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SS・白銀の狐22
こんばんはー!今日は今日とてぎんぎつねとかさむらいふらめんことか、7話場×2で、なんかどうしたずっとモニター見ているな!みたいな休日を送りましたよ←なにやってんのー。
原稿もぼちぼち進めたり地球防衛したりお菓子を食べたり。怠惰ってすばらしいね。
そろそろ現実を直視しようと思う。ぐぼ。

はい、作業しますすいません。







白銀の狐 22






 降る雨は大地を潤す。
 けれど、待ち焦がれていた雨が、自分達が必要とするよりもはるかに大きすぎる物だと気付いた人々の喜びはつかの間。食べる物や暮らす土地、そして自分達の命といった何もかもを奪い去ろうとする強大な力の前には悲鳴を上げ、ただ逃げまどうより無かった。
 嵐が通り過ぎる時を待ち、無事を願う人々は同時に、最後の瞬間をも覚悟をし、愛しい者を抱き締めそれぞれに過ごす。
 この世界の終わりかとも思われた激しい嵐を起こした根源が、一人の人間の想いが始まりだった事を、彼らが知る機会はこの先も永遠に無い――。



 伝わる振動が、深く沈んでいた京子の意識を軽く揺する。

「ん……」

 身じろぎした京子は、ピクリと動いた自分の指先の感覚で、自分が人の姿を取っている事をうっすらと理解し、ゆっくりと意識を浮上させた。

「起きた?」

「え……?」

 温かな温もりは、自分が蓮の腕に抱えられているからだと知り、京子の意識は一気に現実に呼び覚まされる。

「れ、蓮様っ!?」

「ああほら、あまり暴れると落ちてしまうよ?」

 狐の姿ならば軽かろうが、人の姿のまま抱かれている事に驚いていると、蓮の落ちるという単語に反応して身を固くするが、目の前に蓮の胸板があるという状況は、何度抱かれようと、どうにも落ち着かない。

「ここは……」

 田舎道は豪雨によるぬかるみが新しく、至る所に水たまりがあり、緑の葉が生い茂る木々には雨露が煌めき、蜘蛛の巣までが光って見える。

夕方の空模様には七色の虹が出ていて京子は思わず「うわぁ」と声をあげて見惚れた。

「えっと、私……」

見覚えのある景色に瞬きをしながら見渡すと、屋敷の傍の橋の上だ。

「もうすぐ家だ。このままでおいで?」

「で、でもっ」

 あわあわと動揺する京子を軽く抱え直し、蓮はひたひたと歩く。

「え? あっ」

 先ほど感じた振動は、蓮が自分を抱え直す際の物だと気付いた京子がやっぱり降りますよ? と尋ねると、蓮はもう一度京子を抱え直し「うーん」と珍しく歯切れの悪い返事をした。

「でも駄目。あともう少しだし」

 そう言われると確かに屋敷の近くではあるのだが、やはり抱え直す仕草をする蓮に、京子は一体いつから蓮は自分を抱えて歩いているのかと考える。

「ひょっとして蓮様、ずっと私を抱えて歩いてたんじゃっ」

「まあ、帰りに使える近道も無かったしね」

「近道?」

 蓮の知る限り、人間の肉体のままで入る事の出来る異界への出入口は一条戻橋の下にのみ有り、異界にいた蓮が問題の場所へ一瞬で駆けつける事が出来たのは、京子が自分を呼んだからに他ならず、さすがの蓮も何もない場所へ瞬時に飛ぶ術は使えない。

「俺もなんでもかんでも出来る訳じゃないって自覚できて、少しほっとしてる」

「どういう意味ですか?」

 幼い頃から能力がありすぎた事で、いつの間にかひねてしまったと言ってしまえばそれまでだが、自分が一番人間としてありたかったはずであるのにすっかり忘れていた。
 京子は自分が能力の無い、あやかしとして出来そこないだと思っていたが、蓮からすれば、どんな時でもひたむきに信じると決めた者を信じ続けられる強さこそが最強の盾であるように思う。

「かなわないなって思って」

 幼い頃、ほんの僅かな時間の逢瀬で蓮を信じると決めてくれた潔さ。あの瞬間、蓮がどれほど救われていたか、京子は知らない。

「良く分かりません」

「君のお陰で色々と思い出した事があるってところかな」

「もうっ、やっぱり蓮様は内緒事をしたがりますよね」

「いやいや。これは内緒事ではないよ?」

 自分一人が背負い、何も教えなかった事で、京子にも、もちろん式神達にもかなり心配をかけていたという事に気付いたのは、京子が気を失った後になって社と奏江のお小言を聞いてからだ。

