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SS・白銀の狐16
こんばんはでございます!
再開後の優しいコメントや、パスワード時なんかのコメントも本当ありがとうございます!
やっぱり、作品タイトルだったり、サイト名だったりを覚えて頂けるというのは幸せだなぁと自分の幸せ者具合を噛み締めておりますです><ふへへふへへー
貴重なお時間を割いて下さるみなさま、本当本当いつもありがとうございまーす!!
今日も元気にがんばります^^

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白銀の狐 16









その噂は町中の何処から始まり、

「貴殿は知っておりますか? この都を襲うこの日照り。どうやら安倍晴明の仕業らしいという噂」

血管を巡る毒がゆっくりと体中に染み入るように、ゆるりと、けれど着実に都中に広まっていた。

「勿論ですとも。私の聞いた所では物忌みだなんだと姿を見せていないとか」

「衛士はなにやらに阻まれ、安倍晴明の屋敷内に入る事もかなわなんだそうですぞ」

「なんと面妖な」

「今この時とて晴明は屋敷の中で日々日照りの術を行っているらしいですし……」

さて、誰も屋敷に入っていないというのに何故そんな術を行っていると分かるのか。そんな明らかな矛盾にすら、好奇心の権化となり果てた彼らには気付く余地もない。

「くわばらくわばら」

「全く。これぞ都の一大事ではないかっ! 陰陽寮の連中は何をしておる」

「大方。陰陽寮で晴明の力を押さえられる人間がいないのでございましょう」

「なんと無能なっ」

「ふん。晴明め。元々何を考えているのか分からない男じゃったが、とうとう尻尾を出しおった」

「通りで。だが、これで安倍晴明が再三の出世話を断っていたという理由も知れたものではないか」

「きっと、今頃、絽織帝の御世の転覆を図っているに違いない」

「しかり。だがあまり声高に叫ぶのは危険というもの。狐子は何処からか耳をそばだて、我ららの会話を聞いているやもしれませんぞ……」

「おお、このような会話を聞かれては狐子殿にこちらが呪われてしまうではないか、ああ怖や怖や」

京子の預かり知らない所では、安倍晴明という強過ぎる陰陽師の才能に少なからず嫉妬し、敵意を持った人間達が我先にと噂を肥大化させ、そして今また噂好きの貴族達が無責任に話を大きくしているところであった。

「しかし、御上はどうやってそのような人ならざる者を捕らえるおつもりなのか」

「それが、どうやら水面下で右大臣殿が安倍晴明に対抗出来る術者を探しておられたらしいのです」

「なんと!」

「どうも術士殿は近日中にも都に現れるとか」

「そのような者がいると申すか! それは僥倖!」

まるで悪を倒す正義の味方を見つけ出したのだと言わんばかりに誇らしげに語る口調は止まらない。

「左様。ああ、そうそう。その術者。そやつは出自も正しき、我らと同じ『人間』なのだそうだ!」

「おおお。それは誠に心強い。して、一体どのような御仁なのだ?」

「右大臣筋の家人から聞いたところによりますと、芦屋の陰陽師の末裔とか」

「芦屋……?」

「確か、大昔、土御門との術比べに負けて都落ちとなった陰陽師の一門がそんな名ではなかったかえ?」

「そう言えば……。おや、その土御門といえば安倍晴明の生家ではなかったかの?」

「なる程。つまり幾代かを経て仇敵合間見えたという訳か。……これは面白い」

「違いない。ならば我らは狐子殿が退治される様を見物させて頂こうではないか――」

高笑いを浮かべる貴族達は、カラコロと下駄を鳴らし、それぞれの家の方角へと消えていった……。


「――面白くねぇな」

後ろを歩く松太郎の小さな呟きを耳敏く拾い上げた祥子は、松太郎を振り返って問いかけた。

「松? どうかした?」

陰陽寮への帰り道。なんでもないはずの変哲のない道すがらに出会った貴族達の噂話。

「噂の真偽なんざどうだっていいが、陰陽寮(おれ)を馬鹿にしてるにもほどがある」

眉間に深い皺を刻んだ松太郎は、真実を見定めもせずに吹聴する彼らへの侮蔑を込めてハッと小さく吐き捨てた。

「荒れてるわねぇ。これを利用すれば楽に安倍晴明に勝てそうだって言うのに」

芦屋道満の真名を握り、京子を上手く転がして言質は取った。
京子を使えばいずれにせよ、日照りの原因である東宮の封印は解けるはずで、雨を降らせるのは時間の問題になったと言える。

