スキップ/ビート二次創作のブログ。 二次創作に理解の無い方の閲覧はご遠慮下さい。初訪問の方ははじめまして記事を御一読ください

SS・白銀の狐20
気がつけば20話目でした。こんばんは。
書いてる時は気付かなかったけど、本当、いっぱい書いたんだなぁとかちょっと感慨深い物がありましたです。
パラレルが苦手な方には申し訳ない更新具合ですが、他にも色々考えてる途中というか、書いてる途中なのでまた追々><

ところで、冬が寒すぎて顔も身体も肌が乾燥でバッキバキですよ。おすすめ頂いたナノケアとか、いっそハダクリエが欲しいです。
三田さんにお願いしたらかしこまりましたとか言ってくれんかな←古









白銀の狐 20







間近で鳴り響いた雷鳴の激しさに、青くなったのはこの場に居合わせたほぼ全員だ。

「ぐっ、帰りたいやつはさっさと去ね! 俺が許す!」

絽織が慌てふためく見物人に言い捨てると、顔を見合わせた貴族達はわらわらと入り口に向かい、残ったのは陰陽師と絽織、万里亜、近衛兵、それに帝をこのまま置いては帰れないと震える体で居残る上杉虎徹だ。

外からは降り始めた雨が激しさを増し、叩きつけるような雨音と雷がゴロゴロと今にも落ちるだろう唸り声が伝う。

確かに待ちわびた雨ではあるのだが、その異質な雰囲気は全員が感じていた。

「帝、道満の予言通り、雨は降りました」

「……そのようだな」

異様である事に気付きながらも、懸念を振り払うように言葉を重ねる右大臣には野心が突き進ませた執念を感じられる。

「この私の召し抱えます道満は、素晴らしい腕を持った陰陽師なのです。どうかこれよりは帝の覚えめでたく、なにとぞお取り立て頂きたく」

「……ああ……」

「ありがとうございます」

松太郎の喉元まで『今はそんな事より大事になりそうな予兆があるだろう』と出かけてはいたが、右大臣は絽織の返事に満足げな笑みを浮かべているだけで、やはり眼前に迫ろうとしているこの不穏な予感を見極める事から目を背けていた。

「そんな事より」

「そんな事だと!」

機嫌を良くする右大臣へ切り込んだのは当のレイノだ。

「構わん。申せ」

食ってかかる勢いの右大臣を制した絽織が先を促すと、レイノは剣呑な表情で扉から見える先を見据えたまま言った。

「この場に東宮殿下が封じられていた事による不自然な氣の淀みから、雨はせき止められていた」

「確かに。人為的に出来た淀みが都から雨を奪っていた正体ではあったな」

そこはレイノ、松太郎の共通見解であり、二人の意見は合致する。
松太郎が後手に回ったのは、人為的な淀みを生み出したものを同業者だと当たりをつけたのがレイノで、もののけ、悪霊的な方面から調べたのが松太郎であったかの差でしかない。

「……その封印を解いたからとはいえ。この雨量はどうにもおかしい。不破、貴様はどう思う」

「言いたかないが同感だ。不自然すぎる。東宮殿下は何をご存知で?」

「不破っ!  東宮様に失礼であろう」

そうだそうだと慌てて制そうとする陰陽寮の陰陽師達であるが、そんな彼らに皇貴は言った。

「あなた方も陰陽師とはいえ、普通の人間に近い。引き上げねば危険ですよ」

「皇貴、お前。何を考えている」

一向に真意を述べずに警告だけ発する皇貴に不審な眼差しが向けられたのも当然の事であり、絽織の訝しむ様子にも皇貴は構う事なく今度は近衛兵に声をかけた。

「帝と万里亜を安全な場所までお連れしてくれ」

「お父様! なぜお父様はご一緒ではないのですか!?」

万里亜の叫び声に皇貴は僅かに表情を強張らせつつも、振り払うように強く目蓋を閉じ、そうして開くと、なんでもない顔で告げた。

「私にはここでまだやる事がある。皆、早くここから離れなさい」

「お父様!!」

さらに叫ぶ万里亜の悲痛な声が室内に響く。けれどもそんな声をかき消すように二発目の落雷がすぐそばに落ちた爆音が轟き、地面が揺れるほどの衝撃に全員が息を飲んでビクリと肩を震わせた。

