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SS・名前を持たない恋物語11(完結)
真昼間からこんにちは!
迷惑メールが山盛りに来るのでフィルターを強化したらパス請求の転送メールが来なくなってて気が付いたらお待たせしていたダメな人。ぼくそやえもん・・・あああああ・・・orz

タイトルを見て、思いっきり止めてた連載の割にこれが最終話かい!って突っ込んだ方もいらっしゃりそうですが、最終話です。どーん。

あとがきはあとがきに書くとして、追記より、どぞー。






名前を持たない恋物語 11







音を消してある携帯電話がブルブルと振動している事に気付いたのは、偶然に近い。
非通知と示すサブディスプレイではあったが、直前までの蓮との会話で思考も飽和状態と貸していたキョーコが反射的に通話ボタンを押したのは無理もない事で、この電話の主が『不破尚』かもしれないという可能性は、全く考え付かない事であった。


『こんの魂すすりがー!!!!』

「……はあ?!」

開口一番ならぬ通話一番。
轟いたのは不破尚の罵声であり、鼓膜をつんざく怒声にはさすがのキョーコも思わず電話を耳から遠く離して距離を取り眉間をしかめる。

「ショータロ!!」

うっかり出てしまったと悔やんだものの、あまりにも意味不明な第一声にあっけに取られたキョーコにはとっさに叩き切るという反応も出来ない。
それでも、一拍の間の後にこんな電話切ってしまおうと電源ボタンに指を伸ばすのだが、尚の冷ややかなトーンの声にキョーコの動きは阻まれた。

『お前。何考えてんだよ』

「……なにがよ」

分かって当然だろうと名乗る事もせず、当然のように話しをする尚に、一体何の用だとつっけんどんに返すが、尚はそんなキョーコの反応を気にする事もなく続ける。

『他の連中は一人でインタビュー受けてるじゃねぇか。なんだってお前はあの野郎と並んでるんだよ』

「は?何の……」

何の話だと問いかけた時、それがDARKMOONの打ち上げの最中に受けたインタビューだと気付いた。

「私がああいう席での取材は初めてだったから事務所の指示で敦賀さんと一緒になったのよ。文句ある?」

条件反射のようなキョーコの物言いに呼応するように尚もがなり立てる。

『あるに決まってんだろ!あの野郎とそろって締まりの無いニタニタ顔晒しやがって!視界の暴力だ!!』

「誰がニタニタしてるって!!?」

ヒートアップする怒鳴り声だが、そこまで聞いたキョーコは逆に冷静になりあれ?と気付いた。

「って言うか。苛立つなら見なきゃ良かったじゃない」

そもそも、こちらから見て下さいと頼んだ訳ではない。何故尚にクレームをつけられなければならないのかと素朴な疑問が湧いた。

『ちっ、お前の化け物っぷりがキテレツすぎてギョッとしたんだよ!っつーか!貴島って野郎は業界で有名な女ったらしじゃねぇか!何引っかかってんだよ!お前は馬鹿か?いや、馬鹿だよな!』