そして、これが松太郎の手柄として実現するまではもう少し。後は枕を高くして待つだけで良いはずなのだ。

「俺は、誰かの尻馬に乗って安倍晴明を叩きのめすつもりなんてねぇよ」

「分かってるわよ」

噂を流したのがレイノであろう事は松太郎の中では確信めいていて、なおかつ松太郎が連日探していた『雨が降らなくなった理由』も自分より先に突き止めたのがレイノだという事を思えば腸が煮えるのも理解出来る。

「つか、何が『分かった』だ。安倍晴明の野郎も人を馬鹿にしやがって」

松太郎が蓮に向かい、雨を降らせた方が勝ちと勝負をふっかけた時、蓮は余裕の微笑みで勝負を受けていたが、そもそも、自分が雨を奪っている張本人でありなら勝負を受けた厚顔ぶりには怒りが倍増する。

「腸ん中じゃ俺を笑ってやがったのか?」

だとしたら相当性悪だ。

「あんにゃろう」

「気持ちは分からなくはないけど、熱くなりすぎない方がいいわよ。クールに行かないと」

「分かってるさ」

ガシガシと乱雑に頭を掻き、前髪を持ち上げた松太郎は祥子のセリフでふうと息を吐いて怒りのボルテージをなんとかクールダウンさせる。

「芦屋道満の真名を掴んだ以上、あちらは私達に手出し出来ないでしょうし、次はどうする?」

「手出し出来ないのは確かだが、真名を知られた以上、後ろから俺を狩りに来ると思うぜ」

「それもそうね」

じゃあどうするの? と首を傾げる祥子に松太郎はまあ見てろよと不敵な笑みを浮かべた。

「連中を纏めて再起不能に叩き潰す。そうすれば残る稀代の陰陽師はこの不破松太郎様ただ一人だろ?」

「なんだか面白そうな事を思いついたのね。付き合うわ」

「ふふん。とーぜん」

祥子を従え、松太郎は次の手を打つべく陰陽寮に向かい、歩いて行った。



***



長い髪を無造作に後ろに流した男――弥勒は両腕を組み、土壁にもたれて高笑いを浮かべながら陰陽寮に帰っていく松太郎の背中をひどく冷たい視線で見送っており、松太郎が視線に気付く様子はない。

「人間とは本当に、流され易く浅はかな生き物だな」

レイノの真名を知られた以上、早めに対策を打たねばならないが、松太郎が力の共有者であるあやかし、祥子と合流した以上、安易に手出しするのは危険だ。

「ったく。こっちの予定を全部ポシャらせてくれちゃって。本当に目障りだ。あの陰陽師君は」

溜め息混じりの弥勒はカリカリと頭を掻いた。

「――弥勒。何をしている」

「レイノ?」

一度屋敷に帰ったとばかり思っていたレイノが弥勒の後ろにいる事に驚いて振り返り、目を見開いた。

「って。お前ねぇ、服くらいきちんと着たらどうだ」

襟の合わせが大きく乱れた姿に弥勒が瞳を眇めながら、母鳥よろしく、レイノの直衣を整えると、隙間から見える肌が殴られたようにどす黒く変色しているのに表情を曇らせた。

「お前のせいではない」

レイノが名乗るのを止めなかった悔恨はあっさり看破され、なんでもない顔のレイノは直に治ると大した事はない格好を崩さない。

(痛くない訳がないだろうに)

着衣の乱れすら自分で直せないほどのダメージを追いながら、それでも大丈夫だと言う男のプライドに、ぐっと言葉を飲み込んだ弥勒はいつも通りの人を食ったような笑みに戻る。