「……晴明殿。巻き込んですまないが、もはやこれも仕方のない事。申し訳ないが、ここにいる皆から、私という記憶をもう一度消しておくれ」

「皇貴! お前っ!」

やはり安倍晴明が行った事だったのだと一同に確信させ、全員の視線は一斉に蓮へと注がれる。

「東宮様、それは……」

けれど、歯切れの悪い蓮の様子に違和感だけが募る。

「――お前、本当に安倍晴明か?」

最初にそれを口にしたのは、じっくりと蓮の言動を見定めていた松太郎であった。



***




「安倍晴明か……だと? 不思議な事を言うね。俺が安倍晴明でなければなんだと言うんだい?」

優雅に微笑んむ姿もピクリと反応したのはやはり松太郎だ。

「知ってるか? 安倍晴明ってヤツは、こういう畏まった場では嫌みったらしく自分の事を絶対に『私』って言うって事」

「ぁっ」

小さく息を飲んだ蓮に、松太郎は素早く右手で印を刻む。

「破っ!」

「くっ!!」

小さな光の弾が飛んで来たそれを間一髪のところで避けた蓮は皇貴とそれ以外の人間の対峙するほぼ真ん中へと降り立った。

「やっぱりお前。偽物か」

「何をっ」

「お得意の術でかき消せずに無様に足で避けたのが何よりの証拠だろうさ」

コキンコキンと首を鳴らした松太郎が殺気溢れる眼差しで見据える。

「つーことは、お前、式紙だな。丁度いいからかき消してやんよ」

「やめっ!」

「オン……アビラウンケン、バザラ、ダト、バン」

 印を切り、本気の退魔法を放つ松太郎を制止する事は叶わず、その呪文により一瞬で召喚された鋭い氷の氷柱が蓮に向かって襲いかかった。




***



「晴明殿!」

「お父様っ!?」

松太郎の攻撃呪文により生まれた真っ白な蒸気により、晴明がどうなったかは術者である松太郎にも見えず、そんな中、晴明のいる方へと駆け寄ったのは皇貴である。

「やりすぎだ。馬鹿め」

「ああん!? 今なんつった、レイノ!!」

「ふっ、ぐうっ!」

思わず出た毒舌に、真名の行使でもって返されたレイノは体中を駆け抜ける電流のような痛みに耐えきれずに片膝を付いた。

「ちっ。ったく、邪魔すんな!」

「ふん……本当に鬱陶しい男だ」

痛みから冷や汗を流しながらも強気に構え、一歩も引こうとしないレイノを松太郎は忌々しい物を見る目で睨む。
そうやって二人がやりあっている間に白煙はシュウウという音をたてながら霧散し、視界はクリアになっていった。

「おいっ、あれは……なんだ?」

最初に気付いたのはそこに目を凝らしていた椹だった。

「なに?」

椹の呟きに松太郎が視線をやると、確かに蒸気は消えていく気配を見せているというのに、蒸気とは違う白く揺らめく影が増している。

「なんだ?」

得体の知れなさに松太郎が目を凝らすと、それは次第に立ち上る炎の壁となって天井まで燃え上がった。

「ひああああ!」

「火だっ、火がっ!!」

慌てふためく陰陽師達をよそに松太郎、レイノは冷静にその正体を見極めようと一歩近づく。

「ちっ!」

そんな二人の動向を見透かしたように小さな白い炎のつぶてが松太郎めがけて飛来し、寸前で避けた松太郎の前髪と後ろにいたレイノの袂が僅かにジリリと焼けた。

「やってくれる!」

髪の毛が焼け焦げる特有の悪臭と、完全に避けきれなかった自身への苛立ちを込めた松太郎が憤怒の形相で印を刻み、氷柱を召喚して元凶がいるであろう場所へと叩き込むと、炎と氷の塊がぶつかる大きな衝突音と共に、互いに相殺し合った蒸気が部屋中を真っ白に染め上げる。

何も見えないと騒ぐ陰陽師達を後ろ手に、レイノがちぃと舌打ちを放った。

「不破。貴様、少しは頭を使え」

「ああん!?」

「全く。――秩っ」

悪態をつきながらレイノが胸元から取り出した呪札を横一線に振るう。すると、どこからともなく吹き荒れた風が蒸気を一気に扉の外へと押し出した。

「なんだ? ありゃ……」

「なるほど。それがお前の真の姿という訳か」

レイノが起こした風により現れた炎を巻き起こした正体。

「――狐」

茶色瞳を輝かせ、真っ白な炎をはごろものように纏う銀色の三尾狐。京子の姿がそこにあった。



***




「へぇ、なるほど。って事は、今のが狐火か。……安倍晴明は九尾狐の合いの子とはよく言ったもんだぜ。俺達がさっきまで人間だと思ってたのは野狐だったって事じゃねぇかか」

