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SS・名前を持たない恋物語10
おひさしぶーりーねー。あなたにあうなんてー。
ということで、年齢詐称疑惑がよく浮かぶ惣也です。こんばんは。

久しぶりにというか、やっとの更新です。
なんというか、遅いよ私っorz
お付き合い下さる皆様、いつも本当にありがとうございます。
もうちょっと早い更新が出来るようになりたいなぁ。昔より考えながら書くようになったせいか、進みが悪いねぇ。かといって初期作…さすがに色んなものが拙くて、勢いだけだったなぁとこっぱずかしくなるしなぁ。
難しい。

さてさて、拍手をいつもありがとうございます^^
頂けると本当に励みになるので、そろそろレスをがんばろうと思います←遅いから。
亀で本当すみません。裏庭到着報告も、通販コメントもありがとうございます!
今日も元気にがんばります^^





名前を持たない恋物語 10







必要とされたい。

けれど、求められるのは怖い。

求められる事に慣れていないから。


雪花を演じる事に集中してさえいれば、一時は忘れるフリが出来る。
けれど、やはりそれは一時の事で、蓮を見る度にチラつく想いはキョーコの心を少しずつ圧迫していく。

(私が敦賀さんを……)


(…………好きだという事を認めたとして……)


それでも、認めざるを得ない自分の本心を声に出す事は出来なかった。

想いを口に出してしまえば、本当にもうどこにも逃げられなくなると、本能的に知っているから。


(……敦賀さんはいつまで私を想ってくれるのだろう……)


最初に蓮の言葉を遮った時点で蓮の気持ちは冷め始めているかもしれない。
二度目に逃げ出した時点で呆れられたかもしれない。

(いつまで私は必要としてもらえるんだろう……)

最上キョーコとして、京子として、雪花として。

キョーコが尚に必要とされなくなったように。
未緒が必要とされた時間がDARKMOONの終了と共に終わったように、全ての物事には終わりがくるはずだから。

(雪花はいつまで必要なんだろう……)

未緒として嘉月である蓮の近くにいる日々が終わり、新しく雪花が始まった。
たまたま蓮の近くにいる事が出来る役割が続いたが、雪花が終わった後、次に何かを演じる機会に恵まれたとして、その何かが蓮に関わる物である可能性はきっと少ない。

(敦賀さんのそばにいられなくなる……)

早く心の準備をしておかなければと焦燥感が胸をかきむしる。
何かを、誰かを失う喪失感をまた予告もなく味わう日が来るかもしれないという恐怖は、キョーコに焦りと、不安を呼んでいた。





「雪花はいつまで必要なんですか?」

「最上さん?」

蓮に呼ばれ、ハッと意識が浮上する。

「す、すみません!なんでもありません」

(こんな事、言っちゃいけなかったのに……)

今は雪花・ヒールであるべき時間だというのに、迂闊にも自分の手で壊してしまったと慌てたキョーコは逃げ出したい衝動に駆られ、とっさに身を翻そうとした。
とにかく蓮に見つめられる事は苦しいから逃げ出したい。その一点なのだ。

「これは、なんでもない話しじゃないだろう?大事な事だ」

けれど、反転したキョーコの体が地面を蹴る前に抱き止めにかかった蓮は、静かにキョーコの耳元に囁いた。

「わ、私は、そのっ、そうです!テイクツーをお願いします!」
「え?」

「間違えました。次からはもう、ちゃんと雪花になりますから、こんな戯言忘れて下さい!」

この場に最上キョーコはいらないのだから、どうか逃がして欲しいと願わずにはいられない。

ただでさえ自分がどうするべきなのか見えない今、これ以上、グチャグチャになりたくないのだ。

そうして願うキョーコの必死の表情に、蓮の瞳はすうと細まった。

あと何度か逃がせば彼女は俺に向き合ってくれるのだろうかと。
……きっと追い詰めなければ、視線すら合いはしない。
そんな確信すら生まれるほど、何度も蓮の想いは空を切っている。

何度も何回も、これ以上積もっては駄目だと、あともう少しの所で砂時計をひっくり返すように進まない……距離。

「また、逃げるの?」

「っ……」

ずっと蓮から逃げている事はキョーコにも分かっていた事だった。
そして、蓮が無理矢理に追ってくる事はしないだろうと、どこかで『まだ大丈夫』なのだと思っていた事も事実。
けれど、蓮はそんなキョーコの思いを裏切るように言葉を紡いだ。

「聞いて?」

「…………」

答える事は出来ない。

聞きたくないから。

「俺が最上さんを好きだと困る?」

押し黙るキョーコの心を見通しているように、蓮は問いかける形で言った。

「困り……ます」

喉はカラカラで、言葉が引っかかるように上手く発せられない。

「それはどうしてかな?」

「どうして?」

(そんな事……聞かれても……)

蓮が自分なんかを好きになる訳がない。
仮に、好きになって貰えたのだとして、蓮にずっと好きでいてもらえる訳がない。

だから、そばにいられる今より近づく事が怖い。
だけど、離れる事も怖い。

近づきたい、だけど離れたい。相反する感情にかき乱される心がどうにかなってしまいそうだ。

「君の心に居るのは、まだ不破への憎しみだけ?」

「そんな事ありませんっ」

こんなにも蓮が占める割合が増えているのに、ある訳がない。
口にしていないのだから蓮がそんなキョーコの心の内を知っている訳もないのだが、それでもいつだってキョーコの気持ちも行動も分かっているような、理解者である素振りを見せてきた癖にと見当違いな恨み言を言いたい気分になった。