「で? 安倍晴明の足取りは占(み)えたのか?」

「いいや。京子の方は一人で屋敷に帰っているようだ、屋敷には他に気配はない」

「ふうん」

噂を流したのはレイノの仕業だが、当のレイノ自身、これほど面白く広まってくれるとは思っていなかった。

「しかし、このまま晴明が雲隠れするようなら、ちと厄介だぞ。やっぱりあの京子って娘の喉かっさばいて封印解いた方が早いんじゃねぇ?」

「しかし。ヤツがどこまで事象を歪める術を行使しているのか分かん以上、術の中央にいるだろう東宮の術を強制的に解くのはリスクが高い」

強力な術になればなるほど、解呪法を誤った時のしっぺ返しが大きい。

「まあなぁ……」

カリカリと頭をかく弥勒は、攻め倦ねている現状に少々イラつきを覚えているらしい。

「そもそも、なんだって安倍晴明はわざわざ飛鷹を東宮の偽物に仕立てたんだ?」

「さあ。さしもの右大臣(たぬき)にもそればかりは分からんだろう」

元々、右大臣、上杉虎徹には野心があり、帝の血脈に自分の血を入れる事を目論んでいた。それ故に水面下でレイノは遠い播磨から都へと呼びよせられていたのだ。

「結局。下手に安倍晴明をつつかないでこのままでいた方が自分の孫を東宮として通せる訳だから、じいさん的な都合は良い訳だよな」

「ああ。俺に記憶を呼び覚まされなければ、あのじいさんも今頃は安倍晴明のかけた夢の中で踊っていられたからな」

レイノが影にいた結果、記憶操作が効かなかった右大臣は『いつ蓮が術を解き、飛鷹が東宮でなくなるのか』というまだ見ぬ未来に恐れおののいている。

「だからって日照りもほっとけないしってんで、晴明が犯人である確たる証拠を掴み、追い落としつつ本物の東宮は亡き者に……なんて。どこまでも面倒な仕事になっちまったが。良かったのか?」

「良いもなにも、それを果たしさえすれば、たぬきから賜る褒美は思いのままだと言うぞ?」

クッと口角を上げるレイノに弥勒は胡乱な瞳を向けた。
何事にもやる気を見せた事のないレイノがなぜこうも積極的なのか。むしろ逆に不気味だ。

「つか、俺的にはレイノがこの都に執着があったって事にびっくりだよ」

芦屋家は噂通り、レイノの祖父の代の時代、帝の気まぐれで行われた術比べで土御門の陰陽師に敗れ、都を追われた。
レイノの祖父は再三の恨み節を伝えてはいたが、レイノはどこ吹く風。気にしていないと思っていたのだが。

「都というよりは内裏に……だな。ここほど魑魅魍魎が跋扈する心地良い場所は他になかろう?」
ふわふわとあたりを飛び交う浮遊霊の類はこの内裏にこそ多く漂っている。

「……まあ……な」

ジャラリと数珠を袖口から取り出し、ヒュンと放り投げるとそこにいた自縛霊があああと苦悶の声を上げた。

「いたぶるにも、再利用するにも素材に事欠かん」

「へいへい。ったくなー。主人がサディストなんざ、あんま自慢出来た代物じゃないね」

消えていく自縛霊に恍惚な顔を見せるレイノに呆れ顔の弥勒は溜め息を零す。

「だが、とりあえず。まずは安倍晴明退治より先にやる事が出来た」

「やる事?」

するとレイノは一層深めた笑みで頷く。

「狼退治からだ」

「狼? って不破?」

だが、レイノが正面から行くのは危険すぎる。どんな案があるのかと瞬いた。

「ああ。ヤツに真名を握られた以上、死んで貰わねば後々困る」

「それは確かに」

いくら京子を隷属化する暗示をかける為とはいえ、うっかり聞かれたのはまずかった。だが。

「で? どうするつもり?」

「たぬきから謁見の支度が整ったという連絡があった」

「支度……ねぇ」

今の彼らの背後に控えるのが右大臣、上杉虎徹であるからこそ可能な手段であり、松太郎には取れない方法だ。

「帝から落とす事になるだろうな」

勝算があるのだろう、レイノはふふんと口角を上げた。







ルビが多くてすみませんーっ。
次回も早めに投下しまっす!^^

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