ふんと鼻を鳴らした松太郎が京子を見据えて言い捨てた。

外見を気にする彼にとって、前髪を焦がされた恨みは相当根深いものらしい。

「だがしかし、かの安倍晴明の正体が三尾程度の低能妖怪だったとは意外だな」

レイノはといえば、狐である京子の姿こそが安倍晴明の本性だと思ったようだ。

「どっちにしろ、化け狐に変わりねぇだろ」

そして夏彦が京子の擬態であり、本性が狐だとすでに見抜いているはずの松太郎は、レイノの勘違いを良い事に、京子を安倍晴明として葬り去るつもりになったらしい。

「シャアアア」

毛を逆立て、全身で威嚇する京子だが、小さな狐一匹の抵抗に大の男二人が動揺する訳もなく。

「な、何をしておる! 早くなんとかせい、道満!」

腰を抜かし、へたり込んだ右大臣がレイノに向かい金切り声を上げ、レイノの注意が一瞬、右大臣へと向いた瞬間を見逃さずに松太郎が叫ぶ。

「レイノっ。テメェはひっこんでろ! コイツは俺様が調伏する!」

「っう! 貴様っ!」

再び真名による拘束を受けたレイノが額に脂汗をにじませて膝を付いた。
何度も松太郎に呼ばれる事により走る電撃は頭痛と立ち眩みを引き起こしており、レイノの体力を実は相当に奪っているのだ。

ギリギリと奥歯を噛み締め、痛みをこらえながら松太郎を睨む。

「さてと。……行くぜぇっ!」

一方。レイノを追いやった事で多少の鬱憤が晴れたらしい松太郎はニイと歯を出して笑う。
指先で宙に印を刻み、再び放たたれた呪文はまっすく京子に牙を向く。

松太郎と京子の間に炎と氷の激突する破裂音が轟いた。



***




(今、倒れる訳にはいかない)

限界など、とうの昔に超えた体を奮起させ、京子は狐火を使う。

「おらおら、いくぜ!」

炎を障壁にして自分の後ろにいる皇貴を守ってはいるのだが、床板にある真っ黒に焦げた跡が後退した距離を示しており、後ろ足が壁にあたるまでもういくらもない。

レイノは松太郎によりしばらくは戦闘不能。帝と万里亜、右大臣は力を持たず、陰陽頭を始めとした陰陽師達はまず帝の警護を第一にと考えているのだろう、三人を守る盾となるように陣形を組んでいる。

(なら、万里亜ちゃんが怪我をする事はきっとないわよね)

絽織の腕の中にいる万里亜が大きな瞳を目一杯見開いてこちらを見ている。

(ここで私が倒れたら、蓮様も、万里亜ちゃんのお父様も無事ではいられないっ)

無実だと信じているからこそ、真実を述べる機会を失わせない為には自分が安倍晴明であるなどという誤解を生んだまま倒さる訳にも、晴明の使い魔といった類の連想を新たに生み出させる訳にもいかない。

(調伏なんて、されないんだから!)

もう人型を取れない程に妖力は薄れている。

四本足で地を踏みしめているはずが、まるで空を浮いているようで呼吸とて上手く出来ない。
笑う膝を、震える腕を。かろうじて支えているのは気力のみ。

(蓮様……)

なぜ今ここにいてくれないのか切なく、苦しい。
それでもなお。この世界に蓮の居場所を守りたい。

「しぶといな。いい加減、観念しろっ!」

「っああぅ」

ピキピキと炎の障壁に亀裂が入り、自分が押し負ける感覚が如実に伝わる。


『――助けに行くから読んでご覧』


『君にだけ教えた、もう一つの真名を……』


(――久遠)


薄れゆく意識の中、京子は確かに蓮を呼んだ。










残すところあと三話なので、ひょっとしなくても、今月中に完結しそうです。
スポンサーサイト

コメントの投稿

 管理者にだけ表示を許可する

トラックバック
トラックバック URL

Copyright © 光の箱庭. all rights reserved.