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SS・蛹が蝶に孵るまで。7
ラブクエの8.5記事を上げようとした過程で一度データをすっとばしましたorz
本篇だけは復旧出来てるはずなのですが、一体ここに何を書いてたんだろう・・・。リンク紹介とかだったらなんだか申し訳ないです・・・orz



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蛹が蝶に孵るまで。7

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「「 ………はあ…… 」」

その日、蓮とキョーコは〝プライベートアクトレス〟の撮影を二人そろって終え、共に帰宅した。

時刻は夜九時、常であればキョーコが夕食を作る為に、パタパタとキッチンで動いている頃なのだが、本日は二人そろってソファーへ腰掛け、揃ってため息をついていた。

「すみません、敦賀さん……私が至らないばかりに」

「いや……最上さんだけのせいじゃないよ」

そう言うものの、蓮の表情も冴えない。

「いえ。私が役からブレてしまったのは、私が未熟だからです」

その日、撮影後に新開から出された宿題。それは、収録中に揺らいでしまった事を新開に見破られた結果であった。

〝燿子〟が〝黎〟の顔に両手をあてた瞬間、その感触に、温かさに、カメラの前だというのに、最上キョーコへと戻ってしまった。なんとか動きは台本通り行ったものの、やはり、ぎこちなく、ソレは新開にあっさりと看破された。

「あの時、俺も一瞬素に戻ってしまった。だから君だけの責任じゃないんだ」

しょげる様子のキョーコを前に、蓮も苦い笑いと共に、己の心情を零す。

「えっ? 敦賀さんが、ですか!?」

「うん。俺もなんだ。ごめんね、俺、カッコ悪いね」

困ったように微笑を浮かべた蓮をキョーコが驚きの顔で見つめた。
蓮が演技中に……役が抜けた……?
未熟な自分ならまだしも、〝敦賀蓮〟のありえない事態、それはキョーコには信じられない一言だった。

「そ、そんな、敦賀さん、私を慰めてくれなくてもいいんですよ?」

「いや……そんな事はないよ。彼は……黎はとても俺に近い感覚がしてね。混ざる、というのでも無いんだけど、たまに黎であるはずなのに、俺自身がセリフを言ってるんじゃないかって感じる瞬間があるんだ」

それはキョーコも感じていた感覚でキョーコは同じ事を感じていたのだという事に驚く。
〝燿子〟も〝黎〟もキャラクターが素のキョーコと蓮に似ている所が多いのだ。そのせいか、今まで演じてきたどのキャラクターよりも役入りやすければ同じ分だけ役が抜けやすかった。

「それは、私も感じました」

「今回のドラマ制作には社長も噛んでるからね、新開監督もあえてこういう脚本をぶつけて来たんだろうけど……」

「え……? それってどういう意味ですか?」

「……いや」

蓮は、黎を意識する燿子の姿にキョーコをよぎらせて、うっかり素の自分に返ってしまった。
おそらくはこれはキョーコのステップアップの為だけでは無く、蓮の役者としての、更なるスキルアップの為にも仕組まれたドラマなのだ。たとえ眼前に好きな女の子がいたとしても役から決してブレない精神の強さを求められている。
それは蓮の目的達成の為には必要になる心の強さを試されている。

「俺もまだまだだな……ってね」

「敦賀さん……」

「次で完璧なOKもらえるように頑張らないとね」

苦笑を浮かべる蓮にキョーコは意を決して一つの提案をしてみる事にした。

「あの……敦賀さん」

「何かな?」

「練習させていただいてもよろしいですか?」

「……え?」

「その……具体的な駄目出しが敦賀さんのお顔を触る所だったので、敦賀さんがお嫌でなければあのシーンの練習に付き合って頂けたらと思うんですけど……」

その言葉に、ふと無表情になってしまった蓮の反応にキョーコは慌てて、やっぱりご迷惑ですよね、と言葉を取り消そうとしたのだが、そこでフリーズしていた蓮がハッと動きを取り戻した。

