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SS・上手に嘘をつくのなら
こんばんはでございます。
ツイッターの方でも随時呟いておりますが・・・現在の状況です。

【パスワード関係】4/10までに申請頂いたかたへのお返事が完了しております。
【サークル関係】8/20のインテックス大阪への参加申し込みをしてきました^^よければ遊びにいらしてくださいませ!

というわけで。
本日のお話は・・・エイプリルフールネタです。どーん。←今は7月ですね。うん。お察し。

あと、拍手コメント、拍手、またパス請求への熱いメッセージをいつもありがとうございます!
とりあえず、君のためにここにいる2の再録をしに早めに戻ってきます^^





上手な嘘をつくのなら







エイプリルフールは嘘をついても許される日。
知識として漠然と知ってはいたけれど、最上キョーコが実際に誰かに嘘をついた事はない。
それは、彼女という人間が、そういったイベント事を一緒に楽しむような親子関係も交友関係にも縁がなく育ってきたからに他ならない。

そういった経緯もあり、キョーコはエイプリルフールに詳細なルールがある事までは知らなかった。


『そういえば明日なんだけど、嘘をついていいのって午前中だけなんだよね?』
『そうそう。それで、午後にはちゃんとネタバレしないといけないし、ついた嘘はその一年叶わないっていうジンクスもあるから、下手な嘘をつくのは考えものよ』

雑多に詰め込まれた控え室において耳にした他愛のない噂話。『へぇ、そうだったんだ』と感じたのはこんな話題だ。

「……一年は叶わない……か」

これまでは一度も参加した事がなければ、さして気にもとめていなかったエイプリルフールという行事の中で、気になるキーワードはそこだ。

人を不快にさせない嘘ならば公然と許される上、一年叶わないという念押しまで付いてくる。
この慣わしにのっとれば、嘘に手を染めるのは自分だけではない。
世間一般、みなが同じ。ならばこれほど心強い免罪符はありはしない。

ちらり。

視線をやれば、近頃手に入れたメールアドレスが入った携帯電話がある。

どうしよう、自分の気持ちを『嘘』にして送ってしまおうか。
ドキドキと高鳴る鼓動の中、その先に起こり得る展開を幾通りもシュミレーションしては躊躇い、悩みながらも文面を綴る。

そうして、たった数十文字のメールを送り終えた頃にはエイプリルフールの午前中は残すところ数分といった頃合いとなっていた。



――――――――――――――


映像に日付が映るはずもなく、そもそもエイプリルフールは休日でもなんでもない。
一部の企業も盛り上がりをみせる4月1日もなんのその。粛々と組まれた進行表に従って撮影が行われているスタジオ内では、現在、ざわざわとしたせわしない雰囲気が広がっている。
今まさにカメラが止まったばかりであるこの現場では、タイムキーパーも兼ねたADが、大きな声を張り上げて休憩時間の始まりを告げているところであった。


「再開は一時間後。13時からになりますので、各自休憩よろしくお願いしまーす」

お弁当はこちら、飲み物はここにと多数のスタッフがキビキビと働くこの現場は、撮影が順調な事も手伝い、良い雰囲気に満ちている。

「蓮、お疲れさん」

スタッフから渡された二人分のロケ弁の入ったビニル袋を下げた社が、ひらひらと手を振り出迎える。
お疲れ様ですと合流した蓮は社に預けていた鞄から携帯電話を取り出した。

「……ん?21件?」

今日はいつになく受信メールの件数が多い。
取り急ぎ件名だけを確認しながら下に送っていくにつれて、ああ、今日はエイプリルフールだったなと理由を悟る。

そうこうしている最中にも一通の新着メールを受信した携帯電話は振動し、11時58分という滑り込み具合にみんな頑張るなぁ……と、エイプリルフールを自分にはさして関係のない他人ごととして捉えていた蓮は、苦笑まじりに送り主を確認した。