「馬鹿馬鹿って何度もっ!!」

けれどやはりハタと気付く。
キョーコが貴島によりドレスアップする羽目になった事は、インタビューをしっかり聞かないと分からない。

「……ずいぶん長い事、テレビに釘付けになったのね」

『あん?』

言うならば今ではないか。

「ふーん。あんた。私に見とれてたんだ?」

『はあああんっ!?んなの、ある訳無いに決まってるだろうがっ!なんで俺がお前なんかにっ』

けれど、その動揺した声は否定する言葉とは裏腹に、キョーコの発言を肯定しているに他ならず、キョーコの中で溜飲が下がる。

「ふーん。へえー」

あの尚を動揺させる事が出来たという事は、何事にも代え難い達成感をもたらしたのだ。

『ニヤニヤ笑ってんじゃねぇよ!バカが!!』

喜色ばむキョーコの声色に気付いた尚が声を荒らげるが、そんな罵倒もこうなってしまえば苛立ちは湧かなかった。

「で?何の用なのよ?私、忙しいんだけど」

アンタと違ってね。そう嫌みを言うはずだったのだが、キョーコよりも先に尚が口を開いた。

『俺だって忙しいんだよ!それをお前がっ』

「あーはいはい。ごめんなサーイ」

今のキョーコは勝利の余韻に満たされこそすれ、負の感情でドロドロ渦巻くような事が全くと言って良い程に……ない。

『キョーコぉぉっ!!お前っ、なんの為に業界に入ったんだよ!俺以外の男、見てんじゃねぇよ』

自分の心の中における、あきらかな比重の変化。
それは確かに蓮の力による物だった。

「勘違いしないでよね」

『あん?』

「きっかけは確かにアンタだけど、だからってなんでアンタを見続けてないといけないのよ。アンタこそ馬鹿じゃないの?」

『…………なに?』

「アンタと私じゃ、立ってる世界が違うのよ」


≪ 『畑違いな人間を見つめてないで、俺の背中を追いかけておいでよ』 ≫


キョーコが今、追いかけている背中は尚ではない。
いつの間にか、それは蓮に変わっていたからだ。

「私が追い付きたいのは、もうアンタじゃないわ」

『……っ!』

追いかけて、追いついて、蓮の隣を歩けるようになりたい。
そんな事を思う日が来るだなんて思っていなかった。

「じゃあね。ショーちゃん」

けれど、だからこそ、蓮の事を考えていれば、冷静に尚と相対し、決別を宣言する事も出来る。

キョーコのじゃあねに沈黙している尚に構わず通話を終了させ、折り畳んだ携帯電話を枕元に放り投げると、変わりに砂時計を拾い上げ、ボスリと背中からシーツに沈んだ。
さらさらと流れ落ちる砂が蛍光灯の光と相まってキラキラと輝いている。
落ちていく様をただじっと見上げ、最後の最後までしっかりと見届けると、空になったガラスの中から見える天井が明るく和らいで見えた。

「綺麗……」

心を渦巻いていたどす黒い感情が減れば良いと思う。
代わりにキラキラした綺麗な、純粋だった頃の自分の、全ては無理でも、かけらを胸にしまっていられるように。

(敦賀さん……)

憎しみでどうする事も出来なくなったキョーコの気持ちを少しずつ解してくれたのは間違いなく演技との出会い。
つまりは、蓮との対決が始まりだ。
きっと蓮に巡り合っていなかったなら、今頃自分はやはり空っぽのまま、ただ淡々と生きていたのだろう。

「……伝えなきゃ……」

自分はもう、ちゃんと歩くべき方向を見つけていたのだと。
目蓋を閉じ、ふうと大きく息を吐きだして、そしてまた瞳を開いた。
もう。大丈夫だと思いたい。心の整理はつけられたのだから。

ムクリと起き上がり、部屋の入り口に向かうまでに備え付けの大きな姿見で雪花である自分を再確認しながらも、キョーコのまま、部屋を飛び出した。

「兄さんの部屋は?」

フロントで行き先を問いかける。すると返ってきたルームナンバーはこのホテルに来た初日、一度開いた事のある部屋番号だった。

エレベーターが来る事さえ待ちかねて、ヒールの高いブーツのまま階段を駆け上がり、何度も何度もチャイムを鳴らす。

(だって兄さんはモノグサだもの)

何をするにものんびりで、ゆっくりで。かと思えば雪花の為ならば驚く程俊敏。

(さっきは私たちに戻ってしまったけど、今はきっと)

もうヒール兄妹として、カインに戻っている事だろう。

「…………もうっ」

チャイムではいつまでも反応が無く、握りしめた拳でドンドンと扉をノックした。

(きっともうすぐ来るはず……)

思った通り、ようやく扉が開き、カインが目の前に現れると、彼はそこに立っているのが雪花だと視認した後に無言で室内に踵を返した。
離れるものかと追いかけるように室内に足を滑らせる。
後ろ手でドアを閉めればオートロックがカチリと音を立てて扉を施錠した。

(もう一度……)

この閉ざされた空間はヒール兄妹のものだけれど。

「敦賀さん」

もう一度だけ、自分に戻って伝えたい。

「…………なに?」

部屋に一つきりのダブルベッドに腰掛けた蓮がキョーコを見返した。

「私……」

持ってきてしまった砂時計を手のひらの中でキツく握り締めると、変化を怖いと思う心が静まったような気がする。
覚悟を決めた眼差しでじっと蓮の瞳を見つめた。

「私は、敦賀さんが好きです」

「………………」

蓮は無言でキョーコを見上げたまま、動かなかった。

「本当は、少し前から気付いていましたけど、見ない振りをしてきました」

「どうして?」

「敦賀さんに出会えたのは、ラブミー部員だったからで、そうじゃなくなったら、関係が変わる事が怖くて、嫌だったから……じゃないかと思います」

今になれば、尚にこだわり続けていたのは、変わらない為。だったようにも思う。
確かに声を聞けば憎らしい。姿を見ようものなら殴り飛ばしてやりたいとは思うけれど、やはり裏切られた当初ほどの憎悪には駆られない。
それは、不破松太郎が大部分を占めていた過去とは違い、演技を通し、キョーコ自身が占める割合が増えたからで、つまりはやはり、蓮との出逢いから始まった変化だ。