「いや……大丈夫だよ、やってみようか。……ちょうどソファーだし、このままここでやってみる?」

「は、はい、よろしくお願いします」

緊張した面持ちのキョーコは、勢い良く返事を返すと、台本にある通り、ソファーに座った蓮の足の間に自分の体を移動した。蓮はそんなキョーコの両の手首を取り、自らの頬へと導く。

「監督がもっと大胆に触れって言ってたんだし、遠慮せずに触っていいから、さあどうぞ」

にっこり笑って自らの顔を提供する蓮に、キョーコは怯む。

「ど、どうぞと言われましても、敦賀さんのお顔を触るのは普通に……いえ、ものすごく緊張するんですが!」

「う~ん、でも触り慣れちゃえば多分大丈夫だよ。習うより習えってね。さあ、燿子ちゃん、どうぞ?」

キョーコを切り替える為に蓮はあえて役名で呼んだ。そうすればキョーコの中の女優魂が答えてくれる事は、これまでずっとキョーコを見ていた蓮にはよく分かっていたからだ。

「………」

目を閉じたキョーコの両手が蓮の頬を探り、蓮の形の良い耳、その艶のある髪を辿る。その手つきにはまだ辿々しさが感じられ、この先をどうするか、躊躇し、考えあぐねるキョーコの思いがダイレクトにその指先から蓮へと伝わる。

「ここから先は台本で〝少しずつ黎の感触に慣れてきた燿子は、黎に遠慮なく大胆に触れていく〟だよ?」

蓮の言葉に促され、キョーコの指先にさきほどよりも力が加わり、ペタペタと蓮の額を撫で、伏せた瞼を軽くなぞり、整った鼻梁を辿る。そして完璧なバランスを保つ蓮の唇へとさしかかろうとしたその時、そこまで来てキョーコの手はピクリと動き、離れ、キョーコは自分の瞼を上げた。

「あ、す……すみません、私……」

「……いや。大丈夫だよ、もう一度やってみようか」

けれど何度回数を重ねてもキョーコの動きは、蓮の唇を目前に怯えたように離れてしまう。

「す、すみません、敦賀さん……、私……」

「大丈夫だよ、最上さん」

何度も同じ所でフリーズするキョーコ。
大丈夫とは言ってみても、蓮にも何が大丈夫なのか分からない。駄目な理由は自分の唇が原因なのだろうか……と当たりをつけてみるが、そのフリーズを解く方法が蓮にはすぐには思いつかなかった。

「す、すみません……私からお願いしたのに…」

不甲斐ない自分にうなだれるキョーコを前に、限りなく優しく蓮は言葉をかけた。

「いいんだよ。俺も同じ状態になった事があるしね」

それはキョーコも知る〝DARKMOON〟での一幕。

「うーん、そうだな……」

打開策を探すべく、蓮は思案する。
そもそも、キョーコはなぜフリーズするのか、かつての蓮のように恋心が分からずに、演じ方が分からない、というのとは状況が似ているが、違うように思う。

キョーコその指から伝わってくるのは〝怯え〟の感情である気がするのだ。
以前キョーコの頬を捉えた口付けの記憶で怯えられている……という事だろうか。それとも、この後、燿子は己に芽生える淡い思いをほのかに自覚するところだ。まさか自分を意識する事に怯えているのだろうかという考えがよぎらなくもないが、相手はキョーコ、正確な理由は予想もしない事かもしれないと蓮は度重ねた学習能力で自分の想像を否定した。