「だよね。……でも、だったら……最上さんは俺の何から逃げているんだろう」

「それは……」

自分が逃げている事は自覚したままここまで来てしまった。

「俺は最上さんが好きだよ」

「っ!!」

決定的な言葉を言わせてはいけないと逃げてきたけれど、音は発せられ、キョーコの心臓は握り締められたようにギュウと痛んだ。

「……好きだよ。最上さんが」
「っ…………」

嬉しくない訳ではない。
好かれたいという願望は幼い頃から人一倍強く知っている。

けれど。

――怖い。

「…………りです」

いつか失う未来に怯えながら生きるなら、

「無理……です」

最初から手に入れられない方が良い。

だから、

好きだとは決して言えない――。

「誰かを好きになることは……もう、無理です」



――――――――――――――




「無理?」

キョーコの言葉をオウム返しする蓮にキョーコはコクコクと頷いてみせた。

「俺が嫌いだから?」

縦に振るっていたおとがいがピタリと止まり、フルフルと左右に揺れる。

「ちがっ」

好きだとは言えない。
嫌いだとも言えない。

「何が違う?」

自分の狡さを突きつけられているようで身体は小さく震えた。

「ただ……怖いだけで……」

変化が怖いのだと、それだけは言える。

「変わる事を怖がらないで……。君も、俺もずっと同じではいられないんだから」

蓮の言葉はいつだってキョーコの中に大きな波紋をもたらしてしまう。考える事を放り出して、ただ好きだと口に出してしまえば楽になるのだろうかと過ぎる己の考えの狡さにフルフルと首を振った。

「時間は流れる物で。同じ位置で留まっていてはいられないんだ」

それでも、変わる事は怖いと心が竦む。

「ずっと不破に捕らわれているままで良い事なんて何もないよ」

「そんな事は……」

無いと言いたかった。
キョーコの中で尚への憎しみで周りが見えなくなる類いの激情で心がいっぱいになる事は、以前よりずっと無い。

「でも君は、俺の中に不破のように裏切るかもしれない影を探しているから、こうして俺を見ないようにするんだろう?」

「っ!!!」

蓮の腕に痛いほど強く抱きしめられ、一緒にキョーコの心も痛むようだ。

「俺に不破を重ねないで。俺だけの事を考えてみて?」

「敦賀さん……だけの事?」

「逃げようとしている君の中に無理矢理押し入って、俺だけの事を考えざるを得ないようにする事はきっと簡単なんだ……最低の行為だろうけどね」

それは尚の愚行をキョーコに思い起こさせ、キョーコの身体はピクリと強張った。

「俺は、無理矢理振り向かせるんじゃなくて、悩んで、悩んで、悩んだ末に、君が俺を好きだと言ってくれるような、恋がしたい」

耳元のそばで祈るように小さな小さな声で言った。

「最上さんの心が欲しい」

そうして蓮はキョーコの身体を解放し、キョーコはその場にゆっくりと崩れ落ちるように尻餅をつく。
だからこそ、キョーコは窓ガラスに反射する蓮の表情を見つける事が出来た。

「…………ぁ……」

狂おしく、切なく、愛おしく。
美月を見つめていた時に見せた恋情に苦しみながらも大切に想う気持ちの色を乗せた瞳。

「傲慢だって分かっているけど、君が俺に恋してもいいって思ってくれる可能性が生まれるほどには距離が縮まっているんじゃないかと……感じているんだよ?」

これ以上進める為にはきっと劇的な変化を起こさなければならないのだろうけれど。
蓮は変化を受け入れられるだけの心をキョーコのお陰で手に入れられたのだ。
なのに、そのキョーコ自身が過去に捕らわれたまま、変われない事はどうしても耐え難く、切ない事だった。

「だから……考えて?」

そして蓮はキョーコから一歩引いた。

「敦賀、さん?」

蓮が踵を返した事でキョーコも振り返ったが、だからこそ二人の視線は交差する事は無く。振り向かないままの蓮は呟く。

「ゆっくり考える時間、必要だろう?」

大きな蓮の背中にキョーコの右手が自然と追いすがるように伸び、そして意識せず動いた腕はピクリと震え、何を掴むでもなくパタリと落ちる。

「…………ど」

どこへ行くんですかと問う声は上手く発声出来ないまま小さく潰えた。

「俺は今夜、別の部屋取るから」

だから怖がらなくて良いよと言いながら、扉のそばにある大きいキャリーを取った蓮はキョーコを部屋に残して消える。

「敦賀さん……」

蓮から告げられた慕情はキョーコが勝手に思っていたよりも強く、深くキョーコの心を揺さぶる物で、その熱さはキョーコが初めて体感する激しさを秘めていた。

「……ごめんなさい」

自分の気持ちだけを追いすぎて、蓮の思いの丈がどれほどの物かなど考える余裕も無く、ただ、勝手にありえないと否定していた事への後悔。
それでも好きだと言ってもらえた喜び、そして、己の思慮の浅さを思い知る事の羞恥と、それを上回る幸福感。
色々な感情が綯い交ぜになったままキョーコは深く息を吐く。

「ありがとうございます」

自分の気持ちを伝えるには、どうすれば良いだろうか。
久しぶりにその夜のキョーコは、自分のあるべき方向を思い出せたような、憑き物が落ちたような心地を感じる事が出来た。

そして、そんな時、キョーコの携帯電話が非通知の番号を示し、揺れた。






敦賀の坩堝でぐるぐるまわりちぎった後は、10.0の着地が出来ると信じるのだ!ムーンソルトー!←なにがーっ


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