「あ。」

当然ながら蓮を止めたのは届いたばかりのキョーコからのメールである。

「蓮?どうかした?」

僅かに瞳を見開き、不自然に固まった蓮の様子に気付いた社が瞬く。
けれども、思考の泉に沈んでいるらしい蓮は社の声には反応せず、恐ろしく真剣に文面を見つめたまま。

「………………はぁぁ」

「ええっ?!」

地の底にでも向けたのかというほど思い切り深い溜め息を吐き出した蓮に、何事かと驚く社に気付く事なく蓮はポチポチとキーボードを叩く。

「全く、驚かせてくれる」

小さく呟いた蓮の様子に不穏なものを感じたものの、声をかけあぐねた社は、顎に手をかけ熟考した。
蓮のこういうイレギュラーの反応は過去に見た覚えがある。

「ふーむ。これは……キョーコちゃんあたりがまたなにか問題発言やっちゃったかな?」

こうして、エイプリルフールの午後の幕は上がる。




――――――――――――――

時間は僅かにさかのぼる。

好きですと一言書いてはクリアボタンで消去して、今度は敦賀さんがと書いてみてはカーソルがさ迷う。

どんな嘘をつけぱ『間違えず』に済むのだろう。
何度も何度も、まるでテスト直前における猛勉強のような真剣なまなざしで液晶に向かい続けているが、正しい解は見つからない。

もしかすると、『なにもしない』が正しいのかもしれない。

けれど、全てをエイプリルフールのせいにしてしまえば、手痛い失敗にはならないだろうという心強い保険があるのだ。
今日この瞬間にだけ嘘として表に出す事が許されているならば、少しだけでも伝えてみたいという抗いきれない誘惑が、メールを打つ行為そのものをやめるという選択肢を奪ってしまうのも致し方のないところだと言えるだろう。

『好きな人が出来たので、ラブミー部を卒業する事になりました』

それでも、結局選んだ嘘は、少しだけ真実を混ぜただけのささいな『嘘』だ。

「我ながら意気地がないなぁ」

天井を仰ぎ、嘘だとしてでも好きだと書けない臆病な自分を嘲り笑う。

それでも、蓮の事をこれからも想っていく上で、『ついた嘘は一年叶わなくなる』というジンクスにのっとり、ラブミー部を卒業出来ない方向に働くのならば願ったり叶ったりなのだ。
このくらいなら許されるだろう、ここまでなら大丈夫なはずだ。そんな根拠のない自信ではあったが、秘密のいたずらを成功させた子供のように。幾ばくかのガスが抜きが叶ったキョーコは、ある種の達成感に満たされていた。

「って、いけないっ。もう午後だから、ネタばらししておかないと」

そうして嘘を嘘だと伝える為のメールを打とうとキョーコが改めて携帯電話に意識を向けたその時。

ピロリロリーン

「……えっ?」

今まさにメールを送った蓮からの返信が届いてしまったのだ。

『卒業内定おめでとう。お祝いに今夜夕食でもどうかな?』

「えっ?えええっ!?」

もう読んだの?返信早くない!?っていうかどうしよう!!?
と、きれいにトリプルコンボを貰ったキョーコは、はわわわわと右往左往してうろたえる。

ピロリロリーン

「ひゃああ!!」

続けざまにもう一通届いたメールに飛び上がって驚いた。

『最上さんの仕事は何時終わりかな?時間があうようなら迎えにいくよ(^^)』

「敦賀さんが……絵文字……」

なんだこれ、かわいいやないかい。と、悶絶させられる羽目になったキョーコは、いやいや、そうじゃなくて!と煩悩と妄想の大海に羽ばたきかけた己の額をピシャンと平手の一撃でもってなんとか理性を呼び覚ました。

「『申し訳ありませんっ、さっきのメールは全部エイプリルフールの嘘なんです』……あと、ええとええとっ、なんて言えばいいんだろう……」

だがしかし、これ以上うまい言葉も閃かない。

とにもかくにも、今は一刻も早くネタばらしをしなければいけないという一心で、キョーコはせいっと送信ボタンを押してしまう。

ピロリロリーン

「ひゃいいいっ!!」

返る山彦のように間髪入れず、早すぎるタイミングの着信音に、さらに飛び上がったキョーコは、今度は敦賀さんじゃありませんようにと祈りを込めて送信者を確認するが、やはりそこには『敦賀さん』という、この時ばかりは見たくなかった名前が表示されている。

『なるほど。そういう事なら詳しい事情は今夜にでも教えてもらおうかな!(b^ー°)』

「……ええっ?!」

嘘だと告白したというのに夕食の誘いは流れていない。もしかすると、これは怒ってらっしゃる?もしかしてこれは死刑宣告かなにか?