となると、やはりこれからの展開……〝恋心を抱く〟と言うことに無意識に怯えているのだろうか…。それとも、やはり自分の唇からよぎるのだろうか……怖い……と。

片恋の相手から怯えられているという事実は蓮の心に少なからずダメージをもたらし、痛みを齎す。
結果、二人は互いに混乱してしまい、辺りに沈黙が落ちる。

「うーん」

それでもこの沈黙を破ったのは蓮の方だった。

「ちょっと気分を変えてみようか」

「へ?」

ちょっと待ってて、と蓮はキョーコを残してリビングを出て行く。



*****


「お待たせ、最上さん」

戻ってきた蓮は、それまでの流麗な敦賀蓮スタイルではなく、その髪をカインのように乱し、そして、蓮のその瞳は青く澄み渡っていた。

「つ、敦賀……さん?」

「俺だから緊張するのなら、いっそ別人っぽくしてみたらどうかなと思ってね。どう?」

「……どこの外国の方ですかって感じですね」

少し笑顔を取り戻したキョーコに蓮も微笑む。
そして、その微笑みを目にしたキョーコは、その青い瞳の雰囲気に既視感を覚えた。いつか……どこかで……と。
けれど、キョーコはその考えをすぐに振り払い、これから自分が〝出来なくてはならない事〟を思案する。

「敦賀さんって、目の色一つで印象がとても変わるんですね。なんだか敦賀さんじゃない人みたいです」

「ふふ、ありがとう、さ、もう一度やってみようか?」

(早いとこ出口を探さないと、距離が近すぎて、彼女を襲いそうで困る。本当に、なんの拷問だ。一緒に暮らし始めてから極限まで試されてる気がするな……全く……恨みますよ、社長)

「……はい。よろしくお願いします。次こそは、きちんと演じますから!」

思いつめたような表情を浮かべるキョーコに、蓮は自分の理性を総動員する覚悟を固め、一つの提案を口にした。

「ああ、そうだ、最上さん。一度目をあけてやってみてごらん?」

「え?」

キョーコの心の中に、何かに対する〝怯え〟があるのなら、蓮はそれを取り除いてあげなければ、キョーコはきっと一歩を踏み出せない。無意識のキョーコの心に刺さっている棘のような何かがあるのならば、それを見つけなければならない。

そのためであるなら、蓮は己の全てでもって、キョーコを庇護したい、心を溶かしてあげたいと思う。その為には瞳に映る感情を逃さず捕えたかった。

「何も怖くないから、ね?」

その蓮の微笑みに、キョーコは胸の中に温かい何かを感じる。蓮の腕に包まれた時にも感じた安心感。蓮に守られているようで、涙が出そうな心地良いまでの安堵感……。

「はい、よろしくお願いします」

蓮に促されるまま、キョーコは台本をなぞり、蓮の心臓までたどり着く。

(……敦賀さんの鼓動……本当に……早い……)

「あ、ご、ごめんなさいっ」

慌てて蓮から手を離したキョーコが視線を上げれば、全てを見透かすような青い瞳がキョーコをジッと見つめていて、顔に熱が一気に集まるのを自覚したキョーコは、思わず顔を背ける。

「わ、私……コーヒー入れてくる!!!」

キョーコは辛うじて台本通りの台詞を口にして、キッチンへと逃亡した。
シナリオの通り、キッチンに走りこみ、そして、キョーコはへたり込む。

「……え? 今の……な、な、何? ……わ、私、私っ……なんでこんなにドキドキしてるの?」

これは、台本通りの台詞。

けれど、それは現在のキョーコの心情。

キョーコの心臓も、先ほどの蓮と劣らずに早い鼓動を刻んでいる。

「……私……敦賀さんの事…………」

耀子の思い『…私……黎の事……好き…なの…?』同じ台詞が思わずキョーコの口から零れる。

「好き…なの…?」

このつぶやきは、リビングにいる蓮には聞こえることは無い。

そして、必死にキョーコは己の心を落ち着かせ、後輩の最上キョーコの顔を取り戻す為にコーヒーを二つ入れた。

奇しくも台本通りの恋に落ちてしまったキョーコは、その後、台本通りに演じ、新開の納得する演技をする事が出来た。







冒頭に書いた通り、2013/05/07.一度データをすっとばしました。幸い再録本にしてた分でアップしてた日付までちゃんと書いてたので、バックアップがありましたので、本文は復旧できたとは思うのですが、通して読んでる方が違和感覚えたらすいませんーっ。
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