「これからはちゃんと話すから」

「本当ですか?」

「うん。本当」

 なら、良いですと言う京子の顔にはとても久しぶりに笑顔が浮かんだ。

「ところで蓮様。伺っても構いませんか?」

「構わないよ」

今、ここが屋敷の近くである事は分かる。あちこちに感じていたはずの痛みはどこにもなく、きっと出会った時と同じように蓮が治してくれたのだろう事は分かる。

そうして、自分も蓮も、揃って無事であるのだと分かる。

「あの、一体何がどうなったんでしょう」

けれど、今、雨があがっているという事は、まさか皇貴が再び封印されたという事なのだろうか。
不安に思わず表情が曇ると、蓮は悲しむ事は何もないよと告げた。

「結論から言うと、帝の裁量で今日の所は各自散開。日を改めてという事になった」

蓮が歩く度に上下に揺れる腕の中で京子は蓮を見上げて瞬いた。

「そうだな」

京子の顔には結論すぎて分かりませんと書いてあるのが手に取るように見て取れ、蓮は笑いをかみ殺しながらどこから話そうかと呟く。

「始まりは京子と出会ってしばらくした頃だ」

「はい」

「今年に入って雨は全く降らなくなったね」

劇的に日照りが続き、あまりの暑さに喘いだ。

「皆が異変を感じていた」

「はい」

「それで、俺は帝と東宮様に秘密裏に呼ばれて、原因を占ったんだ」

「東宮様と帝もご一緒に、ですか?」

うんと頷き、蓮は思い返しながら続ける。

「日照りの原因はね。人間の負の思念から起きた疫災だ」

「負の思念、ですか」

それは生きている人間の強すぎる悲しみの想いが生き霊となり、そして死霊の思念を引き寄せた集合体だったと蓮は言う。

「最初は一人分だったんだけれど、生まれた場所が悪くて、それはあっという間に周囲の弱い悪霊を引き寄せて大きくなった」

「どこに生まれたんですか?」

「内裏だ」

元々、内裏という場所は様々な人間の残留思念や死霊が渦巻いており、一人分の悲しみを餌に、それらが膨れ上がるまでに時間はたいしてかからなかった。

「文字通り悲しみを餌にまとわりつく類のものたちは、涙を吸い上げるのと同じように、辺り一帯の水分を吸い上げ、乾きを生んだ」

「じゃあ、それをやっつければ」

「そうだね」

だから、蓮は密かに調伏の命令を受けた。

「調伏自体はね、簡単な事だったはずなんだけれど、一つだけ大きな問題があったんだ」

「問題……ですか」

「根幹となった生き霊がね。幼い少女のものだったから、無理やり調伏してしまうと、本人になんらかの悪影響が出てしまいかねなかったし、沢山の死霊に吸われていたものが一気に解放されれば、今度は大きな水害が起こりかねなかった」

「幼い少女って……」

なんとなく、京子には誰の話であるのかが分かる気がした。

「万里亜姫だ」

「どうして」

なぜ万里亜に生き霊を生み出してしまうほどの悲しみが降り積もったのか。

「彼女の母親。東宮様の御正妃だね。御正妃様は万里亜姫を産み落とした後に身罷られたのだけれど、お二人の子供は万里亜姫しかおられなくてね」

「はい」

「万里亜姫が男児であったならばといった声や、東宮様が他の妃をいつ召し上げるのか。そんな声が幼い彼女には相当なストレスだったはずだ」

自分を生まなければ母親は死なずに済んだのではないかと自問自答も相当重ねたのだろう。

「皇族としての生活が、父君にも満足に会えず、問う事も出来なくさせた。人前で涙すら流せない。流せない涙の
行き先が、雨という形へと昇華されてしまったんだよ」

「……そう、だったんですか」

本人が無意識のうちに心の奥底にあった悲しみを切り離した結果、それは生き霊となった。

「それを報告した時、東宮様は随分と悩まれた」

無意識下の事とはいえ、自分が原因となって怪異を引き起こしているなどと知れば、幼い彼女にまた新しい苦しみを植え付ける事になるだろう。
けれど、何も手を打たない訳にはいかない。

