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SS・芸能人のススメ 1
【パスワード関係】8/15まで完了しました。
ツイッターで明日にはーとか呟いた足で、やっぱり今日も少しがんばるかーって事でちょっとがんばりました。おいどん、がんばりました←なんだろう褒めて感が強い。
お待たせしまくりで申し訳ありませんが、16日以降のみなさま、今しばらく、今しばらくお時間下さいませー!!!

最近は、そやえもん、でっかい買い物しました。寝具っていう←シングずうぉーずとは特に関係ないんですよ。
まあ、ローンですけど← ただ、オーダー枕作ったんですよ!これできっと快適な・・・いや、どうだろう。
で、思ったんです。敦賀さんのベッド・・・・・・寝心地はいかほどなもんなのか。






芸能人のススメ 1








小春日和もうららかなある日。

「はああああ……」

LME事務所ビル、通路の一角で、最上キョーコは春の陽気とは裏腹に、地よりも深く、ともすれば闇よりも暗い、憂鬱を体現したかのように淀みきった溜め息を吐いていた。

ここにマリアがいたならば、お姉さまの幸せが逃げてしまうと、使命感を燃やし、虫取り網を片手にキョーコの幸福を呼び止めにかかっただろうが、あいにくとその少女はここにいない。

「……はああああ。なんであんな事しちゃったんだろう」

そうしてキョーコはこの日何度目かしれない溜め息を吐き出した。

「ずいぶん大きな溜め息だね」

「へっ?つ、敦賀さん!」

「お疲れさま。最上さん」

自分の世界に引きこもっていたキョーコを一瞬にして現実に引き戻したのは、芸能界抱かれたい男ナンバーワンの称号を冠する敦賀蓮、その人だ。

「さっきから見ていたけど、またずいぶんと暗い顔をしているね。なにかあった?」

後光を背負っているかのようなキラキラしい男ぶりの蓮に気遣わしげな眼差しを向けられ、一体いつから見られていたのだと気付いた途端、ドクリと耳の奥が高鳴る。
一般的に考えたならば、ここは頬を染めるリアクションでも良さそうな所だが、そこは難攻不落のラブミー部員。僅かに息を飲み込んだキョーコは、一拍の間を取る事で動揺を押し殺した。


キョーコはすぐさま頭を下げ、おはようございます!お疲れ様です!と、まずは声を大にして挨拶をする。
蓮からすればかなりのオーバーアクションだったが、それというのも過去の自分が行った挨拶指導という名の悪戯が尾を引いているのだと思い至り、苦笑まじりで「いいから、何があったの?」と頭を上げるように促さざるを得ない。

「いえ、それほど大した事ではないんですけど……」

「でも、大した事がないのに、最上さんはあんな顔をして歩かないだろう?」

「う……っ」

芸能人たるもの、いつでもどこでも見られているものだと考えて行動しなければならない。
痛い所を突かれたキョーコが表情を曇らせると、蓮はいじめようとか思ってる訳じゃないよ?と続けた。

「それはもちろん、分かってますよ?」

近頃の蓮は出逢った当初とは比べものにならない程親身に応じてくれる事が多く、いくらキョーコでも勘違いなど出来ない。
むしろ、キョーコとしては、事あるごとに水面下で芽吹こうとする抱いてはならない期待や、一々育とうとする恋心を抑え込む事に必死だ。
結果として、なんとか腹の中で複雑な感情を抱え込んだキョーコは、上目遣いで蓮を見上げる事となった訳だが、そんなキョーコの姿に、今度はやはり恋心をひた隠す蓮の方が一時停止をする。

「敦賀さん?どうかなさいましたか?」

「……いや、うん。なんでも。それで?なにがあったの?」

とにもかくにも、こうしてお互いが自分の感情の制御に手一杯な現状では、あと一歩踏み込めば進むだろう発展の兆しも、揃って気付く事はなかった。

「ええと、実はですね……」

「うん?」

するとキョーコの背後でカタリと音が鳴り、顔を上げた蓮が音の主を見つけると、少し遅れて振り返ったキョーコも後に続く。

「あっ、社さん。お疲れ様です」

そこには後退りを試みて、不覚にもゴミ箱に足をひっかけた社が立っている。

「あ……っと、ごっ、ごめんっ。深刻そうな話をしていたから出直そうかと思ったんだけど……」

せっかくの機会を二人きりにしてやろうという密かな企みも、自分自身の手で台無しにしてしまったと、バツの悪い顔をした社がハハハと乾いた笑いを零し、一方、二人きりではなくなった事に安堵を覚えたキョーコは、よろしければ社さんにも聞いて頂けますか?と尋ねた。