……終わった……。

と青くなったキョーコは、すごすごと本日の終了予定時刻をポチポチと打ち込んだのである。



――――――――――――――


なんと言って怒られるのかしらという不安で押しつぶされそうになりながら、収録を終え、局を出た所で蓮の愛車に拾われる事になったキョーコは、後部座席に乗り込んだ瞬間、先手必勝とばかりに申し訳ありませんでした!と謝罪と共に頭を下げた。

「えっ?なにが?」

「いきなりどうしたの?キョーコちゃん」

目を丸くして振り返った社と、すでに発車していた為、運転中につき表情の見えない蓮。前に座る二人に向かい、キョーコはおずおずと頭を上げ、これ以上なく凹んだ表情で訴えた。

「いえ、ですから、私がエイプリルフールにかまけてしょうもない嘘をついたので、その事にお怒りになったんじゃ?」

嘘をついたの?でもエイプリルフールなんだからそれってむしろ普通だよね?と話が分かっていない社をよそに、蓮はルームミラー越しにキョーコを見つめ、柔らかい声音で怒る事なんてなかったよと笑った。

「今日はちょうど良いタイミングでやり取りが出来たから、せっかくだし食事でもと思っただけだし」

「そう……なんですか?」

てっきり怒られるものだと思っていた為、あからさまにほっとしたキョーコに蓮は「そんなに俺は最上さんに小煩い苦言ばかり言ってたかな」と苦笑した。

「いえっ、そういう訳ではっ、ただ……」

「ただ?」

慌てて否定しつつも言い淀んだキョーコに、蓮が優しく続きを促すと、キョーコは少しばかり逡巡して言葉を選んだ。

「エイプリルフールの嘘は相手を不快にさせる類いのものはいけないという事だったので、もしかして、私は敦賀さんをご不快にさせたのかな……と心配していたんです。やっぱり嘘なんてつくものじゃないですね」

「キョーコちゃん……」

しょぼんとして反省の弁を述べるキョーコに社はかけるべき言葉に迷った。
そもそも業界人としてはイベント事に対する積極性があるに越した事はないのでキョーコの行動を悪いとは思わない。思わないが、その積極性を持たずに成功している敦賀蓮という男が隣にいるので、発言に説得力がない事が身に染みている。
もちろん、こういう状況である以上、自分がでしゃばるより蓮自身にフォローさせた方が良いだろうという思いもあり、結果、なんとかうまい事言えよと願いながら成り行きを見守りに入ったのだが。

「うーん。不快だったかどうかと言われれば、少し傷ついたのは確かかもしれないな」

「蓮っ!?」

お前何言い出すの!?と、ギョッとして運転手を見やれば、相変わらずの涼しい顔でハンドルを握っている蓮は、赤信号に合わせてゆっくりとブレーキを踏み、先ほどの蓮の発言ですっかり蒼白となっているキョーコを振り返ってのたまう。

「もちろんエイプリルフールだって事は分かってはいたけどね。でも、どこの誰ともしれない相手に最上さんの気持ちが盗られるのかもと思うのは、正直言うと、面白くなかったよ」

「……えっ?……あの、えっと……それは……えっ?」

蓮のとんでも発言にキョーコは瞳をこれでもかと大きくかっぴらいて固まり。社は社でこの場に居合わせてしまった事を全力で悔やみ、助手席にいながらも今すぐ空気に擬態しようと無為の努力で息を殺した。


「どうせなら『好きな人が出来たから卒業します』じゃなくて『俺の事が好きだから卒業出来そうです』みたいな嘘の方が嬉しかったかな」

「っえええっ!?」

それはキョーコが一度は送ろうかとして出来なかった文面だ。

「ん?」

「……蓮、信号青」

「ああ、はい、すみません」

社としては出来ればこんな流れの中で介入などしたくはなかったが、助手席に乗り合わせた以上、信号は促さなければならない。

重力に背中を預けたキョーコは『今の一言はどう受け取れば?』という混乱の極みから抜け出せず、再び気配を殺す努力に努める社はもちろん無言。

今のは告白なのか、ダメ出しなのか。

微妙な沈黙が車内を支配する中、カーナビの自動ガイダンスだけがアレコレと指示を流す。

「……らっ、来年は敦賀さんの事が好きですって言えるくらいには、その……頑張ります!!」

「うん。楽しみにしてる」

当然ながら告白と受け止る事を全力回避したキョーコの切り返しにより、社からすればあからさまな意思表示は空振りに終わる。

「なんなら練習しておく?」

「そっ、それはまた来年への課題という事でっ」

「そっか、残念」

「あ、あはははは。がんばります」

ああもう、本当にこの二人はっ!とすっかり脱力した社は、空気と化す事を諦め、「ほらほら、青だぞ」と、再び前進を促したのだった。






今頃エイプリルフールが書き終わったので、上げました。どん。
ありがとうございました。

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