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SS・白銀の狐12
こんばんはー。ギリギリ滑りこみ更新に参りましたです^^
まずは、PC閲覧のテンプレを変更したのですが、不具合無かったみたいで良かったです^^
また、ラブクエ表紙へのコメントありがとうございましたーっ、まだ色々直さなきゃって思うところも多いんですが…データ統合してしまったNOOOO!!・・・orzっていう悲鳴を上げた今日この頃。
拍手コメントにパス請求もたくさん頂いてありがとうございますなのです!順番にお返ししておりますので、もうちょびっとお待ち下さいませ。
ということで、予告通りの更新です。追記よりどぞーっ









白銀の狐 12







万里亜の身分を考えれば、たった一人で宮を抜け出した事を誰にも気づかれずに済んでいる訳もなく。

宮に使える女官たちがすわ誘拐か、果ては神隠しかと慌てふためいていたのではあるが、出立前の万里亜が念入りに人払いを行っていた事が功を奏し、発覚が遅れに遅れていた分、京子と万里亜が宮にたどり着いた頃合いは、まだ騒ぎは万里亜に仕えている女官たち以外には広まってはいないところでもあった。

「元々、私は気難しいわがまま姫で通っておりましたから、私に直接声をかける事が出来る女官は少ないのですわ」

あまり威張れる話しではありませんわねと苦笑しながら、万里亜は自分が主に直接顔を合わせる女官は乳母と乳母の娘の二人きりなのだと京子に紹介をした。

「お姉さまは安倍晴明さまの奥方で、特別に来て頂いていたの。失礼のないように」

「は……はい。かしこまりました」

ここ最近の万里亜の様子がおかしいと困惑していた女官の母子は、突然の事態ではあったが主のなす事にそう疑問を投げかける事もできずに頷いた。

「では姫さま。こちらの京子さまは表向きお部屋付きの女官としてしばらく滞在なさるという事なのですね?」

「そういう事よ。よろしくね、千織」

「かしこまりました」

女官の娘、天宮千織に向かい万里亜がひらひらと手を振れば、意味を解した千織は母親共々静かに退室する。
どうやら二人は京子の部屋を用意するべく下がったらしく。万里亜は京子にもうしばらくこちらでお待ち下さいねと言った。

「……ねぇ、万里亜ちゃん。さっきの話しなんだけど……」

「芦屋道満の事……ですよね?」

二人きりの部屋の中。京子が尋ねれば、万里亜は心得たように頷いた。

「そう。その人が万里亜ちゃんのお父さまに会いに来たっていうのに間違いはないのよね?」

「そのはず……ですわ。お父さまも近頃の日照りについては気を揉まれていて、良い術師を探しておられたはずですもの」

「なるほど……」

だとするならば、万里亜の父親が消えた事に関係がないと思う方が難しい。
けれど、果たして。人々の記憶を操作するなどといくら術師とはいえ、人間に出来るものだろうかという疑問は残る。

(その芦屋道満という男が妖の類である可能性もある……かもしれないわよね)

「陰陽寮への働きかけはおじい様がなさるというお話でしたけど、なかなか進まないようでしたのでお父様は他に誰かいないかと……すみません」

陰陽寮を信じていない訳ではなくてと父親をフォローする万里亜に、京子は気にしてないからと笑ってみせる。
京子の中でモヤモヤとした物が少しずつ一本の糸になっていく感覚があった。

「万里亜ちゃんが謝るような話しじゃないでしょう?」

むしろ蓮や自分がのんびりしていた間に事が起こったのなら、京子の方こそ謝らねばならないのかもしれない。

「じゃあ芦屋道満が万里亜ちゃんのお父さまの事、何か知っているのかもしれないわね」

「……かも、しれませんわ……」

父親の身が心配なのだろう。万里亜の顔色は冴えない。

「ですけど、お姉さま。私には芦屋道満を呼びよせる手立ては無いのです」

「うっ……そっか……。あ、でもそんな怪しい人に万里亜ちゃんを会わせたくはないからそれはそれで良かったのかもしれないわ」

「お姉様……」

大丈夫よと努めて明るく微笑みかければ、万里亜の表情から強張りが僅かに解けた。

「ねぇ万里亜ちゃん。そもそもなんだけれどね。万里亜ちゃんのお父様を隠して得をする人ってやっぱり……」

「……はい。やはり皇位継承権を持つ親族の誰かではないかと。そう考えると、今、お父様に成り代わって東宮として御所にいるのが飛鷹の君。右大臣の孫息子にあたる殿方ですので……」

