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SS・臆病者の逃亡記/後編【蓮誕2013】
予約投稿でこんにちは^^

後編のお届けでございますー。
逃げるキョーコVS追いかける蓮の決着話です。



・追記・25日までにご請求の方、全てにお返事終わってます。
メールアドレス不備でメールが返って来た方、そして、メルアドの添付をお忘れの方にはお返事できませんでした。
メールアドレスを添えてご連絡下さいませー。






臆病者の逃亡記 後編








「お誕生日おめでとうございます……と」

誕生日プレゼントに添える四角いカードには、簡単なメッセージだけを書いた。
その白い台紙は薄紫色に蓮の花の絵が描かれている品物で、そんな小さな符合の合致に喜びを感じ、思わず買ってしまったあたり、私はすでに重篤な愚か者になり果てているのかもしれない。

「これでよし」

紙袋にカードとプレゼントを入れ、携帯電話を取り出す。
ボタンを一つ押し、二つ押した。
指は自然に竦み、止まる。

「…………やっぱり……会えないや……」

アドレス帳の「つ」を通り過ぎ、社さんの番号を呼び出した。





――――――――――――――



敦賀さんは雑誌のピンナップの撮影でスタジオにいて、社さんは雑務をこなす為に事務所に戻っている。だから私は社さんに会いにやって来た……はずだった。

指定された会議室に入り、後ろ姿が視界に飛び込んで来た途端、見間違えるはずのない男性のシルエットに心臓が冷えた。

ゆっくりと振り返る艶やかな黒髪、整ったマスク、服の上からでも分かる鍛えられた身体。耳障りの良い美声。
どれも間違えようのない敦賀さんだ。

「久しぶりだね。最上さん」

「おっ、お久しぶりです、敦賀さんっ」


こんにちは!と勢いよく頭を下げ、床を見ながら必死に考える。

(なんで!?なんでここに敦賀さんが居るの!?社さんしかいないはずじゃなかったの!?)

というより、このそう広くもない会議室に、敦賀さんしかいない事で否応なく気付かされた。

(騙された!?社さんに!!!?)

「社さんが嘘を付いたと言うより、俺が最上さんを呼び出してもらうように頼んだんだ。社さんは悪くないよ」

(考えてる事がバレてるっ!!)

ギクリと肩を震わせ、そろそろと視線を持ち上げると、そこにいるのはやはり敦賀さんで、にっこりとした笑顔で私を見下ろしている。

(ひぃっ!!)

瞬間的に怖いと思った。

(目……目がっ)

目の奥が笑っていない笑顔と言うのはこういう事を言うのだろう。
敦賀さんの背後に絶対零度の吹雪が見える。

「で……。最上さんはどうして俺を避けていたのかな?」

「っ!!……そ……んな」

「そんな事ない?」

「はっ、はい!」

「嘘だよね」

一刀両断。喉元に切っ先を突き当てられたような切れ味の言葉が私を飲み込む。

「少なくとも、俺には君が明確な意志を持って俺を避け続けていたようにしか思えない」

「いやですね……考えすぎですよ」

全身全霊で、この場をしのげる誰かを探す。
最上キョーコではない誰かを演じれば……と。

「目、そらさないで欲しいな」

「っ……」

たじろぐ私から逃げ場を剥ぎ取るように漆黒の双眸に縫い止めらえられて動けない。

これ以上、見ないで欲しい。
これ以上、気づかせないで欲しい。

込み上げてくる生の感情は厄介な事この上ない。

――こうなってまで会えて嬉しいと思ってしまうだなんて……。

「ねぇ、最上さん。君はそんなに俺の事が嫌い?」

嫌いだと口にしてしまえば楽になれるのかもしれない。

だから、流されるように私は答えた。




――――――――――――――






震える声で彼女が言った。

「嫌い……です」

「……本気で?」

「本気です」

まるでオウム返しだったけれど、彼女に嫌いだと言われた事は少なからず、ダメージとして刻まれる。

「嘘付きだね」

震える声で、同じセリフしか返せないくらい無理矢理ひねり出している言葉。
信じない方が簡単なんだ。

「じゃあ、最上さんの言葉ではっきり言ってくれるかな。俺をどう思っているのか」

「私は……私……は……」

泳ぐ瞳を絡め取るように彼女を見つめる視線に熱を込めた。

逃がさない……と。

「それ、プレゼント?」

彼女の手の中にある赤いリボンのかかった包装紙について問えば、彼女はそうですと短く答え、両手で差し出すようにして視線を床へと逸らした。

「どうぞ」

「ありがとう」

反射的に逸らされた視線。だからこそ華奢な手首を捕らえる事は簡単だった。

プレゼントではなく、彼女の手首を捕まえる。いささか乱暴で、強引な自覚はある。
これは『敦賀蓮』の顔で行ってはいけない部類の行為。
だからこそ、この空間には敦賀蓮を保たなければならない理由を何一つ持ち込まなかった。

