に蓮がいない事に気づいた少女はあたりをキョロキョロと見回している。

「えっと……あ、只今社長の敦賀は席を外しております……が、あの……どちらさま……でしょう?」

突然の珍入者に驚きつつも、それが小さな可愛らしい少女で、そんな少女が肩で息を吐く姿に、キョーコは花瓶に刺さっていた花を思わず握りしめたまま返事を返した。

「あら、これは失礼致しました。私、宝田ジュエリーのローリィ宝田の孫娘、宝田マリアと申します」

「ご丁寧にありがとうございます。私は秘書の最上と申します。社長はあいにく会議中でして」

入室時の勢いから一変。綺麗にお辞儀をして微笑んだマリアにキョーコも慌てながら、けれどもきっちりとした挨拶を返す。
すると、そんなキョーコをじっと見上げたマリアは、感情の読めない表情で佇んでいる。

「あなたが最上キョーコ様ですのね――」

「え……?」

「私、あなたにお話がありますの」

困惑するキョーコをよそに、マリアは真剣な眼差しで口を開いた。




――――――――――――――




会議用の資料にコツンと万年筆を当てる音が室内に響いていた。

「んじゃ、次のコレクションから協賛が増えるわけね」

新開が蓮をじっと見上げて問う。

「ええ。宝田ジュエリーが入った事でアクセサリーの選択幅がかなり広がりますので皆さんそのつもりで」

「了解です」

緒方が頷き、新開が面白いと言わんばかりにヒュウと唇を鳴らす。

「ところでよう、敦賀さんや」

「何か?」

黒崎の挙手により一同の視線は彼に集まった。

「宝田ジュエリーの孫娘がアンタに熱烈アタックかましてるっていうのは本当か?」

「…………」

ニヤニヤと笑う黒崎に対し、無言を貫く蓮の態度で黒崎の質問が図星だと全員が悟る。

「モテ男はつらいねぇ、なんなら俺が一人引き受けようか?」

思いきり蓮で遊ぶつもりらしい黒崎は、からかいを含んだ笑みでもって蓮に言い、そんな黒崎に蓮は感情を含まない無表情のまま口を開いた。

「黒崎さんがロリータコンプレックスなご趣味をお持ちだとは思いませんでした」

「はあああ!!?なんでそうなる!!!!」

しれっとした蓮に黒崎はすっ飛んだ声を上げ、緒方、新開、ジェリーウッズの面々は黒崎だけ知らなかった事実に噴き出しそうな己の口を押さえてどうにか爆笑を堪えている。

「黒崎さん、黒崎さん。マリアちゃんはまだ小学生ですよ?」

「なにぃぃ!!?」

空気に耐えかねた社の小声に度肝を抜かれた黒崎は、やっと自分の失言を悟った。

「まあ確かにマリアちゃんが蓮の事を好きで懐いているのは本当だけどねぇ」

「社さん」

「わるいわるい」

余計な事を言い過ぎですよ、と鋭い視線で制してきた蓮に社は慌てて口を噤む。

「さあ。続けますよ」

「あ、ああ……」

蓮の合図でもって室内の空気はピシリとしまり、会議が再開され、二度目の脱線はもう起こる事はなかった。








6に続きまっす。
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