「私は臆病で、目を背けて、逃げてばかりでしたけど。私を好きだとおっしゃって下さった敦賀さんからは、逃げ出したくはありません」

「なら、俺はもう一度伝え直しても良いのかな?」

キョーコの告白を愛しむ光を宿した瞳で受け止めた蓮が、微笑み、すっと立ち上がるとキョーコを見下ろした。

「俺は最上さんが好きだよ?」

「ありがとう、ございます」

今まさに、特別な好意を受け止める事がどうしても苦手だった少女から大人になった瞬間であり、耳の奥で自分が抗い続けてきた恋という魔法の箱が綺麗に開ききった音が聞こえたような気がしたキョーコは、心の中に芽吹く新しい自分を見つけ出した面映ゆさに照れを隠すように柔らかい微笑みを浮かべた。




――――――――――――――




部屋に戻るのもなんだかといった体で、二人は蓮が取り直した部屋の椅子に対面で腰掛け、備え付けの冷蔵庫から取り出したミネラルウォーターを飲んでいた。

「そういえば、この砂時計って結局なんだったんですか?」

「ん?」

ヒール兄妹に戻るタイミングを計りかねた末、キョーコはテーブルに置いた砂時計について尋ねていた。

「社長がね。一つ目はこれと同じのを俺が日本に来てすぐに寄越したんだ」

「社長さんが?」

日本に来てすぐという言葉が引っかかりはしたものの、あえてキョーコは問い返しはしなかった。
必要な事は話してもらえる。そう信じる事が出来るからだ。

「昔の事にこだわる気持ちは分からないでもないが、いつまでもこだわっててどうする?見ろ、時間はサラサラ流れてんだぞ。お前もこの砂みたいにさっさと流しちまえ……ってね」

「昔の……事……」

「今思うと、社長なりの気遣いだよね。正直、俺も最近まで悩んでたから二個目を貰う羽目になったんだけど、変わらないといけないって忘れないようにしてくれたきっかけになった感じかな」

だから、最上さんにもって思ってねと蓮が笑うと、そこまで心配をかけていたのかとキョーコがすみませんと詫びた。

「謝る事は無いよ。効果もあったみたいだし」

「そう、ですね……」

視界に入れば蓮の事を考えるきっかけになり、蓮の事を考えながら砂の流れを見ていると、確かに時間の流れを意識した。
そう言われればものすごい効果があったような気がしてキョーコは頷く。

「ところで」

「はい?」

「俺はそろそろ休むけど、最上さんはどうする?」

「へ?どうする……ですか?」

「この部屋で俺に腕枕されるか、あっちの部屋に戻るかって事だね」

この部屋と言いながらダブルベッドを指し、あっちと言いながら扉を指差す。

「あ、あ、あっちに帰りますぅぅ!」

「なんだ。残念」

一緒のベッドなんて破廉恥ですと声を大にするキョーコの反応に楽しそうに笑う蓮は、なら送っていくよと一緒に立ち上がった。
ワンフロア上の階に向かい二人で歩くとなんとなく無言のうちに部屋の前にたどり着く。

「えっと……敦賀さんは……?」

「同じ部屋に戻ったら、俺の理性の砂が落ちきるの、早そうだよ?襲われたい?」

「べ……別々でお願いしますっ!」

顔を真っ赤にしてポケットから鍵を探すキョーコの後ろで蓮がクスクスと笑う。

「きょ、今日の所は、ですよ?ずっと別々がいいなんて言ってませんからね?」

「うん」

まるで男の理性を試すような発言をしているのだが、そうと気付いていないキョーコは、赤い顔のまま鍵を開けると部屋の扉も開ける。
部屋に入ってしまえば自分の理性のこよりが社長の言う枯れた輪ゴムより脆くなるだろうと理解している蓮はそれ以上は踏み入れず、自分を見上げるキョーコの額にお休みのキスを落とす事でなんとかこらえた。

「また明日」

「おやすみなさい、敦賀さん」

それは幼い頃の蓮。久遠が習慣的に受けていた両親からのスキンシップであったが、キョーコには初めての経験で、思わず額を押さえて照れるキョーコに蓮は愛おしい気持ちを募らせる。

また明日に続く幸福を噛み締めながら。

二人は初めて知る両想いの甘やかさの元に眠れない夜を過ごしたのだった。









あとがきのようなもの。
原作だと蓮の闇がひたすらに根深くてっていう展開の時間軸ですが、ここであっさり蓮が克服していた場合。キョーコはどうかなっていうのがコンセプトだったのですが←え、今更言う?
原作チックなパラレルワールドだと思ってもらったらいいのですよね!うんうん!←最終的に用意した逃げ道。
長々ほったらかしてたんですが、どうにもこうにも書けなかったのでお待たせして本当すみません。
スイッチ入ったら書きあがったんだけどなぁ・・・。あらあら。
連載物の中では多分そう大して人気も無い代物だったのですがorz お付き合いいただき本当ありがとうございました。
なんか、今この瞬間は書きたいものを書ききった気がします。改めて読み返すと絶対ぎゃーーーって叫ぶと思うけどw
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