「疫災をなんとか押し止め、万里亜姫に負担なく生き霊と化した魂の一部を解放する。それが一番の理想的な事だったんだ」

「はい……」

そう言われれば理解は出来るが、しかし、なぜ皇貴を封印したり、飛鷹を偽東宮として据え置いたのかが分からずに京子の表情は未だ冴えない。そんな考え込む京子の顔を見た蓮は苦笑を浮かべながら語り続けた。

「とにもかくにも、万里亜姫の心の一部をいつまでも悪霊共のいいようにさせる訳にもいかなくてね。意を決して、まずは彼女にまとわりついていたものを時間をかけて調伏しようという話になった」

「それじゃあ」

「うん。そうする事で激しい嵐が起きるのは時間の問題で、だけど、みすみす起こす訳にもいかない。だからね、神様の力を借りる事にしたんだ」

皇貴が半ば自分を生け贄にしていた神社には、都で一番大きな水脈が地下に流れ、かつ太陽神が祀られており、力を借りるには絶好の場所だった。

「結果的に日照りは続くけれど、豪雨で全てを無くすよりはマシだろうし、今年一年だけならなんとか耐えられるだろうという目算もあってね」

そこで皇貴が一時的に神への供物となるだけで済むようにと蓮が力の限りを注ぎ作ったのがあの不思議な透明の棺だ。

「じゃあ偽物の東宮様は?」

飛鷹を東宮として置いたのは、一時的にとはいえ、東宮の不在は国の在り方に混乱を招く上、表立って神隠しにあってしまえば帰ってきたとしても、いわくつきの皇子では将来的に立帝出来なくなってしまう。
そしてなにより父親が消える事は万里亜が最も傷付くと考えた絽織の策でもあった。

「ついでによからぬ事を考えていそうな右大臣に灸を据えるとかなんとか」

「そ、そうなんですか……」

つまり、右大臣の野望は最初から絽織に筒抜けだった訳だ。

「万里亜姫の生き霊を保護していたのがあの宮で、琴南さんにはその守護を頼んでいたんだ」

そして、不自然でないようにと事情を知る帝すらボロを出さないようにと記憶操作まで施したのだが。

「まさか、万里亜姫が真っ先に父君の記憶を取り戻してしまうとはね」

それだけ万里亜が父親を深く愛している証ではあったが、一人水面下で事を進めていた蓮は、うかつにも気付けなかった。
後は京子の知る通り、万里亜は安倍晴明を頼りに外の世界へ。そして、蓮はといえば。

「早く終わらせようとうっかり異界に引き込もったばかりに……ね」

京子に格好良い所を見せようかな、などという軽い気持ちが相当裏目に出てしまい、逆に危険にさらす結果となってしまったのだ。

「欲張らずにこっちの世界で進めていれば良かった。ごめんね」

常の余裕に溢れた表情ではなく、しょぼくれた顔をする蓮を京子は首にすがりついて抱き締め返した。

「沢山お仕事を抱えていたんですね。分かってあげられなくてごめんなさい」

自分だけは蓮の事を分かっていなければならなかったのに、思い込みから蓮を急かしてしまった。

「さて、今回の事で謝らねばならないのは主に俺の方だからね。君に謝罪されてしまうと困ってしまうな」

「えぇ? でもっ」

謝りたいと思っているのは京子の素直な心だというのにと京子こそ困り顔で蓮を見上げると、蓮は優しい微苦笑で京子を見つめる。

「ああ。そうだ、忘れる所だった」

「はい?」

 答える京子がぱちぱちと瞬きをするが、蓮は京子の顔を見下ろしたまま、何も言葉を発しない。
 なんともなしに京子から言葉を発する事も躊躇われ、少しの間、無言の時が流れた。

「――ただいま」

低く甘い声が京子の耳朶をくすぐり、抱き締める腕に力が籠もる。
空は二人を見守っているかのように雲一つなく、草木にかかる雨粒の雫は煌めき、夕焼けの空には七色の虹が輝いている。

「おかえりなさい」

とても晴れやかな気持ちで屋敷へと帰っていく二人には、互いの体温と鼓動が間近に感じられる僥倖で、世界は一層輝かしく、愛しいものに思えてならなかった――。








次回が最終話でございます。
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