(かなぐり捨ててみるさ)

「あ、あのっ、敦賀さん。離して下さい!」

「離せばコレを置いて君は逃げるだろう?」

「つっ……」

図星を突かれたらしい彼女が息を飲む。

「逃げないって約束してくれなきゃ、プレゼントは受け取れない」

「そんなっ」

世界の終わりみたいな顔で見つめられると、さすがにジクジクと疼く良心もある。だけど、やはり手は離せなかった。

「…………に、逃げませんから……」

しばらくして、ようやく観念した彼女が離して下さいと呟き、プレゼントを受け取る変わりに彼女を解放する。
引き換えに、彼女は俺を見なかった。

「開けて良い?」

「ど……どうぞ」

去年は恥ずかしいから家に帰ってから開けて欲しいとものすごい顔で拒まれたものだけど、今年はそうでもないらしい。

ラッピングのリボンに手をかけて、しゅるりと解いた。

「この包装紙みたいに、簡単に本心が暴ければ良いのにね」

カサカサと紙がたてる音が響く。

「そんな事をしても……良い事なんてないですよ。絶対」

「どうして?」

「だって……中にはきっと……迷惑なものしか入ってませんから」

それは誰にとって迷惑と言えるのだろう。

「俺は、この中に最上さんの恋心が入っていたらとても喜ぶんだけどね」

「っ!!」

耳朶まで赤くして、瞳を潤めて。俺の言葉一つで過敏に跳ねる薄い肩。
これでどうして嫌いだと信じて貰えると思うのか。

「君の恋心がここに入っているのなら、俺は喜んで一生大切にするんだけど」

「そ……んなの……」

「うん?」

「嘘です!本当は迷惑でしょう!?うっとおしいでしょう!?」

スイッチが入ったように彼女が声を荒らげた。

「私なんかには敦賀さんは釣り合いませんっ、変な事をおっしゃらないで下さい!」

「俺は真面目だよ」

「それこそ御冗談でしょう!?」

「冗談というのは時と場合を選ぶ物だと思うけれどね」

「っ……」

頑なな彼女の拒絶を解きほぐす事の難解さはおそらく最上級。

言葉が届かないならと腕を伸ばそうとしたが、彼女は後退り、逆毛を立てた猫のように俺を威嚇した。

「俺の事、そんなに信じられない?」

「敦賀さんがどうとかいう事じゃなくてっ」

「なら、『恋愛』が信じられない?」

彼女の中にある根源は分かっている。

「……そうですね。あり得ない感情だと思います」

自分の中に育つ恋心に目を閉ざしながら、ありえないのだと否定するその痛ましいまでの決意はどうすれば癒してあげられるのだろう。

「さすがはラブミー部員……かな」

「褒め言葉として受け取ります」

「褒めては……いないんだけどね」

手の中にプレゼントをテーブルの横に置いた。

「そういう、君の純粋な所、ひたむきな所、頑なな所。どれも好きだけど」

一歩距離を詰めれば、彼女は怯えたように一歩後ずさった。

「俺では役不足という事なのかな」

「だって、敦賀さんなら、どんな人でも選びたい放題じゃないですかっ!」

「君が良い。最上さんじゃなければ嫌だ」

「やめて下さい!」

だから。

「最上さんが俺を選んでくれるならやめる」

「私に選択権なんてっ」

「あるんだよ。君の手に」

壁際まで彼女を追い詰めて、彼女の震える手首を無理矢理に掴む。

「俺を失恋させる事が出来るのは、君だけ」

「そんな事っ」

心臓の鼓動を伝えたくて、彼女の手を左胸の上に引き寄せた。

「俺を幸せに出来るのも君だけ」

だからどうか、俺を信じてと祈りを込めて瞳を見つめた――。










もう分かりましたと根を上げるまでにじり寄るっていうのはイケメンにだけ許される行動かと。

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