「えっ?俺も一緒に!?……あー……ええっと、うん。俺で良ければ……」

キョーコに蓮を頼ってもらう事で二人の仲を進展させたいと狙っていた社は、チラリと蓮の顔を伺うのだが、蓮はなんとも言えない微笑を浮かべ、まだ時間もありますし、場所を変えましょうかと提案する。

「そうだな。いくら事務所内だからって誰の目があるかも分からない訳だし」

気を抜けば足を引っ張られる世界だ、不用意な立ち話は自重するに限る。三人は早々に事務所内で人気がない場所。ラブミー部部室へと足を運んだ。


――――――――――――――

部室内に入り、まず蓮が腰掛けると、続いてキョーコが対面に腰を落ち着ける。
ならばと最後になった社はコーヒーでも入れるよと部屋の隅のポットに向かう。

「……実はですね。先日、信号待ちをしている時に、握手を求められる機会がありまして……」

俯きがちなキョーコはそう呟いて会話を再開させた。

「それは、素の状態の最上さんを京子だと気付いた人がいたって事?」

「はい。そうなんです」

「それってつまり、キョーコちゃんが世間的に認知されてきたって事だよね?」

人数分のコーヒーを淹れながら良かったじゃないかと言いかけた社は、キョーコの表情が曇ったままである事に気付いた。

「単純に喜べなかったやりとりがあったという事だね?」

「……はい」

顎の下で両手を組み、ふむとテーブルに肘みついた蓮は静かに「男性?女性?」と質問を続ける。

「男性です。大学生くらいの方だと思うんですけど」

「そう……」

俯くキョーコは気付いていないが、蓮の瞳は何か言いたげに一瞬揺れた。
それをぐっと飲み込んだところを見るに、キョーコの素顔を認知出来るだけのファンがつかなければ芸能人として次のステップに進めない事は蓮にも分かってはいるのだ。けれど、その瞳に宿る揺らめきを正面から見てしまった社は、まさか大魔王降臨かと身構え、ハッと息を飲んだ。

「されたのは握手だけ?」

「え?」

「おいっ、蓮っ!」

蓮が何を心配しているのかを分かっていないキョーコと、一体何を言い出すつもりだと鋭い声を上げた社。
男二人の心中にあったのは、かつて不破により蹂躙され、落ち込んだ事と似たような事件があったのではないかという危惧だ。

「あの……敦賀さん……?」

一方のキョーコにあったのは、なぜここで蓮がピリピリとした空気を放つのだろうかという困惑と不安、そして怯えであり、それは自分が蓮にとって不快な何かをしたからに違いないという自己否定にも似たよろしくない類いのスパイラルを生み出した。

「キョっ、キョーコちゃん。とにかく順を追って話してくれる?握手を求められて、そこからどうなったの?」

「えっ?あっ、はい。ええと、それが、最終的には握手で落ち着いたんですけど、その前のやり取りがですね……」

「前?」

なぜ蓮が不機嫌になるのか。理由を理解出来てはいないものの、蓮から放たれるヒヤリとした空気を肌で感じたキョーコは緊張に強張った表情を浮かべ、そんなキョーコを見捉えて、慌てた社はそれでそれで?と少々大げさに先を促す。

「ええと、実は、その。なんでも未緒と、なっちゃんの大ファンなんだという話で……」

「ということは、熱烈なラブコールでも受けたのかな?その男から」

「え?あの、……敦賀さん?」

一見それは真剣さからくるものかと思わせはするが、それにしても蓮の表情は固く、本能的に薄ら寒いものを背筋に感じたキョーコは頬を引きつらせて言葉を失う。
一方。この男はどうして好きな女の子をこうも怯えさせるようなわかりにくい嫉妬の仕方しか出来ないのだろうと社は苦笑を貼り付けて介入した。

「種類はどうあれ、ファンがつくのは大事な事だから、素顔が認識されたって事自体は喜ばしい進歩だと受け取っていいと俺は思うよ」

ああもう、お前がキョーコちゃんビビらせてどうするんだこの恋愛音痴め。と心の中で盛大な溜め息をついた社は、やや乱暴に三人分のコーヒーをテーブルに運び、蓮の隣に腰掛けながら、蓮の足を軽く踏みつける。

