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SS・世界でひとつだけ
こんばんはー、そーやです。拍手ありがとうございますー!
正直、反応を頂けると全く思っていなかったので、
もろめっさ嬉しいですvvvv
調子にのって更新したいと思います。←

さてはて、本日は無駄に長いですが、短編だと言ってみます。
一話に収まれば短編だと言うことにしようと思います。
三話にまたがったら中編。それ以上は長編。そんなしばりでどうだろう。(笑)

それでは、追記よりどうぞー。





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世界でひとつだけ

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その日、
最上キョーコは怒っていた。


「全く、冗談じゃないわ!なんて非常識なのかしら!!!!!」

その日、彼女がゲスト出演したバラエティー番組。
キョーコの他に三組のゲストがいたのだが、その中の一人が、
あろうことか収録直前にドタキャン、収録が大幅にズレ込んだのだ。
幸いな事に、それ以外の問題は発生せず、なんとか収録は無事に終えることとなり、
キョーコはそのまま事務所へと戻り、現在に至る訳だが…

「来れないなら来れないでキチンと早めに連絡の一つなりなんなり出来なかったのかしら、全く…
…敦賀さんの爪の垢でも煎じて飲ませてあげたいくらいだわ」


言葉にしていると、再び怒りがこみ上げてきたのだろう。
憤慨も現わに、キョーコは再び己の手元に視線を落とす。

白く華奢なその手には、糸のついた針と白いハンカチが握られている。
己の思考の渦に没頭しているキョーコであるが、その手は休む事なく動き続けている。


「はっ!!ダメよ、キョーコ!!
そんな馬鹿な人には敦賀さんの爪の垢すら勿体ないわ!!」

いやいや、でも…と頭を降って否定したかと思えばハッとしてみたり、
キョーコの独り言は目まぐるしくありながら続く…、
ここにキョーコと同じラブミー部員である琴南カナエがいれば
彼女の思考を寸断し現実に呼び戻すことも出来るのだが、
あいにくと誰もいない為に、この端から見れば異様なキョーコの様子は止まる気配も見られない。


""コンコン""


「キョーコちゃん、ちょっとお邪魔してもいいかな~?」

「あ、社さん、敦賀さん、おはようございます!」

「おはよう、最上さん、今日も元気そうだね。」

思案に耽ったキョーコを呼び戻すようにラブミー部の部室にひょっこり顔を出したのは、
芸能界一いい男、抱かれたい男No1の称号を持つLMEの看板俳優の敦賀蓮、
そして彼のマネージャーである社倖人だった。

「はい!元気が取り柄ですから!!
それで、今日はお二人はどうされたんですか??」

キョーコは二人に挨拶をする為に、その手に持っていたモノを机に置き、立ち上がった。

「ちょうど雑誌の取材の待ち時間でね、あと一時間ぐらいあるんだけど、
ここならゆっくりできるかな、と思ってね。」

そう言って蓮は微笑を浮かべた。
時間をつぶさせて貰ってもいいかな?と訪ねる社と蓮にキョーコは椅子を勧め、
二人にお茶を入れるためにラブミー部に備え付けられているポットの元へパタパタと駆け寄った。


「あ~、確かにラブミー部の部室には人があまり来ませんからね、
敦賀さんは事務所にいても人目を引いてますものね、ずっと見られてるとお疲れでしょう?
ここでよろしければ、どうぞゆっくりなさって下さい!」

コーヒーでいいですか?と聞くキョーコに蓮も社も二つ返事で頷き、
インスタントのコーヒーを入れるキョーコを蓮が優しい笑顔で見つめている。
キョーコがその蓮の顔を見てしまえば「神々スマイルー!!!!」と
思わず目をそらしてしまう、くだんの笑みであるのだが、キョーコは手元を見ている為に
気づかない。そしてその蓮の顔を横からそっと見ているのが社なのだが…


『ここならゆっくりできる、じゃなくて、君のそばでゆっくりしたい、じゃないのか?
蓮のヤツ、キョーコちゃんがこっち見てないからってそんな笑顔で彼女を見つめちゃって…
俺以外の人間に見られたら一発でバレバレじゃないか…全く、本当、見ててもどかしい事この上ないよなぁ…』

思いを自覚しながらも一向に行動に移る様子のない担当俳優の顔を眺めていた社はふと机にあるモノに気づく。


「キョーコちゃん、それなに??お裁縫してたの?」

机の上にある針、糸、白い布を目に留めた社はキョーコに問いかけた。

「あ、はい、気分転換に刺繍をしてたんですよ。」

はいどうぞと蓮と社にコーヒーを差し出しながらキョーコも椅子に座る。
蓮も社の言ったそれらを視界に収めた。
へー、刺繍かーと社はコーヒーを受け取りながら返事を返す。

「へぇ、すごいね。
俺はボタンも自分では付けられないよ」

「ふふ、敦賀さんにお裁縫って似合わないですね」

その大きな手で針を持ち、真剣な顔つきでボタンをつける蓮の姿を想像してしまったキョーコが可笑しそうに笑う。

「ちょっ!、裁縫が得意な敦賀蓮ってイメージは、なんか困るんだけど…」

同じく想像した社はなんとも言えない顔をして思わず唸ってしまった。
針を片手にボタンをつける敦賀蓮…それはシュールな光景だとしか思えない…


「そうですか?ボタンぐらいはつけれた方が日常生活に困らないかと思うんですけど…」

きょとんとした顔の蓮は社の戸惑いがあまり伝わってないようだ。

「ふふふ、ボタンつけぐらいなら私、いつでもやりますから、おっしゃって下さいね」

その会話がツボに入ったらしいキョーコは目尻に涙を浮かべて笑っている。

「だってさ!蓮!これからはキョーコちゃんにつけて貰え!!な!!
キョーコちゃんにボタンのつけ方を教わろうかな~、な~んて間違っても考えるな!!!
頼むから敦賀蓮のイメージを考えろよ!!!!」