繋がってきた事実に万里亜の表情が再び曇る。

「本当はいとこだって言ってたわよね」

「はい。その右大臣がお祖父さまに芦屋道満を紹介すると口にしていた以上は」

「そうね。右大臣さまと芦屋道満は繋がっていると考えた方が良いわね」

「考えたくはありませんけれど……。……お父様は……ご存命なのでしょうか」

どこまでも暗くなってしまう思考に歯止めをかける事は難しく、最悪の展開にまで考えが行き着いてしまった万里亜に、京子は万里亜ちゃんと呼びかける事で流れをせき止めようとした。

「きっと大丈夫。色々調べて、絶対に見つけ出してみせるから。私と晴明さまを信じていてね」

ね?と力強く口にすると、万里亜も覚悟を決めたようにはいと頷き返す。

「でも。お姉さまはどうして私の事を信じて下さるの?」

出会って間もない京子がこれほどに自分を気遣ってくれる事が万里亜には嬉しいながらも不思議な事であった。

帝である祖父も乳母も。記憶を失った者たちは万里亜の言った『お父様』にまるで取り合ってくれなかったと言うのに。なぜ他人である京子がこうも簡単に信じてくれるのか。と。

「……私ね。捨てられっ子だったの」

万里亜の心が揺らぎ、弱っている事を敏感に感じとった京子は、苦く笑いながら理由を答える事を選んだ。

「村で私を育ててくれた人はまだ優しかったんだけど。あとの人はみんな私を疫病神だって、凶事の子だって呼ばれてた」

それは京子の過去の痛みであり、蓮にすらあまり語っていない記憶だ。

「誰も信じてくれない辛さはすごく分かるし、だから万里亜ちゃんには昔の私みたいに誰も信じられないって気持ち。覚えて欲しくないなって思うの」

京子は蓮に出会い、心の底から安らいだ。蓮に巡り合えた奇跡に比べれば過去の痛みなど安い物だとさえ感じる事が出来る。
けれど、だからとはいえそれまでが苦難の道を歩んだ事は変わらない。
どうしても万里亜の境遇を過去の幼かった頃の自分に照らし合わせてしまう。
誰も信じる事が出来ない苦しみを万里亜には味合わせたくないと願うのだ。

「大丈夫。私、絶対に万里亜ちゃんのお父様、見つけ出してみせるから」

ドンと胸を叩き、京子は明るく微笑んだ。

「お姉さま……」

思いもよらない京子の過去に言葉を詰まらせた万里亜だったが、それでも彼女はありがとうございますと頭を下げた。
京子がここまで話してくれたのだ。後は万里亜も京子を全力で信じ、応えるのみ。

「どうか、くれぐれもお気をつけ下さいませね」

「うん。ありがとう」

こうして万里亜の宮での生活が始まった。




――――――――――――――



翌日。京子は手始めに万里亜の宮を調べる事から開始していた。


「怪しい所は無し……かな」

京子に出来る事と言えば狐火を灯す事、燃やす事。そして蓮から貰った札の補助を受けて児童に変化する事も出来る訳だがどれもこの現状では今ひとつ役に立たない。
力の強さを示す尾の数が多い高位の狐ならば催眠術が使えたり、離魂術や結界術なども可能なのだろうが生憎と京子にはどれも出来ない。けれど、曲がりなりにも京子とて妖狐。同類や呪いの存在ならば分かるはずだと怪しい気配がないか神経を張り巡らせて宮中を歩いて回ったのだ。

「やっぱり……万里亜ちゃんのお父様が暮らしてたっていう宮を調べてみないといけないわよね」

万里亜の宮に問題がないのは喜ばしいが、それならば次に調べなければならないのは事件の起こった東宮御所だ。

「でも門番の人、いるよね……うーん」

考えた末に京子は昨日、万里亜と一緒に通った抜け道を辿ってみる事にした。

「あっちが帝の御所で、万里亜ちゃんの宮がそっちだから、東宮御所はこっちって事よね」

京子一人ならば、いざという時には狐の姿に戻って逃げる事も出来るので京子の歩みに迷いはない。
建物の隙間に存在する蛇のように細い道をゆっくりと歩き、目的の方角を目指す。