「っう!!」

「えっ?どうかなさいましたか?!」

「……いや、なんでもない」

ハハハと笑う蓮の表情に、ようやく現状を取り繕う意志を見出した社が、キョーコに話の続きを促すと、キョーコは心底気まずげに事の顛末を打ち明けた。

「なっちゃんがヒロインをビンタするシーンが今週の放送分だったんですけど、それに習って自分もビンタして欲しいんだっておっしゃいましてですね」

「ビ……ビンタ?!でも声かけられたのは往来だったんだよね?えええ!?」

「それは……また……」

予想外の話の展開に、不健全な心配をしていた男たちの目は大きく見開かれた。
一体全体どこのマゾ男だ。

「はい。確かに人通りは少なかったんですけど、他の方の目もありますしって最初はお断りしてたんですが、上手に逃げきる事も出来ずに、最終的には、未緒モードになってこう、パチーン……と……目立ってしまいました」

と言いながら再現するようにキョーコの平手は空を切る。

「あっ……らまぁ……」

チロリと蓮を見やれば、蓮はなんとも言えない微妙な顔で絶句している。
多種多様なファンに関わってきた蓮も、さすがに的確なアドバイスが浮かばなかったらしい。

「椹さんには報告してきましたし、結果的にはご本人もこちらがドン引きするくらいには激しく喜んでいらしたので、事件的な意味で問題になる事はないと思うんですが、叩いてしまった手前、後味が悪いと言いますか、やっぱり心配で……」

「うーん。本人が分かりやすく喜んでたなら、事件になる可能性はないんじゃないかな。なぁ?蓮」

「そうですね……。確かに。かなり奇特な人に当たったみたいだね」

「まあ、少しネット上では騒がれるかもしれないけど、大丈夫だよ。多分」

「だと良いんですけど……」

「大丈夫大丈夫!」

「でも、次からは迂闊に関わらない方がいいね。あしらい方を間違うと、身勝手な理想を押し付けられかねないし、最悪、ストーカーなんかに発展したら大変だから」

蓮自身の経験を踏まえているのだろう。含蓄のある言葉には、重みが感じられた。

「やっぱり、敦賀さんもそういった経験がおありですか?」

「まあ、それなりには……ね」

もちろん、蓮とて様々なファンを抱える身。老若男女を集めれば、モラルからして多種多様も良い所だ。

「マニュアルとかがあればいいんですけどねぇ」

「こればかりは難しいね、いろいろな人がいるから」

「そうですか……」

がっくりと肩をすくめたキョーコに、蓮がでもねとすくい上げる一言を放つ。

「全く手がない訳ではないんだけど」

「え!?そうなんですか!?」

さすが敦賀さん!とキョーコが蓮を見上げると、キラキラした崇拝や尊敬が山盛りに詰められた視線攻撃の直撃を受けた蓮は微苦笑で頷く。

「一つはマネージャーをつけてもらって、マネージャーに対応してもらう事だけど、これは事務所が決める事だから俺たちにはどうしようもない」

「ですよね」

「だから、要はバレなければいいんだよ」

「…………はい?なにがですか?」

なぜだろう、ものすごくデジャブを感じる。と、蓮の言葉を受け取りながらも、今考えるのは『そこ』ではないと、キョーコはあえて考える事を一時放棄し、そんなキョーコに蓮はこともなげに言い切った。

「芸能人なんだし、最上さんもそろそろ変装を覚えてみようか」

「……あ。たしかに」

言われてみればその通りで、変装という行為の必要性など考えもつかなかったキョーコは、目から鱗の顔で大きな瞳を瞬いた。

「俺もそろそろ新しい変装アイテムを調達しにいこうと思ってた所だから、一度一緒に買い物に行ってみる?それ用のショップなら紹介してあげられるから」

「えっと、でも……」

蓮が買い物をするような店だ、高級店ではないのだろうかと身構えたキョーコに、社が大丈夫だよと背中を押した。

「蓮だって変装までアルマンディなわけじゃないから」

「そう……なんですか?」

伺う眼差しを向けるキョーコに、蓮はもちろんと苦笑混じりに頷く。

「じゃあ、一度行ってみようか。今週中にでも」

「は、はい!よろしくお願いします!」

こうして、内心でガッツポーズを取りながら、いそいそと手帳を取り出した社の手により、あっという間にキョーコのスケジュール帳には蓮と買い物という予定が組み込まれたのであった。






次回デート編。
おそらく敦賀さんは前夜、テンションが上がって眠れません←

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