「え?あ、はい。」

社の勢いに押される形になった蓮が釈然としないまでも了承の返事を返すと、
社は担当俳優のイメージを守れた事に心の底から安堵した表情を浮かべた。

「…ふう……って。
そう言えばキョーコちゃんは何の刺繍をしてたの?」

何の気なしに社は机に置かれたソレを手に取ったのだが、
その模様を見た瞬間、社は目が点になった。




沈黙が重い。



「・・・最上さん。」

固まっている社に変わって蓮が口を開いた。

「あ、はい…。」

「これって…」

「えーと。龍、ですね。」


社の手の中には、ハンカチ一面に勇壮に荒れ狂う漆黒の龍がいた。
おどろおどろしい雰囲気も醸し出すソレは、もはや芸術的な一品と言える程の作品。
今日び、これだけの物を作り出す女子高生は、世界広しといえど、キョーコぐらいなのではないだろうか。


『刺繍って…もっとこう、花とか動物とか可愛い物と思ってたんだけど…違うのかな?
でも社さんの固まりっぷりを見るに、多分コレは予想外のモノ、なんだろうけど…』

蓮はそれを前にしばし思案に暮れたのだが。

「最上さん、…これ、とても凄いとは思うんだけど、これ、ハンカチとして使えるの?」

「あははは、気分転換の代物なので深い意味は無いんですよ。
夢中になってちょっとやりすぎちゃいました。」


(ちょっとイライラした念を込めてたら、いつの間にかそんな柄になってたのよね…ははは)


「次にやるヤクザの組のお嬢様の役柄の事を考えてたからかもしれませんね。
使い道はないので布巾にでもしようかと。」

う~ん、実用性、ないですよねー、と乾いた笑いをこぼしながらキョーコは
最もらしい理由を取ってつけた。


「ふーん、じゃあこれ、俺にくれない?」



「「…え…!!?」」


キョーコと社は降って湧いた蓮の発言にただ驚くばかりだ。

「れ、蓮?」

その真意を計るべく、社が必死にその心中を立て直し、担当俳優に疑問を投げかけてみる。

「…お前…使う気?」

何を、とは怖くて聞けない。

「まあ、そうなりますかね、布巾にするには勿体ないと思いませんか?」

けろりと口にする蓮に社とキョーコは気が遠くなる気がした。

「つ、敦賀さん!敦賀さんのハンカチがこんな柄なのはちょっとどうかと思います!!」

製作者みずから"こんな柄"発言をするのもおかしな話だが仕方ない。
温厚紳士の敦賀蓮のハンカチがドデカい龍の刺繍入り、なんて…
はっきり言って眩暈がするほどイメージに合わない。

「俺のハンカチってアールマンディの物だからシンプルであまり遊び心が無いんだよね。」

蓮はにっこり笑ってそんな事をのたまった。

((そんな遊び心用意しないで!!!!!!))

「つ、敦賀さん!刺繍入りがよろしければ、私っ!他の模様をしたためさせて頂きますから!
これだけはやめましょう!!」

「そうだぞ!蓮!!!!イメージって物があるんだからな!!」



両者必死である。


「そう?仮に、俺にヤクザの役が来たらこのハンカチ、
とても良いアイテムになると思うから欲しいって思うんだけど。ダメ?」


・・・・・・・・・。
両者絶句である。


「うっ……普段使いにしないって約束して頂けるのなら差し上げます…けど…。」

なんだか理に叶っているのか、いないのか分からない理由だが、会話は確実に蓮のペースになっている。

「うん、約束するよ。あ、
そうしたら、普段使い用に刺繍、一つお願いしてもいいかな?」


そう言う蓮の笑顔がキラキラしている気がするのはキョーコと社の気のせい、ではない気がする。

「あ、はい、私でよろしければいくらでも…」


(敦賀さん…内心ではそんなに普通のハンカチに飽きてたのかしら、
専属モデル契約してるからおおっぴらには言えないのね…)

キョーコは思考回路の着地点としては妥当な結論を自ら導き出し、
社やカナエが聞けば頭を押さえる曲解思考の出来上がりである。


「ありがとう、嬉しいよ。
あ、そうそう、この前、撮影で貰ったハンカチが家にたくさんあるから
良ければ最上さんにお礼に何枚かあげるよ」


「いえ、そんな、申し訳ないですよ!頂けません!!」

「あー、キョーコちゃん、そのハンカチは俺も何枚か貰ったんだ、蓮は俺よりもっと沢山貰ってるから、
気にせず貰っちゃえばいいよ」


担当俳優の言動に若干のフォローを入れながら社はそっと頭痛を覚えた。


『蓮…お前…。
そんなにキョーコちゃんの手作りが欲しいのか…』


「あ、はい、そういう事でしたら…ありがたく頂戴させて頂きますね。」





この日から数日後、敦賀蓮のハンカチにはアールマンディに蓮の花があしらわれた一品が
混じる事になるのだが、紳士な彼が誰かにハンカチを貸し与える出来事があっても、
このハンカチだけはポケットから取り出される事はなかった。



                         
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