すると、たどった抜け道の先は木造の壁で塞がれており、突き当たりに行き着いてしまったと京子は思わず落胆した。
何かしたいという強い願いとは裏腹に、自分はどうしてこうなのだろうと無力感に苛まれる。

「万里亜ちゃんに紛れ込めるように頼んでみるしかないのかしら……」

諦めにふうと重い息を吐き、壁に背を預けるように力を抜いたその時だった。

「へ?あっ、きゃあああっ!!」

壁がぐらりと傾ぎ、京子の視界は建物の隙間から小さく覗く青色の空を掠めるように揺れる。
クルリと忍び屋敷よろしく回転した壁から放り出された京子は、激突に身構えてギュウと目を閉じる。
けれど、一向に痛みは訪れない事に気付いた京子は、あれ?と訝しみながら、そろそろと目蓋を持ち上げた。

「……えっと……」

正面には空が見える。
けれど自分の体は地面についていない。
むしろ、頭は浮いていると言っていい。そして頭に触れている人の手の感触……。

「……社……さん?」

どうやら姿隠しの術で透明になった社がギリギリのところで京子の頭を受け止めてくれたらしい。

『びっくりしたよぉっ、気をつけてねっ、京子ちゃん』

君に何かあったら蓮にどやされるよと苦笑を含んだ社に京子は起き上がるとしおしおと頭を下げた。

「すみませんっ。ありがとうございました」

心に直線響いてくる社の言葉に謝り、ふうやれやれと安堵の息を吐き出しながら、キイキイと鳴る回転扉を閉めてやると、それは隠し通路に相応しく、出入り口である気配が完全に立ち消えて景色に溶け込んだ。



「そこのお前。何者だ」

「っ!!!!」

京子が油断していた事も事実。
突如後ろから聞こえてきた声に飛び跳ねるように振り返った京子は声の主を見定めるべく瞳を凝らした。

「ここを、東宮御所と知った上での狼藉であろうな」

小さな少年が険しい顔で御所の縁側に仁王立ちで佇み、庭にいる京子から僅かに高い位置から見下ろす形で険しい顔のまま睨み据えている。

「そのっ、私はっ」

このまま人を呼ばれれば、大騒ぎになることは間違いない。
姿隠しをしている社の力を借りれば妖の類ですと自分から告白するようなものだ。

「えっとぉ……」

どうにか誤魔化さなければと思うもとっさには何も浮かばない。

「殿下?何かありましたか?」

「え?」

そこへ女房のやってくる絹ずれの足音が響く。

(今の声って……)

「奏江。コイツ、隠し通路から出て来たが、皇族ではないぞ。答えに窮しているあたり、あやしいにも程がある」

「ま、待って!私は何もっ!モー子さっ」

しゃなりとやってきたのは女房姿の奏江で、京子は奏江から説明して貰えれば、自分が怪しい者ではないと証立て、助けてもらえると奏江に訴えようとしたのだ。

「誰かっ!侵入者です!誰かここへ!!」

「え?なんでっ!?」

奏江は確かに京子に気付いたはずなのに、間髪入れずに大声を上げた。
訳が分からないが聞こえてくる衛兵の足音は本物。間違いなく大騒ぎに発展すると肌で感じた京子は、とっさに白銀の狐の姿へと転じ、トンと一飛びで塀へと飛び跳ねる。

「妖怪の類かもしれません、お下がり下さい、東宮さま」

(なんで?モー子さん、なんで!?)

混乱した頭のまま京子は東宮御所から逃げる事を選び、全速力で駆けた。
ひたすらに抜け道を駆け続け、一般道までたどり着く。京子が勢いよく横切った事で道行く牛車や商人の慌てる声や罵声が聞こえたが、振り返る余裕をなくした京子が冷静さを取り戻すまで、まだもう少しばかりの距離を必要とした。








続きはまた明日にでもーっ
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